第49話 亜神との開戦
「我が異空間へようこそ諸君ッ!」
反響しているのか、少しくぐもって聞こえる。もしかしたらそれ程広い空間ではないのかも知れない。レティシアはそう考えながら、空中に浮かぶ人物に目をやる。全員が注目しているようで、声の主に視線が集中する。
その人物は空を舞うとくるりと一回転して、レティシアのすぐ傍に着地した。
「よッと!」
にこやかな笑みを顔に貼り付けて静かに佇むその姿は、小柄で華奢な印象を受ける。中性的な顔立ちに、燃えるような赤い髪。背中には刃がむき出しになった二メートルはあろうかと言う大剣を背負っている。鞘のないその超大剣は、この白い空間の中でも鈍い輝きを放っていた。不思議なことにその先端はふわふわと浮いている。
「ボクの名はレッドベリル。
「……それで、その神様があたしたちに何の御用なのかしら?」
目の前の亜神からは、何故か大した
「余裕だね。でも少し違うかな。ボクの狙いはキミ一人だよ」
「もしそうならあたしだけを招待すれば良かったじゃない?」
「いや、キミには死にもの狂いになってもらわないといけないからね。それには大切なお仲間たちも必要なのさ」
いずれはレッドベリルとぶつかることは予想していた。
「死にもの狂いに……ねぇ。じゃあ、そうなった人間の力を見せてあげようじゃない!」
レティシアの気迫溢れる声が飛んだ。
その場にいた一同は、それに応えるかのように臨戦態勢を取る。
しかし、レッドベリルはそれを全く意に介した様子もなく宣言した。
「さて、では今からボクがキミたちを殺しにかかる。死にたくなければ、必死に、そして特殊能力の限りを尽くして抵抗してくれたまえ。ボクを滅ぼすことができれば、キミの勝ちだ」
全員に言っているかのようだが、それは間違いなくレティシアに向けられていた。
「ナメてんじゃねぇよ。
「もう一度言おう。仲間の死を見たくなければボクを殺すことだ。キミにはその能力がある」
レッドベリルはそう宣言すると、抑えていた
「俺はこいつを護ると誓ったもんでな。簡単には殺させやしねぇよ」
「それは楽しみだね。でも彼女の心配よりも自分の心配をした方がいいと思うよ?」
ヨシュアが仕掛ける。人間業とは思えない速さでレッドベリルの懐に入ると大剣を横薙ぎに払う。その超人的な動きにあっさりと着いてくるレッドベリル。超大剣で軽々と受け止めると、右腕一本で大剣を弾き上段から斬り下ろす。
あの華奢な体のどこにそんな膂力が宿っているのか、受け太刀したヨシュアの体が沈み込んだ。その口から呻き声が漏れる。何とか受け切ったヨシュアであったが、一旦、受けてしまったため、次々と繰り出される連撃に防戦に回る。
「チッ!」
ヨシュアは捌き切れなかった一撃を地面に転がってかわすと一旦、レッドベリルから距離を取る。そこへ狙いすましたかのように攻撃の雨が降り注いだ。
【
詠唱し終わっていたミレーユの精霊術が発動する。すると、レッドベリルの足下から大きな口が現れる。まるで大地を泳ぐ肉食魚のような口だ。それはレッドベリルを一飲みにしようとするが、ギリギリのところで空中へ逃げられる。同時にヴィスタインの魔導銃も火を噴いていた。
「チッ……キャンサーの力かッ!」
全弾直撃するかと思われた
「うおおおおおお!」
ヴィスタインの雄叫びと共に、魔導銃から連射された
そこへレティシアの
【
レティシアの言葉と共に闇の球体が十個程度出現する。レッドベリルの真後ろに。
それは一斉にレッドベリルに殺到するも、右手の超大剣に吹き散らされてしまった。その内の一つだけは背中に取りつくことに成功したが、レッドベリルがその体から
そこへ体勢を立て直したヨシュアが走る。
「《
ヨシュアが吠えると同時に、彼の体から
そこへ、ミレーユの精霊術によって生み出された肉食魚が地面を泳いでレッドベリルに迫る。
「チッ!」
三方からの同時攻撃は流石にキツかったのか、レッドベリルは
「ぐッ!」
レッドベリルは、腹を薙ぎ斬られて呻き声を上げる。
【天地神命(ラギド)】
そこへレティシアがタイミングを合わせて魔術を放つも、光の槍はレッドベリルの左手によって軽々と握りつぶされてしまう。
レッドベリルは、ヨシュアから距離を取ると、嬉しそうに笑った。
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