第9.1話 ロージアの朝



 朝日が昇るより早く、彼女は目覚めた。


 猫がじいっとこちらを見ていた。

 彼女の膝の上にどどんと乗り、猫背のまま首だけを上げて、じいっと彼女を見上げていた。


 黒い猫だ。それなりに大きいのだが、なぜだか微塵も重さを感じない。

 これはもしやと思い、おそるおそる手を伸ばしてみるが……触れる手前でふ、とかき消えた。

 やはり、あの天翔ける猫のご同輩。この世のものではないなにか。


 ――そんなんが膝に乗ってたとか怖っ!


 どこかぼんやりしていた彼女の頭が、完全にしゃっきりした。

 と同時に違和感。

 いつものベッドではなく、硬い床に直接座っている自分に疑問符を浮かべた次の瞬間「あ、やべ」と状況を思い出す。


 慌てて周囲を見渡すが、異常はなし。


 普段使わないセーフハウスの廊下は薄っすらと埃が積もっており、よく見ればあちこちに小さなクモの巣がある。

 それらはどれもが綺麗なまま。乱れても崩れてもいない。暴漢が踏み入ったような形跡はなく、さらにいうなら大きな物音もしなかった。おかげでついついぐっすり熟睡コースだった。


 ……よし、ギリギリセーフ!

 彼女は密かに胸を撫で下ろす。


 ドアの死角に陣取り、柱を背もたれにして、いつでも瞬時に迎撃できるよう待ち構えている内に……そのまま一眠りしてた。


 率直にいって、大失態である。


 寝ずの番が熟睡していたなど、笑い話にもならない。

 だから彼女は、まるで一睡もしてません、みたいな顔してそのまま入り口を睨む作業に戻っ、


「おいアンジー。お前今、寝てたよね?」


 目撃者がいたよくそったれ。

 彼女の死角をカバーしていた筈のもう1人が、なぜか視界の端からにゅっと現れた。


 もとより喋れない彼女は、弁解に言葉を費やすというムダは挟まない。

 ただそっと「あんた、なにいうてんの?」といわんばかりに小首を傾げるのみだ。


「いや、それが通用するのって、お前とやりたい男だけだから」


 まあ辛辣しんらつ

 淑女たる彼女は、あまりにも明け透けな物言いに目を白黒させる。


「同じこと2度いわせんな」


 あ、まずいホントにキレそう。

 慌てて彼女は、全身を使って謝意を表明する。

 いや違うんです寝てたっていうか強制的に意識が断絶させられたっていうか。


「いくらアホのお前でも、争うような物音がすれば……さすがに起きるよなあ」


 目の前のアホ女がなにをいっているのか、すぐに彼女は気づく。

 埃っぽい床にある『綺麗な』足跡。

 いつの間にか増えていた、内から外へと向かう痕跡。


 彼女の視線を辿ったクソ女が答える。


「テオとレーモが消えてる」


 なるほど、あのふとっちょおじさんたちか。

 見た目通り身体の動きは鈍かったが、頭の回転は抜群に速かった。

 そんな2人が『そう』判断して行動したということは……。


 彼女は懐から取り出した手帳にさらさらと文字を書いて掲げる。


『そりゃ逃げたんでしょ。足跡も2人分だし』


「なに逃がしてんだよテメー」


 逃げた2人の判断を踏まえつつ、少しだけつついてみることにした。


『内側の監視とか聞いてない。そっちが勝手にやってただけ。逃がしたとか意味不明』


 殴りかかって来るかな、と身構えていた彼女だったが……意外にもカス女は舌打ちするのみだった。


 ――ふうん。こいつですら、もう薄々認めちゃってるんだ。


 当然といえば当然か。

 今このセーフハウスに避難しているのは全員『エルダ商会』の関係者だ。

 最低限の計算すらできないようなヤツは1人もいない。

 ここまでに得た情報を組み合わせると、誰でもその結論へと辿り着ける。


 問題なのは、それが偽装事実か。



「……外の様子を見に行くぞ。ついて来い」



 そういって外へと出て行くアホ女の背中を、彼女は黙って見送った。


 魔女ローゼガルドから直接派遣されているこの監督員クソ女とは違い、彼女は正真正銘エルダ商会の従業員だ。事務作業と現場の取りまとめに走り回る、他の皆と同じ、単なる一従業員だ。間違っても用心棒や食客の類ではない。


 なのに。


 どうしてあのアホ女は、さも当然のように、危険な偵察に彼女が同行すると思い込んでいるのだろうか?


