第13話 女王の懐妊
「ご懐妊の可能性が極めて高いです」
助産師の言葉に診察台の上のブリジットは歓喜の笑みを浮かべた。
来るべき時に月のものが来なくなり、そこから半月ほど経ったブリジットはある夜、いつもの食事前にふいに吐き気に襲われた。
前日まで何でもなかったはずの食べ物の
そして微熱を
これまで多くの女たちの妊娠から出産に
そして笑顔で祝福の言葉を告げた。
「おめでとうございます。新たなお世継ぎがお生まれになりますね」
「そうか……そうか!」
ブリジットは助産師の手を握って礼を言うと、診察台から降りた。
そして着替えを済ますと、
「どうか
助産師の言葉にブリジットは神妙な
だがブリジットが誰よりもこのことを伝えたいのは、彼女の情夫にしてお腹に宿りし子の父親であるボルドだった。
「ボルド! 子が……おまえとの子が宿ったぞ!」
「ブリジット……良かった。お体は……大丈夫なのですか?」
「ああ。しばらくは安静にしないといけないらしいが、大丈夫だ」
お腹を圧迫しないよう、まるで壊れもの扱うかのようなボルドの態度に苦笑し、ブリジットはボルドをグッと力強く抱きしめ返した。
「アタシとおまえの……子だ」
「はい。私たちの子ですね。2人で必ず大切に育てていきましょうね」
ボルドは思わずこみ上げる涙を
そんなボルドの黒髪を優しく
そしてその後ろでは老女のシルビアが顔を両手で
ブリジットは思わず苦笑しながらシルビアに声をかける。
「シルビア。そんなに泣くな。涙が枯れてしまうぞ」
幼き頃から母代わりとなって育ててくれた
シルビアは声を
「ああ……ああ……あのお小さかったライラお嬢様が……お子を授かるなんて。きっと……きっと天の国で先代もお喜び下さっておりますよ」
「シルビア……そうだな。おまえにはこの子のことも抱いてもらいたい。だからまだまだ長生きをしてもらわないと困るぞ」
「ええ……ええ……おかげでまだ10年は生きられそうです」
この日、ブリジットの懐妊の報は新都中を駆け
新たな命の誕生に新都は大きな高揚感に包まれたのだ。
新たな都に次代の女王が生まれる。
そのことに皆が新しい時代の到来を感じ取っていた。
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