ローション屋のおじは半グレ相手に無双する~おじファミリーvsオマ・エラヤン~
ヌマルネコ
第1話
「おう、これが約束のブツやで」
古びたビルの一室。おじはスーツケースから何かを取り出しテーブルの上に置いた。
おじと共にテーブルを囲うのは、最近西成で勢力を伸ばしてきた半グレ組織――通称オマ・エラヤンの構成員が三人。
「おい、開けろ」
グループのリーダー格の
カチャッ、カチャッ。スーツケースが音を立てて開くと、
そこには違法ローションがぎっしりと詰まっていた。
「今回も極上のブツを用意してきたで」
おじが自信満々にそう言うと、下っ端はスーツケースの中からローションの入った瓶を取り出すと、蓋を開け、臭いを嗅いだ。
「なるほど。いいローションだ」
下っ端は頷き、庸の方を見た。
残り一人の男はマスクを深く被って沈黙を貫いており、その表情は見えない。
「これだけの質と量を毎回揃えてくれるんだ、ローション密造者としては一流だな」
庸がおじを褒め称えた。
「せやねん。おじに任せとき」
「そんなお前の腕を見込んで新しい仕事を頼みたい」
庸は今回のローション代の支払いの札束をテーブルの上にどさっと置き、次の商談の話を始めた。
「仕事? なんやねん?」
「来週のハロウィンイベント、ローションが大量必要になってな。今回のローションの100倍の量を用意してもらいたい。もちろん報酬も100倍出す」
「100倍やて?」
おじは驚き、間の抜けた声で言った。
「あぁ、もちろんローションの質はその分問わない。分かるだろ?
ローション混ぜる時にお粗末な片栗粉が入ってても構わないっつってんだ」
安価な材料でローションを作れるのはおじにとってもメリットだ。
「お前らおじの事をわかってへんな」
しかし、おじは納得していなかった。
「ん? どういう意味だ?」
「おじはな、ローションの品質にこだわっとるんや。混ぜ物するくらいなら作らんで」
おじが反抗的な態度を見せた瞬間、リーダー以外の2人が一斉に銃をおじに向けた。
「おじ、立場わかってるか?」
庸は、両肘をテーブルの上に立て、おじを睨みつけた。
「立場わかってないのはお前らやろ。おじに手を出したらな、おじファミリーが黙ってないで」
「おじファミリー?」
何だよそれ、とおじ以外のメンツが嘲笑した。おじはそれを意に介さず、
「そうや、おじのファミリーは日本全国におるんやで。しかも全員イカれたやつらの集まりや。もしお前らがおじに手出したらな、日本全国からそのファミリーがこの街に押し寄せてくんで」
「試してみるか?」
庸が脅すように言うと、その瞬間、部屋の入り口のドアが勢い良く開いた。
下っ端二人は銃口をドアの方に向けたが、そこに人の姿は見えない。
「誰だ! 出てこい!」
返事はなく、かわりに缶のようなものが部屋に投げ込まれ、勢いよく煙を出し始めた。
部屋の中は煙で充満し視界が効かなくなる。
「ナイスだハッチ! 殺したらアカンで!」
おじはテーブルの上にあった金を掴むと、ドサクサに紛れ、部屋から脱出した。
「リーダー!」
下っ端の男が指示を仰ぐように叫ぶ。
「行かせてやれ。どの道あいつにできるのは精々ローションを作ることくらいさ」
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