 たしかに一応、侵蝕深度フェーズ6ではある。

 とはいえそれは、病が治るかもと受けた(適正値がめっちゃ高かったので費用は全額免除だった)強化措置の結果、思いがけないハイスコアが出ただけに過ぎない。

 皆の盾になる喜び! のような高尚な精神など、彼女は微塵も持ち合わせてはいない。


「おいこらテメーアンジー! なんで来ないんだよ! ついて来いっつったよなァ!?」


 ぎゅいんと戻って来たゴミ女を見て、彼女は考える。

 果たしてこれ以上、こいつの命令に従う必要があるのだろうかと。


 ……いや。

 落ち着け。


 動きそうになった手を理性で止める。


 やはり確証が要る。

 いざカマした後に「やっぱ偽装で無事でした! おはよう反乱分子!」なんてことになると目も当てられない。


 だから彼女は立ち上がり、いつも通りにヘラヘラペコペコしながらカス女の後に続いた。


「……は? なにやってんの? お前が先に出るんだよ」


 一々カンに障るクソ女。

 裏口の隙間から様子を窺い、滑り落ちるように外へと転がり出る。

 そこで不意に目の奥を突き刺す曙の痛み。

 ちょうど同じタイミングで顔を覗かせた朝日が「なに見てんだよ」と陽光でばしばし彼女の目を叩いた。

 必ず沈むヤツが偉そうに。

 つい彼女は反射的に睨み返したが……すぐに眩しくなって視線を泳がせた。

 周囲に敵の姿はなし。

 死んだような静寂と、既に終わった残骸だけが、ただただ立ち並んでいた。


 ここは旧市街のはずれにある倉庫街のさらに端。もうこれより東にはなにもない、朽ちて自然と一体化しつつある旧王国時代の廃墟群。

 どこもかしこも腐りかけのボロ屋ばかりで、外壁を『そのように』擬装したセーフハウスの存在に気づくのはほぼ不可能。

 しかし、数で虱潰しにされると万が一もあり得ると、事務方ばかりの中でもまだ『マシ』な彼女とクソ女が、寝ずの番というハズレくじを引かされた。


「あー、結局徹夜かよ」


 長時間に及ぶ緊張と寝不足の影響か、朝日に炙られるクソ女はどこか調子が悪そうだ。

 対して彼女は、あり得ないほどに絶好調。ちゃんと寝るのってほんと大事。


「おい。テオとレーモの真似しようとか考えるなよ。逃げたら殺すから」


 もしそうなったら、迷わず抜刀しよう。

 彼女は密かに決意する。


 現に今も、間合いの内。

 卑しき影が走る道は、既にその素っ首へと繋がっている。


 そんな内心をへらへらした愛想笑いで隠しつつ、彼女はクソ女と2人で仲良くおっかなびっくり周囲の偵察を始めた。


「……実は近くまで来てたとか、ほんとクソ」


 歩いて1分の距離で、いきなり追っ手の姿を確認した。

 ただ、どうにも腑に落ちない彼女はさらさらと手帳にペンを走らせる。


『なんで1人?』


 もう1度確認する。間違いない。今彼女の視線の先にいるのは、逃走の際に見た顔。ドアを蹴破った男、襲撃犯の1人に間違いなかった。


「……あん? しかもあいつ、なんかケガしてんな」


 エルダ商会の別館を襲撃した賊の数は、確認できただけでも27。

 その中にいた幾人かの顔ぶれから、チンピラどものまとめ役――マルカントニオの手の者だと見当はついている。

 連中の強みは数だ。

 一部の側近以外は侵蝕深度フェーズ2か3のヤツがほとんどだが、とにかく数が多い。

 いくら侵蝕深度フェーズ6だといっても、囲まれてメッタ刺しにされれば普通に死ぬ。会計や書類の作成が得意な事務屋はもっと簡単に死ぬ。つまりは逃げるしかなかった。


 だが、向こうが1人なら?


「わかんないことは、きいてみよっか?」


 そうして開始される実にクソ女らしいクソみたいな作戦。

 彼女がニコニコしながら真正面から無防備に近づき、背後からクソ女が捕らえる。

 もし、どこからともなくワラワラと仲間が湧いて出たなら、きっとクソ女はそのままフェードアウトするに違いない、愛と友情の捨て駒大作戦。


「型落ち品でも、おとりくらいならできるだろ?」


 彼女の中で、元々ゼロだった慈悲の心がマイナスへと突入する。



 つまりはもうこいつ積極的にぶち殺してえ。



 しかし淑女たる彼女は、そんな内心をおくびにも出さず、清く正しくおとり役を全うした。


 生来の素材の良さに加え、後天的な病により言葉を失った彼女のかもし出すどこか儚い薄幸の美女オーラは、問答無用で見る者全ての庇護欲をかき立てる。正直、そこに関しては自信がある。

 ただまあ、こんな人気ひとけのない廃墟同然の場所で、女が1人でふらふらしているとか……どう考えてもくっそ怪しい。

 荒事に慣れた旧市街の住人なら、考えるまでもなく直感で理解する。

 罠だ。

 荒事に慣れた旧市街の住人なら、考えるまでもなく直感で行動する。

 殺れ。


「しゃあああああ!!!」


 エンジェリックスマイルを浮かべる彼女に向け、両手で腰だめに固定した短刀ごと突っ込むという素晴らしい判断力、決断力、行動力を発揮するエリートちんぴら。瞬時に弾き出された100点満点の回答に思わず固まる彼女。


