第6話 演習が終わってから
VR演習が終わりヘッドギアを外すと、アッシュ・ウェスタンス教官が手を叩いて褒めてくれた。
「上出来なんじゃないか?」
クロウ・レッドフラワー隊長が真顔でうなずく。
「あぁ。私もそう思う」
うん、隊長は見た目幼女だけれど、中身は隊長ですね。教官に対して重々しくうなずくのが、とてもさまになっています。
他のメンバーは肩をすくめている。
僕が足手まといだからかな……。
「ああ、あの……すみません! ぜんぜん活躍出来なくて! あの、でも、次はもう少しがんばりますから!」
みんなに向かって頭を下げると、ジェシカ・エメラルドさんとキース・カールトン君が視線を交わした。
そして、ジェシカ・エメラルドさんが笑顔で僕に言う。
「気にしないで。VR演習もアンノウン討伐も初めてなんでしょう? むしろよく動けていたと思うわ。ただ、この小隊は他の教官や生徒に嫌われているから、早めに慣れてほしくて」
え。
僕は顔を上げてジェシカ・エメラルドさんの顔を見た。
「いじわるをされるから、もう少し動けるようにしたほうがいいわよ?」
「えぇっ!?」
……本当だった。
演習が開始され僕たちがアンノウンと戦っていたとき、突如ベース付近にもう一体アンノウンが出没したらしい。
もちろん、他のチームのVR訓練ではそんなことはないし、バグってことになっているし、それでベースが破壊されたら失点だ。拠点であるベースを破壊されると、たとえアンノウンを討伐したとしても得点にならないから、という理由かららしいんだけど……。
……いや、わかってたよ。小隊室の位置でさ。案内板にある小隊室のある場所の、さらに最奥だもんね。もっと手前に綺麗な空き室がいくつもあったよね?
「た、隊長一人で討伐したんですか?」
僕がどもりながら尋ねると、隊長がうなずいて答えてくれた。
「私は迎撃をメインにしている。以前とは違い、さすがにベースの迎撃システムまでロックをかけるような真似はしてこないので、そこまで難しくはない」
「えぇっ!?」」
いじわるレベルの話じゃなくなってきたんだけど!?
それって完全に不正じゃん!
というか、以前はそんなことまでされてたの!?
さらに隊長が解説してくれた。本来はすでに設営された拠点からアンノウンを探すか、やってくるアンノウンを討伐するって訓練らしいんだけど、このチームは拠点の設営からさせられているらしい。
それでも首位ということは……このチーム、そうとう強い。
「そ……それで、拠点の設営って、隊長一人でやってるんですよね?」
僕の問いに隊長がうなずいて言った。
「魔術で行っている」
魔術で!? そんな魔術あるの!?
アッシュ・ウェスタンス教官が驚く僕を見て苦笑をしている。
ジェシカ・エメラルドさんが解説してくれた。
「ええと……クロウの魔術は特殊なのよ。現実ではあまり使えないのだけど、VR演習ではけっこう使える魔術なの。うまく説明出来ないのだけど、拠点の防衛に関してはクロウはすぐれているので任せていいわ」
それは……確かに特殊だ。
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