04 夜のかがやき

 夜の街は暗い。所々に魔煌石が埋められていて、足元は少し明るい。だが人の顔がはっきりするほどではない。その中でミドラ区にある三つの魔石だけは夜中明かりを灯している。魔石ではあるが魔煌石ではない。

 商人仲間たちから話には聞いていた。

 ランランカのミドラ区にだけある竜燈はミニドラゴンたちが灯りの番をしている、と。いつか見たいと思いながらなかなか叶わなかった。それが漸く叶うのだ。感動もする。

「よー、旦那。どうだい」

 宿屋の外ベンチで上を見上げていた。

 案内してくれた冒険者がこの宿の親族というのも奇妙な縁だ。

「噂には聞いていましたが、美しいですね」

「ありがとうございます。他にもガラス工房と公園にもあるからグルッと一周します?」

 冒険者の彼にゆるゆると首を振る。

「いえ、また明日夜の散歩をしてみます。今日はこちらの竜燈を楽しみます」

 夜の闇に明るく灯る。風竜様の灯りはほんのり黄色のような緑色のような色をしている。あたたかい色だ。じんわり心もあったまる。

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