第1話 灯火

 この町は神様の気まぐれで起きるお祭りがある。


 開催される条件は二つ。


 震度5を超える大地震と、洪水を引き起こす大雨が一年の間にどちらも起きる事。


 だから毎年必ず行われる祭りではないし、夏に起こるとも限らない。


 そう、天災が招く神様の気まぐれ行事なのさ。


 すれば、町の人たちはすぐさま神社の扉を開け、高さ5メートルの神様の形をした灯籠を引き、町の大通りを歩くらしい。


 死んだ人をあの世へ見送る為に。


 私はまだ一度見たことがないけれど。


 そして、私が生まれた年、50年ぶりの大地震が起きた。


 町の人は大慌てで祭りの準備をしたそうだ。


 死者が迷わぬ事と、どうか命の天秤が傾いてしまわないようにと願って。

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