つるさんとカメさん
夢月みつき
本文「おしどり」
ここは、つるさんが、妻のカメさんと住んでいる青森県の一軒家。
つるさんはもうすぐ、九十歳。まだまだ、元気です。
つるさんは、縁側のポカポカ陽気の中で居眠りをしている。
彼はまどろみの中で夢を見ていた。
つるさん、誕生。この頃は、東京に住んでいた。
つるさん、十歳、カメさんと出会い、この頃から仲良しだった。
つるさん、二十三歳でカメさんと結婚をした。
その翌年、長男、そして長女が生まれる。
裕福ではなかったが、妻と子供達と幸せに暮らしていた。
その後、戦争が始まり、つるさんは兵隊に取られたが、無事帰ってくる。
そして、つるさんは、三十歳の頃に大病を患う。
妻の助けで、何とか乗り切ったが。しかし、妻カメさんが身籠っていた子を流産してしまう。
彼女は、ショックを受け、来る日も来る日も泣いて過ごした。
そんな妻を夫は、慰め仕事から帰宅すると、自分が疲れていても毎日抱きしめた。
つるさん四十歳、つるさん五十歳。つるさん六十歳、つるさん七十歳。
人生、色々ありました。山あり、谷ありのカメさんとの二人三脚の半生です。
子供も結婚して、孫もひ孫も出来ました。
つるさん八十歳、そして、現在つるさん九十歳……。
――良く生きたなぁ…思い残すことはもう、ないかもしれん――
つるさんがそう、思ったのを妻は、感じ取ったのか。
縁側に来て、しわしわの夫の手を取り、優しく握りました。
「つるさん、長生きしてね…」
カメさんが、夫の背中に毛布を掛けながら笑いかけます。
目を開けて、カメさんを見つめるつるさん。
「よし、もうひと踏ん張り」とつるさんは元気に笑いました。
秋が終わろうとしている、そんな昼下がりのことでした。
-終わり-
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最後までお読み頂いてありがとうございます。
つるさんとカメさん 夢月みつき @ca8000k
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