 ほんのちょっびっとだけ期待していたクソ女の援護は一切なし。

 ただ黙って腕を組みこっちを見ているだけ。

 まさにクソ女。

 決めた。

 こいつは今日、絶対にぶっ殺す。


 そうして始まる、彼女とナイフを持ったちんぴらとの、めっちゃ地味な、しかし死力を尽くした全身全霊の揉み合い。

 初撃を気合で逸らし、組み付き、ごろごろ転がって、がんがん地面に頭をぶつけて、それでも結局は侵蝕深度フェーズ6の出力にものをいわせたゴリ押しで脱力するまでぶん殴って、打って、落として、用心の為に2本くらい骨も折って、辛くも彼女は勝利した。


「おつかれー。じゃあちょっと話聞いてくっから、もし誰か来たら……なんでもいいから3回叩いて音を鳴らせ」


 無力化したちんぴらを引きずり、クソ女が廃屋の中へと消えた。

 汗だくで荒い息を吐きながら転がり、もしちんぴらの仲間たちが来たのならそのまま素通りさせようと本気で考えていた彼女だったが……残念ながら追加はなかった。


 クソ女による情報収集という名の拷問はすぐに終わり、結果として、いくつものホットな新情報が手に入った。

 それまでは死んだように静まり返っていた廃墟群に、セーフハウスから出て来た皆の明るいざわめきが広がる。

 その中心にあるのは、仕入れたてほやほやなとびきりのグッドニュース。


 もう既にマルカントニオの一派は、あらかた始末された後だった。


「マルカントニオは死亡し、その部下も『魔女の巫女』の手によって壊滅した。そこまではわかる。だがなんだ? その急に出てきた新しい子供の王族とやらは? それにヒルデガルドだと? なぜここであのお飾りが?」

「さあね。ローゼガルド様のおつかいとかじゃない?」

「……まあ、危機は去ったのがわかっただけでも上々か」


 安全が確保されてからのこのこ出て来てデカいツラをする会長ブタとクソ女。

 この2人が今の『エルダ商会』の2トップだ。

 本来なら更に上に『取締役』であるカルミネがいたのだが、つい先日ぼんと弾け飛んだのでそのまま繰り上がりとなった。


 地位があろうがなかろうが、気軽に上半身が弾け飛ぶアットホームな職場。

 自分さえそこにいなければ、最高に笑える馬鹿話である。


「ならもうこんな場所にいる必要もない。別館へ戻るぞ。いい加減に起きろアンジー。お前は最後尾で警戒だ」


 会長ブタの号令のもと、エルダ商会の従業員、総勢10名の大所帯がぞろぞろと移動を始めた。



 エルダ商会。


 元々は、特別行動隊という魔女の私設部隊の隠れ蓑として設立されたダミーカンパニーであり、実体のない書類上の存在でしかなかった。

 しかしある時、ふとした魔女の気まぐれで、失脚者の流刑先として機能するよう雑に体裁が整えられ、実際にその運営が開始された。


 担当者の死亡率が高い。死ぬほど過酷。基本的にスケープゴート。割に合わない。

 そんな言葉をとにかくかき集めた、(悪)夢のような職場。

 有り体にいってしまえば、誰もが忌避する各種業務を積極的に請け負う――懲罰人事の受け皿である。


 書類上の分類としては、廃品、不用品処分のリサイクル業。

 扱う商品は、決して表に出せない激ヤバな物品の数々。

 物が物だけに常に危険がいっぱいで、ちょっとでもしくじると大変なことになっちゃう容赦なく処分するけど……まあ頑張りなさいね。


 その魔女の言葉に、否といえる者などいる筈もなく。


 そうして彼女は、今日も頑張っている。

 いや、今日まで頑張ってきた、というべきか。

 そう。

 今日までだ。

 おそらくもう魔女ローゼガルドは、



「なあ、アンジー。ひとつ確認したいんだが」



 いつの間にか行列の最後尾――彼女のすぐ隣に闇金洗浄マネーロンダリング部門のエース、ミロがいた。


「行動隊は、その、ほぼ全滅してたんだよな?」


 強化措置を受けた者の死体は『回収対象』であり、そういった血生臭い業務は彼女の担当である。

 なので昨日は1日中、本館に『散らばる』行動隊員の遺体回収作業にかかりっきりだった。


 どうにか人員をかき集め、現場にも出て、事務作業もやって、日が落ちれば襲撃されて、ほぼ戦闘員扱いされて、なんか見張りとかもやらされて……うん、見事なまでに酷使されている。


