第5話 秘策と謀略

会議は一旦休憩に入った。窓の外を見ると、午後の陽が木々の葉を透かして影を描いていた。そんなことに意識を向けるくらい、会議の内容は僕には退屈だった。それでも、会議場の裏で行われている密談に、ふと耳を傾けることにした。


廊下には、何組かの小さなグループが集まっていた。彼らは秘密めいた会話をしている。その声は、風が木々を揺らす音のように小さく、誰もが何かを恐れているように見えた。僕は壁にもたれかかり、彼らの会話を聞き始めた。


「信長様の遺志を継ぐ者は…」

「勝家は自分の力を過信している…」

「秀吉は機を見るに敏だが…」


彼らの言葉は、秋の葉が風に舞うように、とめどなく流れていた。信長の死後の権力の空白を巡る争いが、ここにも息づいている。表の会議とは違い、彼らは自分たちの利益を追求する秘策を練っていた。


「戦国の世は、夏の終わりのように、静かに、しかし確実に変わりつつある。」


僕はそう思いながら、彼らの密談を離れた。会議の裏で進む秘策と謀略。それらは、この時代の深い闇をなんとなく照らし出していた。僕はこれらの情報を心の片隅に留め、無関心を装いながら、次の一手を考え始めた。


僕は廊下を歩きながら、ふと昨夜の夢を思い出した。夢の中で僕は、終わりの見えない迷路を歩いていた。その迷路は、この戦国の世のように錯綜していて、どこに出口があるのかさっぱりわからなかった。そして、夢の中の僕は、迷路の中で何かを探していた。それが何なのかはわからないが、きっと大切なものだった。


「戦国の世も、終わりの見えない迷路のようなものか。」


僕はそうつぶやきながら、会議場に戻ることにした。僕にはまだ役割がある。表の会議での言葉と、裏で進む秘策。その両方を見極め、この複雑な迷路を抜け出す道を見つけること。それが僕の使命だった。


会議場に戻ると、再び無意味な言葉の応酬が続いていた。僕はその中で、さりげなく周囲を観察した。誰もが何かを隠し、何かを探している。僕も例外ではない。この戦国の世は、誰もが何かを求め、何かを恐れながら生きている。僕は、そんな彼らの中で、自分の道を見つけなければならない。

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