第29話 女王の顔見せ
共和国の首都は新都ダニアの数倍の広さの敷地を持つ。
その中でも人通りの多い観光名所と言われる場所を馬に揺られながら、クローディアは民衆ににこやかに手を振っていた。
その身を儀礼用の軽金属
そしてそんな彼女をエスコートするのは共和国大統領の息子イライアスだ。
こちらも正装である礼服に身を包んでおり、その美しい黒髪と端正な顔立ちのためか、特に婦人たちの目を釘付けにしていた。
こんなふうに目立ちながら街の中を
「さすが女王
「仕事はしっかりこなす主義なの。文句なんて言わせないくらいにね。ただ、あくまでも仕事だからよ。色男さん」
クローディアとイライアスは並び立って周囲に笑顔を振りまきつつ、浴びせられる歓声の中、
昼過ぎの応援演説に向けて午前中からすでに仕事は始まっている。
だがクローディアは
時折、向けられる
そのほとんどは女たちからだった。
そしてその原因は大方、
(さぞかし女に持て
整った容姿、裕福な家の生まれ、そして大統領の息子という恵まれた立場。
イライアスは女たちの
それがどこぞの
面白いはずがない。
今、クローディアに不満げな視線を送っている女たちは、胸の内で
クローディアは内心でやれやれと肩をすくめつつ、
しょせんここは自分の住む街ではない。
自分の仕事の結果、少なくない数の女たちに嫌われたとしても、どうでもいいことだ。
だからといってあまり反発心を
クローディアは無言でイライアスを目で制する。
(過度に親しげにしないように。
その視線の意味をすぐに理解したようで、イライアスは笑みを浮かべたままクローディアとは適切な距離を保って街中の
☆☆☆☆☆☆
一方その頃、アーシュラは1人街中を歩き続けていた。
服装は給仕服であり、頭に
どこかの
彼女が向かう先はスノウ
そこにはスノウ家で数多く抱えている下女たちが様々な買い物のために行き交っている。
アーシュラは事前に練習していた共和国
情報集めだ。
今回は大統領選挙の期間中のみの滞在だが、共和国がダニアの後ろ
余計な火種は取り除いておかねばならない。
アーシュラは買い物に悩むふりをして、数人の下女たちに近付いていくのだった。
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