「生死が不明なのは、マリアンジェラ、グリゼルダ、ノエミの3人で間違いないんだよな?」


 ミロの意図がわからず、困惑しながらも彼女は頷く。

 たしかに、その3名以外の死亡は確認した。

 あの最低なパズルは2度とやりたくない。


「……マリアンジェラとグリゼルダの死亡が確認でき次第、俺たちはを起こす予定だ。アンジーも乗るか?」


 率直に、驚いた。


 と同時に納得もする。

 そりゃ彼女と同じ立場にあるのだから、同じ結論に至るのも必然かと。


 彼女は少しだけ考えてから、手帳ではなくバラ紙に文字を書いた。


『グリゼルダは省いて大丈夫。オフのあいつは無害』


 ミロの視線だけが動くのを確認した彼女は、ぱくりとバラ紙を食べた。

 一口サイズのバラ紙は、形として残せないやり取りに使う。


「それ、本当か? たしかにアンジーは『あれ』の担当だけど……いや、グリゼルダとか、どう考えても一番コアな信奉者じゃないか」


 エルダ商会が管理する物品には『特別行動隊の隊員』も含まれている。


 常識を遥かに超えた実力を持ちながら、通常の軍隊では『損害の方が大きい』と判断された破綻者や異常者、あるいは表には出せない実験成果の寄せ集め。


 それが特別行動隊。


 暴君たる魔女の恐怖と、その忠臣である隊長の統制と、それぞれに割り当てられた『担当員』の涙ぐましい努力とが組み合わさって、どうにか隊としての体裁を保っていた、魔女のおもちゃ箱。


 その中でも指折りの『狂人枠』として忌避されていたグリゼルダだったが……実際に接していた彼女の見解は、他とは少し違う。


『グリちゃんのあれ、たぶん外付け。頭の中いじられてるっぽい。地は大人しいタイプ。下手に触らず放置がベスト』


 ぱくりむしゃむしゃ。

 粗悪なバラ紙は相変わらずくっそ不味い。


「頭の中って……ああそうか、バンビか。あの外道め、一体どこまで――」

 彼女はひょいとミロの口に粗悪なバラ紙を放り込んだ。

 未知のくそ不味さに一瞬で吐き出すミロ。

 すぐ前を歩く、バンビの担当だったセレーナの背を指す彼女。


「べつに気にしなくていいわ。だって本当のことだもの。バンビあいつは自分勝手な外道で、1から10までウソばかりの、……どこにでもいる、臆病な子供だった」


 背中越しに声だけが飛んで来る。

 ばっちり聞かれてた。

 しかもなんか、めっちゃ複雑な感情が込み込みかつましましな感じである。

 彼女は黙ってミロの足を踏む。

 これからを起こす仲間内で、妙な火種をちらつかせるなよお前さあ。


「悪い、なんというか……こうして皆で『担当』のことを話すとか初めてだから、色々と慣れてなくてさ」


 隊員についての情報は軍事機密に抵触するとかで、上長への報告以外では一切の口外を禁止されていた。


『追加のお得情報。グリちゃん、マリアンジェラをガチで嫌ってる。ノエミのことは結構好きみたい』


 それをこうしてぶちまけている時点で、もう彼女のスタンスは明確である。


「わかった。条件を更新しよう。マリアンジェラの死亡が確認でき次第、俺たちはを起こす。改めて聞くが、アンジーも乗るか?」


 彼女はしっかりと頷いた。


「よし、なら具体的な手順だが――」


 なるほどこいつ、伊達に知能犯罪に手を染めてはいないな、と納得できるような完璧なプランだった。


 実際のところ、彼女がすること自体に変わりはない。

 思いがけずその前後が補強されたと喜ぶべきだろう。


 ただひとつだけ、どうしても拭いきれない不安が、気がかりが、……恐怖が。



『本当に魔女は死んだのかな? 偽装の可能性は?』



 ぱくりむしゃむしゃ。

 粗悪なバラ紙から、どうしてか血の味がした。


「こんな隙や弱味を見せるのを、あの魔女が許容できると思うか? なんの確証もなく、魔女傘下のエルダ商会を襲撃する馬鹿が、今日までこの旧市街で生き残れたと思うか? あの用心深い2匹のタヌキテオとレーモが行動した時点で決まりだとは思わないか?」


