第11話 密談

 会議が一段落した夜、僕は清洲城の隅っこの部屋で佐久間盛政と密かに会談を持つことになっていた。この会談は、公の場では語られない、より深い戦略を巡るものだった。


 佐久間は信長時代からの狡猾な武将で、その眼差しは数々の戦を乗り越えた知恵を秘めていた。彼の存在は、長い歴史の重みを感じさせるものだった。


 「長秀、お前はこの混沌とした戦国時代で何を成すつもりだ?」彼はまるで古い本をめくるように、興味深げに僕を見つめながら尋ねた。


 僕は面倒だと思いながらも一瞬の沈黙の後、何となく答えた。「この時代に、少しでも意味のある足跡を残したいんだ。」全くそんなことを思ってもなかったわけだが、佐久間氏の情熱の前では、そう答えた方が良いのだろうと咄嗟に出た言葉だった。


 佐久間は静かにうなずき、「大それた野望だ。しかし、それを実現するには、冷徹な策略と、時には犠牲も必要だろう。」と言った。


 僕たちはその夜、長い時間をかけて戦略について話し合った。正確に言えば、その8割は彼の武勇伝だったような気がする。彼は生き抜くための知恵を教えてくれたが、全くと言っていいほど、僕には無縁のシチュエーションばかりだった。


 会談が終わる頃、僕は何となく新たな決意を固めていた。佐久間の教えを胸に、僕は自分らしさ(というものがあるのならば)を出さず、戦国武将によくある野望を一歩ずつ実現に近づけるゲームを開始することだった。


 「この戦国の世を生き抜くためには、とにかく動くことが必要なんだ。」


 僕はそう自分に言い聞かせながら、部屋を後にした。夜は更に深く、清洲城は静けさに包まれていた。しかし、僕の心は新たな計画によって、普段の僕とは違い、どこか無感動に満たされていた。

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