第7話
働くか。働くということは対価の支払いが必要となるが、お金などは俺にはない。
モモが独り立ちするまでくらいは、助けた者の責任として面倒を見ようと思ってたから結果的には同じことなのだろうか。
「モモさえ良ければ、落ち着けるまで、そうだねー、独り立ちができるまではここにいてくれて構わないよ」
「働かせてもらえるということでしょうか?」
「働くと言ってもお金とかの対価を出せないんだよ」
「食事と寝床があるだけで十分です!」
服とかはいいのだろうか。俺たちとモモの価値観や考え方はきっと大きく違う。互いのことを理解した上でこれから先のことを徐々に擦り合わせる形でも問題ないか。
可愛らしい妹的、ダークエルフを愛でると考えればいいのかもしれない。
「にゃーん」
「心配しないでください。俺はそういった性癖はありませんから」
「せい? へき?」
「なんでもないよ。わかった衣食住は保証するよ。野良仕事がメインになるけど問題ないかな?」
「はい! なんでも頑張ります」
簡単になんでもとは言わない方がいいと思うけどね。悪質な契約に巻き込まれることがあるかもしれないよ。
「にゃーん」
お前が言うなですか。俺の心の中見えてますか姉さん?
話がまとまった所で外に出て作業について簡単に説明する。
最初にモモには俺が耕した後の土の中にじゃがいもの種を植えてもらう。ホースなどには少し驚いていたが、言われた通りに水撒きをしてくれた。じょうろが納屋に入ったままだが必要なかったな。
ゲーム序盤でもこんな便利なアイテムはそうそうないだろう。ある意味で大福のおかげだな。
あと2日でニンニクやキャベツの収穫ができるはずだけど、お金的には売りに回さないといけない。
じゃがいもの個数も30個近くは取れてから全部ふかし芋にするだけで結構な利益になるはずだから、料理の要素は大事なのかもしれない。ファミレス神は食い意地張ってそうだもんな。
そう考えればニンニクは売りに回さないで料理に活用した方がいいかもしれない。だって入れた入れただけ美味しくなるのがニンニクなんだから。
「わん!」
「また血だらけで戻ってきたな」
「大福様は狩も上手なんですね」
モモに撫でまわされながら、口周りをホースで洗ってもらってる。大福が狩できるなら肉の確保も出来そうだけど、流石に捌くとか出来ないからなぁ。
「モモは動物捌いたりできる?」
「すいません、出来ないです」
直ぐに土下座しようとするので、モモをなだめながらなんとか立ち上がらせる。
まぁこの世界の肉って何が食えるか食えないかわからんしな。
分厚い肉に塩胡椒にニンニクを混ぜたステーキソースを作って食いてえなぁ。
★★★
先日、キャベツとニンニクの収穫が完了し、大量に植えたじゃがいも収穫ができた。一度、畑をリセットして今後の方針を考える。
「ご主人様、こんなにじゃがいもが収穫できました!」
「おお、流石モモだな」
「別に私が凄い訳ではないです。こんなに早く作物が収穫できるんて凄いです」
「まぁ神様の恩恵ってやつだ」
「ふぁみれす神様凄いです!」
「ああそうだな」
愛らしい子だな。友人は妹なんて生意気なだけで可愛くないと言っていたが、妹とは可愛いじゃないか。
さて、このじゃがいもを使ってどんな料理を作るか。種を買ったり、モモの生活用品を買ってもう残金が0に近いから追加で調味料も買えない。少し野菜をそのまま売ってバターを買うか……それとニンニクとじゃがいもを合わせて。
「モモ、今日の料理は期待してていいぞ!」
「はい!」
ここ数日はずっとパンのミルク粥だったがそろそろ本格的な固形物も問題ないだろう。あれはあれで美味しいと食べてくれていたがこのじゃがいもを使って美味い物を食わせてやろう。
まずはオリーブオイルをフライパンに敷き、じゃがいもを焼く、そこに塩胡椒を多め。味を濃くして、バターとニンニクを3片を微塵切りにした物を投入。ああ、ニンニクの良い香りがしてきたぞ。
「にゃーん」
「まぁちょっと癖のある匂いですがこれが美味いんですよ! はい、ガーリックポテの完成だ!」
あれ、モモが暗い顔をしている。恐る恐る、1口食べた後に顔が少し歪む。あれ? あれれ?
「……美味しいです」
「にゃーん」
好物の押し付けはするな……子供は舌が敏感って言うしな。そうかモモには悪いことをしてしまった。
「モモ、ごめんな」
「ほ、本当に美味しいです!」
「いいんだ。モモも苦手だった時は正直に言ってほしい」
「はい……少し刺激が強くて、独特の匂いが苦手かもしれないです」
モモはミルク粥っていうシンプルで薄味の食べ物は美味しいって言っていたし、濃い味の料理に慣れていないのかもしれない。あとはニンニクは苦手ってことを覚えておこう。
ここはシンプルにだな。ふかし芋にバターを乗せた、じゃがバターを出してみる。
警戒しながら一口食べた時に表情がさっきとは違った。相手のことを考えて料理するのは大事だなー。
姉さんの言う通り、押し付けて美味いだろ! はよくなかった。もっと考えるべきだったな、特に俺は雇用主扱いでモモも気をつかってしまうから、俺が気をつけるべきだ。
「にゃーん」
「そうですね。日々勉強ですね」
追加で別の料理を用意する。ごま油、醤油、塩で簡単やみつきキャベツを出してみると、モモにはも好評だった。まだモモは痩せ細ったままだし、肉を食わしてやりたいな。買えるんでけど高いのよね。
「わん! わん!」
なんだ大福、テンション高いな。こんな時間までどこに行っていたんだか。
「おかえり。こんな時間までどこ行っていたんだよ、大福」
扉を開けた先にはエメラルド色の髪に金色の瞳、美しい女性が佇んでいた。
「こんばんは」
「わん! わん!」
ん、モモが俺の服の裾を掴みながら、女性を除き込んでいる。手が震えていた。姉さんも警戒しているようで、モモの頭の上で様子を窺っている。
女性が髪をかき上げた時に長耳が見えた。
「……エルフ」
女性がニッコリと微笑んだ。
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