 理屈としてはその通りだ。

 だから彼女は、そうだね、と頷いておいた。


「わかっているとは思うが、もしマリアンジェラが生きていたら、その時点で計画は全てキャンセルだ。逃亡するか残るかは、各自で決めてくれ」


 それはもうしょうがない。

 文武両道。

 片手間ではなく、双方を高次元で両立する本物の才人。

 人格以外には欠点がない、ほぼ完璧な殺し屋兼研究者にしてクソ女の姉。


 マリアンジェラ・アルベルティ。


 あいつ1人がいるだけで、たぶん全てがひっくり返される。

 だからヤツの生死、あるいは動向の把握は最優先事項だ。


「おそらく今日明日中には状況が動く。いつ始まってもいいように、覚悟だけはしておいてくれ」


 そういってミロは先頭集団へと戻って行った。


 残るもう1人の行動隊員、ノエミについてはミロも彼女も一切触れなかった。

 触れる必要がなかった。

 マナナが死んでからのノエミは抜け殻であり、きっともうあいつは、なにもしないしできやしない。


 そこでふと思い出す。

 そういえば、ノエミの担当はレーモだったか。


 眠る彼女の前を素通りし、そのまま逃げたであろうふとっちょおじさん。

 逃亡という選択肢を取れるだけの下準備を、あの膨大な仕事量に忙殺されながらも密かに整えていた抜け目ない男。


 もしノエミがまともな状態だったのなら、あの便利な鷹と切れ者の頭脳とを組み合わせることで、きっと状況のひとつやふたつは思いのままに――。



 そんな無い物ねだりを打ち切り、彼女は歩を進める。



 現場の状況からして十中八九、行動隊員は全滅してる。

 他ならぬ魔女自身の手によって、全て『処理』されたとみるべきだろう。

 制御不能となる怪物どもに対する適切な処置か、あるいはただ単に道連れが欲しかっただけか。

 どちらにせよ、有り難い。


 ――こうして話せる時間が、どんどん、短くなってるんです。


 脳裏によぎった、伏し目がちで気弱な顔。

 次々に思い出す、つまらない手品の数々。

 どうしてか、無性に人を斬りたくなった。



 そんな白々しい感傷を打ち切り、彼女は歩を進める。



 おそらく、最もネックになるのはクソ女の存在。

 魔女直轄であり、正規の戦闘訓練を受けた侵蝕深度フェーズ7。

 必ずこちらの前に立ち塞がってくるであろう約束された敵。


 侵蝕深度フェーズ6の彼女では、正面から斬り落とすには骨の折れる相手。

 だがあいつは弱者をいたぶるばかりで、おそらくはまともな殺し合いをしたことがない。

 やってやれないことはない。


 ……ただ、普通に怪我とかはしたくないので、いざ殺るとなったら、どっかでいい感じに不意打ちしようと彼女は決めた。


 互いの武を競い高め合う喜び! とかいう高尚な精神など、いっそ気色悪いとすら思う。


 そんなものは、彼女が生まれた時にはもう、どこにもなかった。




※※※




 見渡す限りの廃墟群を抜け、馬鹿みたいに広い倉庫街を通り過ぎ、途中で闇市部門のイレネオが顔役のブラックマーケットがあったので休憩と朝食を兼ねて一休みし、ようやく旧市街の中心部にさしかかろうかという頃には……もう随分と日は高くなっていた。


 なにかこれといったトラブルがあったわけではない。

 単純に、進むペースがめちゃくちゃ遅かっただけだ。


「……絶対に徒歩で移動する距離じゃないだろこれ」


 闇金洗浄マネーロンダリング部門のエース、ミロの声に精気はない。半分以上死んでいる。

 まあ無理もない話ではある。

 それなりに『マシ』なのは彼女とクソ女だけで、他は皆やくざな商売をしているだけの非戦闘員だ。しかも偉くなればなるほど運動不足になるおまけ付きで、身体能力には微塵も期待できない。


「なんだミロ、おかわりが欲しいの? しないように半分だけなら」

「――結構だ。必要ない」


 クソ女の軽口に、ミロは硬い声で返す。


 逃げる時――行き道では、それじゃ追いつかれて殺されると、クソ女の強権により全員がアレな薬をガンガンにキメていた。死に物狂いの馬鹿力に色々と度外視なドーピングの相乗効果がプラスされ、彼女ですらドン引きするレベルのスピードとスタミナを全員が発揮していた。


