第24話 ダタイと言う男
カルナック村での激闘から五日。
レティシアは、ニーベルンへと戻ってきていた。カルナック村を襲った盗賊たちは全員、討伐、もしくは捕縛したものの、捕縛した盗賊から聞き出した情報では、まだアジトに残党がいることが判明したらしい。討伐隊の新リーダーは迅速果断な性格らしく、直ちにアジトに向かったようだ。レティシアも関わってしまった以上、最後まで付き合うつもりだったのだが、断られてしまった。聞くと、正式な依頼を受けていない者の手は借りないと言うことであった。盗賊の長であった狼男を倒したり、怪我を負った探究者や村人を治療したりと、散々手を貸したのだが、レティシアの意見は頑として受け入れられなかった。新リーダーは少々、融通の利かないタイプの人間だったらしい。レティシアも別に報酬目当てで手伝った訳ではないので少しばかり複雑な心境になった。
被害を受けた村人たちは、恐らく他の街へ移住することになるだろう。村の男衆がほぼ殺されてしまったのだ。あのまま村を維持するのは難しいだろう。カルナック村の付近は、ニーベルンの領主の領土である。後々のケアは彼が抜かりなく行うことだろう。
入手した《
帰宅したレティシアは、疲れもあったが翌日にはドラゴンテイルを開いた。とは言っても、不在の間、ニャルが薬屋の店番をしてくれていたので結構、薬が売れたようである。イレギュラーなことはあったものの、これからまた代わり映えのしない日常が繰り返し訪れることだろう。となれば、集中するべきは
そんな訳でレティシアは、早速、掘り出し物がないかと市場に足を運んでいた。
『
流石は市場だけあって、レティシアが入手したことのない素材はたくさんあった。『
「そこのお姉さん、いいものがあるよッ! 見てってくれないかい?」
レティシアが声のした方へ顔を向けると、同時に『
すぐに光り輝いたページを確認しようとするレティシアに男が更に声をかけてきた。
「お姉さん、あなた、
「りんかー? なんですか? それは」
「別に隠さなくたっていい。あなたからは
「本当に意味が分からないんですけど?」
「ハハッ! そう警戒しないでおくれよ。私の名はダタイ・ブレイクン。気が付いたらこの世界にいたんだ。言うなれば、
聞きなれない言葉を連呼するダタイに、レティシアは困惑を隠せない。
「まぁ、それはいいさ。私が売っているのはコレだ。結構な貴重品なんだよ?」
ダタイは置いてある石の中で最も大きなものを指差しながら言った。
――《
『
「これは古代人が作り出した人工神ガンマの動力源だと言われているものだよ」
またもや、レティシアの知らない言葉が飛び込んでくる。頭の中は〝?〟で一杯だ。
確かにレティシアは
「よく分かりませんが、この石が命力の結晶であることは理解しました」
「おお、やっぱり分かるんじゃないか!」
「これはあなたが作ったんですか?」
「いや、たまたま入手したものだよ。こんなもの、私には作れないさ」
石が《
レティシアは集中すると、こっそりダタイの力を探り始めた。
「でも何故、あなたが《
「ああ、そうなんだが、情けないことに手持ちがなくてね。生きるためさ」
「ちなみにお値段は?」
「金貨五枚ってところかな」
「安ッ! ちょっと安過ぎません?」
客であるレティシアすら思わず心配してしまう程の値段である。残念ながら鎧病とは関係ないようだが、未発見の新素材なのだ。
「残念ながら、もうずっと売れてないんだよ。値下げに値下げを重ねてコレなのさ」
落ち込んだ様子でふさぎ込むダタイ。
レティシアは、そんな彼の中から命力を感じ取った。命力を持つのは
「ここの石、全部買ってくれたら特価! 金貨八枚ってところでどうだい?」
レティシアが色々と考えを巡らせている間に、値引きまでしてくるダタイ。恐らくレティシアが購入するかどうかで悩んでいると思ったのかも知れない。異世界人と言う意味不明な言葉を除けば、ダタイの言動は信用に値するものだとレティシアは考えた。
「分かったわ。ここにある石を全部頂くことにします」
「おおッ! ありがとう! 助かったよ!」
嬉しそうに笑うダタイにお金を支払いながら、レティシアは良い買い物をしたと、ほくそ笑んだ。
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