第2話 クラス編入、そして初顔合わせ

 防衛特科は五クラスあって、僕は二組になった。

 クラス全体では普通科と同じ授業を行う。

 魔術は、魔術を使える生徒のみ受けることが出来て、この授業は魔術特科と合同らしい。

 最後、防衛特科のみの授業とチーム訓練がある。

 これを聞いたとき、「防衛特科だけ授業数が多すぎないか?」って思ったんだけど。

 魔術特科は防衛特科との合同以外の授業がたくさんあるし、普通科はそれらがない代わりに部活動が義務づけられていて、そこでの成績も加味されるんだって。


 僕はカミカミで挨拶して、みんなの突き刺さるような視線の中、コソコソと空いている席に座った。

 こんなに注目されるなんて思わなかった。やっぱり、転入生は肩身が狭いな。


 ……って思ったのもつかの間、注目されたのは最初のうちだけだった。

 僕がカミカミのオドオドしてる子だってわかったら、みんな興味を失ったみたい。ホッとした。

 ――ぼっちは確定したけど。

 アッシュ・ウェスタンス教官の話を聞いてなんとなくわかってたけど、防衛特科って基本的にチームでグループを作っている。

 つまり、入学してきてからチームで仲良くしてるトコに転入生が首を突っ込むことはほぼ確実に無理、ってことだ。

 僕、首位のチームに入れられるんだけど……大丈夫かなぁ……?

 首位ってどのくらいの実力なんだろ? 僕、うまく合わせられるか不安なんだよなぁ。

 そう思いながら教室の端の席でひっそりと授業を受けた。


 セントラルには他にも学園があるけれど、セントラル総合学園はいちばん学園施設が整っているという触れ込みだ。

 目玉は学生食堂で、最新の3Dプリンターによる味も良いフェイク食品を作り出しているそうだ。

 当然のことながら教材も充実しているし各施設も数年ごとに修繕したり改築したりしていて、ほぼ最新だ。特にVRの設備が最新で最先端らしい。

 もちろん軍や傭兵の訓練施設、国や企業の研究施設には劣るらしいけどね。一般市民が使える施設では、ってことで。

 確かに、席に着いたら認証されるし、端末と連動して今日の授業の内容が表示されるのだからお金がかかってるなぁって感心する。

 ある程度施設は回ったけれどVRを使った授業はまだ受けていないので、どんなふうなのかすごく楽しみだ。


          *


 転入してから数日経った今日の午後は、いよいよチームでの訓練だ。

 チームでの訓練は、小隊室という名前の教室で行う。チームを組んだ皆が集まってそこにある特別なVR装置で演習とかをするんだそうだ。

 僕はキョロキョロしながら自分の入るチームの小隊室を探して彷徨い続け……あ、ようやく見つけた!

 校舎の端もいいところ、奥の奥の突き当たりにあったよ。

「わかりにくすぎだろ! しかも遠すぎ!」

 明らかに他の小隊室よりも傷みの激しい扉の前に立ち、急激に不安が増してきた。

 もしかして……僕の入るチームって、エリートの集まりなんかじゃなくて、厄介者の集まりなんじゃないか?

 つまりは転入生をまとめて放り込んでるってだけじゃない? たまたま転入生が実力者ぞろいで首位になってるんじゃ!?

 そんなことを考えつつ、恐る恐る扉を開けてみた。

 めっちゃ軋んだ音がしてるけど。設備が整ってるって触れ込みはドコいったんだろう。

「――……し、失礼しまーす」

 こっそりのぞいて入ると、とたんに中にいた生徒たちから視線を浴びた。

「あ」

 同じクラスの人だった!

 すごく目立つ子だったので覚えている。

 なんというか……ひと言で言うと「歳をごまかしてない?」だ。

 パッと見て、僕よりも五つか六つくらい下、って見た目なのだ。身長が低いってだけじゃなくて、全体的にまだ幼いといった印象。しかも、無表情。最初は「なんでここに人形が?」って思ってギョッとしちゃったよ。

 他にいる三人も見覚えがある。

 全員同じクラスだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る