 ……その道中で、古代遺物ロストロギア部門のボナは心肺の破裂により死亡している。


 この件でクソ女を責める者はいない。

 やらなきゃ皆死んでた。それくらいはわかる。

 だがここで、こんな『いわなくてもいいこと』をノリノリでいってしまうからこそ、こいつはクソ女なのだ。


「なんだよ、ノリ悪ィな」

「馬鹿をいうなマリアンナ。戻ってからもやることは山積みなんだ。貴重な人手をお前の薬で潰されてはかなわん」

「……おい会長。あたしは寝るから、戦力にはカウントすんなよ」

「なにをいっている? 貴重な人手を遊ばせておく余裕があると思うか? まずは金庫に放り込んだ書類の整理に――」


 襲撃に際し、世に出ると激ヤバな書類や犯罪の証拠となる文書等は、まとめて特別製の金庫室へと放り込まれた。

 全部門のありったけを大急ぎでぶち込んだので、今あそこがどうなっているのか……考えるだけで憂鬱になる。


「おい待て。……誰かが、いやがる」


 ようやく見えてきたエルダ商会の別館。

 魔女ローゼガルドの威光で、普段からこの一帯には人気ひとけがない。

 なのでいくら遠目だろうが、動く人影はやたらと目立つ。


「マルカントニオの残党……ではないな。もしそうなら、居ることを悟られないよう隠れる」

「つーかあれ、なんか出たり入ったりを繰り返してね?」

「往復して、運んでる? 板とか四角い木っぽいやつとか……あ! あれ机だ! バラバラになってる!」

「やっぱ荒らされてるか。もう使えないゴミを外に出してるってことは片付けだね。テオさんとレーモさんかな?」

「にしては細い。そもそも、なんで逃げた奴が片付けとかしてんだよ」

「じゃあ誰?」


 そうした皆の疑問の答えは、近付くことであっさりと出る。


「……マナナ。お前、なんで生きてんの?」


 クソ女が代表して、皆の気持ちを代弁した。


「そっちこそ、本当に無事だったんだ。結構大規模な襲撃だったみたいなのに、凄いじゃないっすか」


 ほどよく日に焼けたような褐色の肌。スタイルはいいのだが色気より先に『健康的』という印象が先行する陽属性の塊。見ているこちらまで元気になるような、生き生きとした表情。

 彼女はついつい何度も見直してしまうが、やはりどう見ても間違いない。マナナ本人だった。


「……質問に答えろマナナ。なんでお前が生きてて、ここに居る?」


 マナナ・サンチャゴ。

 おそらくはここから先、全ての『強化措置』の目標となるであろう最高傑作。

 全項目において評価値Aを叩き出す性能面はもちろん、なんの歪みもない安定した精神と常識を背景とした普通の性格を兼ね備えた、まさに『完成品』と呼ぶに相応しい存在。

 評価審査の度に繰り返しそう書かれる、数少ない特別行動隊の良心枠。


 ……ただ彼女からすれば、あんなドブの底じみた特別行動隊で、どっぷりと鼻の先まで汚れ仕事に浸かり、腹の底までクソの塊で満たされてもなお変わらずに『普通』でいられる時点で、どこかが決定的におかしい異常者としか思えない。


 すぐに『やべえ』とわかるマリアンジェラより、一見『普通』に思えるマナナの方が100倍危険な存在だと警戒するのは、果たして彼女の考えすぎだろうか?



「ここに居る理由? 仕事っすよ。最近、新しいところに勤め始めて」

「……は? なにいってんのお前」

「皆にも関係ある話だから、ちゃんと聞いて。えー、突然ですが今日から『エルダ商会』も、その新しい勤め先の傘下……いや合併かな? とにかく一部になったから、その件について新会長から説明があります」

「さっきから、なにワケわかんねえこといってんだ手前ェ。大体いつから――」


 マナナはつまらない嘘など吐かない。

 他人をからかって喜ぶ性質でもない。

 信頼はないが信用はある。

 戯言ざれごとではない。


 なにかが、とてつもない速さで進行している。

 状況はさっぱりわからないが、それだけはわかる。

 いや、この『ついて行けてない』感覚は、エルダ商会の面々だけが置き去りにされている、といった方が正しいのか。


 そこでとんとん、と彼女の肩が叩かれる。

 最後尾にいた彼女のさらに後。

 弾かれたように振り向くと、そこにいたのはノエミ。


 最後に見た、まるで生きている死体のような無表情ではなく、にこにこと笑みを浮かべているノエミ。


 そっと彼女の手を取り、無言のまま『透明のなにか』を握らせる。

 ずしりとした重量感。片手ではなく両手で持つなにか。

 見えないが手触りはある。おそるおそる、導かれるままに指でなぞる。

 短い弦が張ってあり、これまた透明な短い矢がセットされており、引き金がある。

 この形状はおそらく――いしゆみだ。


 ノエミはうんうんと2度ほど頷いてから、すっとクソ女の背中を指差した。


 そこでようやく彼女は、もう事態は本当に終息していて、既に『締め』の段階に入っているのだと理解した。


 ――これはもしや、据え膳というやつでは?


