過去と未来

過去

 これは、少女ルーナ・ジェーナが手放した記憶の欠片カケラ


 ――――……

 ――……

 ……


『ねぇ、どうしましょう。ルーナ・ジェーナ』


 女神ダイアナ少女ルーナ・ジェーナに問う。


『わたくしに問われましても……』


 ルーナ・ジェーナは、

 女神ダイアナさまの婚姻に口出しするなど、できるわけがない。と、唇を噛む。


 俯いたルーナ・ジェーナ。


 一呼吸おいて、


『アルテミスは、どう思う?』


 女神ダイアナは、別の巫女に問う。


女神ダイアナさまのお心のままに』


 アルテミスと呼ばれた巫女は、そう言って、微笑む。


 女神ダイアナ少女ルーナ・ジェーナ巫女アルテミスの間を 甘い甘い香りが包む。

 


 その頃、

 白の国では、突然現れた 女神への求婚者の話題でもちきりだった。


  求婚者は、赤の国の皇族さまだって話だよ。

  女神さまに一目惚れなんだとさ。


 女神の婚姻を祝福する声が飛び交った。




 『ねぇ、ルーナ・ジェーナ。わたしが赤の国へ嫁いだら、あなたがこの国の……白の国の……になるのよ』


 女神ダイアナは、確かに、この時、少女に告げた。



 白い花が放つ芳香は、少女ルーナ・ジェーナの涙をぬぐい去り、

 その香りを一層濃くして漂った。


 ……

 ――……

 ――――……



 これは、少女ルーナ・ジェーナが手放した記憶の欠片カケラ



 今宵も、月が白く浮かぶ。


 ムーンフォレストの夜は、続く。






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