 べつにわざわざ、進んでクソ女と命がけの殺し合いなんてしたくない彼女としては、まさに願ってもない展開。

 据え膳はぺろりと喰っちまえるタイプの女である彼女は、迷わずノエミに向け親指を立ててみせた。

 それを受けたノエミもにっこにこでサムズアップ。



「マナナ、ひとつ確認させてくれ。テオさんとレーモさんは、もうそっちにいるのか?」



 しばらく続いていたクソ女のわめき声をミロが遮った。

 プライドの高いクソ女を皆の前でないがしろにする。

 おそらくはミロも、彼女と同じ結論に辿り着いた。


「ああ、いるよ。今は必死に金庫室で必要な書類を探してる。手が空いてるなら手伝ってあげて」

 マナナが視界からクソ女を外す。

 話の通じるミロへと向き直る。

「他にも聞きたいことがあるなら、いくつでもどうぞ」

 たぶん、彼女の出番はもうすぐだ。

「なら……マナナの新しい勤め先の名前は?」

「A&J大陸総合商社」

「俺たちの待遇は?」

「基本、据え置き。一部業務内容の見直しと昇格。そこら辺は要相談」

「クライアントは?」

「現当主、ヒルデガルドさま」

「なるほど、もう全部、終わってるのか」

「うん。魔女もマリアンジェラも、死んだよ」


「――でたらめいってんじゃねえ!!!」


 クソ女がキレた。


 よし、マナナに殴りかかった背中をズドンだ、と狙いをつけた彼女の手が止まる。


 ぎい、と。


 突然、ドアが開いたからだ。



「なに表でデカい声出してんだよ。ご近所さんに迷惑だろうが」



 別館の正面ドアから、見知らぬ男が出てきた。


 いかにも『やくざ者です』といわんばかりの、ガラの悪い縞々の上下。

 一目で鍛えているとわかる体格に甘いマスク。黒い長髪の演出する謎の色気。

 その隙間から垣間見える、暴力の相。


「あ、新会長ボス。事務方の皆が戻ってきたんすよ」


 彼女はすっと狙いを下げる。

 新しい会長ボスとやらが、ここでなにをいうのか、興味が湧いたのだ。


「おーそうか。話は聞いてるぜ」

 そこで皆へと視線を向け、

「初めまして諸君。A&J大陸総合商社代表兼警備部長のミゲル・ベインだ。不幸な事故により急逝したローゼガルド殿の後任、現当主ヒルデガルドより、宙ぶらりんになった『エルダ商会』の一切を任された――まあわかりやすくいっちまえば、君たちの新しい上司だ」


 ミゲル・ベイン。またはキッドマン。あるいは無法者の星アウトロースター

 色々と呼び名のある、最も成功したチンピラたちA&J大陸総合商社の現トップ。


 それが直に現地入りして、騒動の次の日にはあらかたの話をつけ終わっている。


 動きが早い、などというレベルではない。

 まるで最初から『こうなること』がわかっていたかのような、あり得ない次元の決め打ち。

 しかもそれは全て的中し、他の誰かが舞台へと上がる前に、もう既に幕は下りている。


 ダメだ。わけがわからない。


 想定外とは、誰にも想定できないからこそ、そう呼ばれるのだ。

 夜空から星々が降りて来るとか。

 あの魔女が、あっさり死ぬとか。



「おいおい、そう緊張しなくてもいいって。べつに取って喰おうってワケじゃねえ。むしろ、待遇としては良くなるんじゃないかな。あ、これもういった? いいよいいよ、大事なことは何度もいっとけ」



 彼女の脳裏によぎる、まことしやかに囁かれるうわさ話。

 実際にされてみると、ちっとも笑えない与太話。

 A&Jは

 だから連中は、


「ただまあ、2人ほど、ちょっと例外がいてな。アダーモとマリアンナ、お前たちだ」


 ミゲルが会長ブタとクソ女を指し、ゆっくりと歩み寄る。


「お前たち2人だけ、エルダ商会の従業員としての登録がない。たぶん、時に、お前ら2人はそのまま後腐れなくトンズラできるようにって措置なんだろうが……ウチの管轄になったからには、そんな生温いはなしだ」

「なんだ、そのまま私を使うつもりか?」


 会長ブタ――アダーモが即座に返す。

 ここで狼狽うろたえるようでは、今日まで魔女の下で生き延びることはなかった。

 こいつはブタではあるが、まぎれもなく会長でもあるのだ。


「お前ら2人の作成した書類はひと通りチェックした。実務能力に問題はない。お前ら2人が他から『好かれてない』のは聞いているが、組織には嫌われ者も必要だ。ある意味で得難い人材ともいえるな。実際、どちらかといえば俺もそっち側だ」


 だからアダーモ、と新たなボスは続ける。


「選べ。あとはお前の気持ちひとつだ。ここで決断できる奴を、俺は決して軽んじたりはしない」


 そこでちらりと彼女の視界の端が動いた。

 いつの間にか隣の屋根上に移動していたノエミが、透明ななにかをアダーモの背中に向け構えていた。


 あ、やっぱやくざだわこれ。


 なんか格好良いことをいいつつも、実は殺る気満々。

 もう既に、殺していいヤツとそうじゃないヤツの選別は済んでる。

 上手くいけばラッキー。

 ダメなら残念、見せしめになってくれ。


 うん、ばっりちやくざだわこれ。


「……待遇の交渉を行う場は、用意されるんだろうな?」

「もちろんだとも。じっくり話し合おう」

 そこで新しいボスは、なんだかムカつくスマイルを浮かべて、がしっとアダーモの手を握った。

 どうしてか、握手というより捕食のように見えた。

「お前の選択チョイスを歓迎するよ、アダーモ。ほどほどによろしくやって行こうぜ」


 自分に後がないことくらい、会長を務めていたアダーモなら当然理解している。

 だからこうなるのは、まあ必然ともいえた。


「おい」

「なんだいマリアンナ」

 名前を呼ばれたクソ女が、一瞬だけ目を細めたが……結局は構わずに続けた。

「さっきいってた、マリアンジェラ……姉さんが死んだってのは」

 暴力の予感を嗅ぎ取ったアダーモが素早く下がる。周囲の皆も同じだけ下がる。

 この手の素早さは、なければ死ぬので皆誰もが持ち合わせている。


「それは本当だよ。わたしが殺した」

 さらりとマナナが答えた。

「……あ?」

「話している最中にいきなり殺しにきたから、やり返した。ちょっとは話になるかもと思ってたわたしが、馬鹿だったよ」


 これでクソ女はマナナに釘付けだ。

 正面にはマナナと負け知らずの無法者の星アウトロースター

 背後からはノエミと彼女が『見えない矢』で狙いを付けている。


「テメーマナナ、吹きやがったなオイ」

「マリアンナ。あれやこれやを呑み込んで、生きる為の努力ができる。それが、お前を迎え入れる条件だ。もう魔女直轄の『特権』は消えた。ムカついたからぶっ殺すはこの先通用しない」

「は? じゃあ魔女ローゼガルド様の死体でも持ってこいよ」

「ひとつ教えてやるが、マナナは『できた』ぞ」

「一緒にすんじゃねえ」

「そうだな。違うみたいだ」


 おそらく、最初からクソ女を生かしておくつもりはない。

 なのにわざわざ、こうして無駄ともいえる問答を挟むのは……ああなるほど『実演』のつもりか。


 たとえ『元』魔女の犬だろうと、手を取るのなら迎え入れる。

 噛み付くのならぶっ殺す。

 その実演。


「……付き合ってらんねーよ、アホどもが」


 そこでくるりと、クソ女が踵を返した。

 てっきりキレてマナナに飛びかかると思っていただけに、むちゃくちゃ驚いた。

 彼女はクソ女の視界に入るより速く、さっと自然に両手を泳がせる。

 武器が透明なのって凄く便利。あっという間に、戸惑うおろおろ系無口美女の完成だ。


「なんだ、行っちまうのか?」

 クソ女は答えない。ただ黙ったまま1歩を踏み出す。


「行くアテとか、あるのか?」

 クソ女は黙ったままもう1歩踏み出す。


 予想外の行動を取るクソ女の顔を、彼女はまじまじと観察する。

 2対1(実は4対1)にびびって退散する者の目ではない。

 殺る気に満ちた、最大効率を狙う殺し屋の面構えだ。


「……マリアンナ」

 クソ女がアダーモの隣を通り過ぎようかという時、ゆっくりと声がかけられた。

「冷静に考えろ。じきに残党狩りという名目の虐殺が始まる。お前も私も、顔が売れすぎっ」


 アダーモの言葉が途切れた。

 それを発するノドに、曲線を描く刃が差し込まれたからだ。


「尻尾振った犬コロが、一丁前に言葉しゃべってんじゃねえよ」

 両手で持った曲刀に体重をかけつつ半回転。血と共に頭部が転がり落ちる。

 一息遅れて、アダーモの首から下が崩れ落ちた。


 誰も悲鳴をあげるような無駄はしない。

 元会長から噴き出す血飛沫を合図に、エルダ商会メンバーは一斉に逃走を開始していた。

 クモの子を散らすように、それぞれが別方向へ、素晴らしいスタートダッシュを決めていた。

 ここでまごつくヤツは、ここでクソ女に殺される。


 なるほど、クソ女は冷静に考えた。

 マナナと無法者の星アウトロースター、2人相手に勝ち目はないと。

 だからもっと簡単に、確実にダメージを与えられる方法へと舵を切った。

 山積みの事務作業。

 ここから先、加速度的に増加してゆくであろう仕事量。

 ちっとも足りないマンパワー。

 既に古代遺物ロストロギア部門のボナが死亡してしまいマイナス1だった。

 そして今、アダーモが死んでさらにマイナス1。

 このマイナスが積み重なるほどに、マナナは、A&Jは、確実にもがき苦しむ。ダメージを受ける。狙うはここだ。軟らかい。


 ……たしかに合理的ではある。瞬時にその方法論へと辿り着き、微塵も迷わず実行できるその精神性。

 まさにクソ女。


 彼女は狙いを付けて、引き金を引いた。


 透明の矢が、曲刀を振り抜いたクソ女の背中へと吸い込まれる。

 そこでなぜか、クソ女はさらに半回転した。

 透明の矢の側面に、くるりと回ったクソ女の肘が添えられ――そのまま軌道が逸らされる。


 やはりこいつは魔女直轄の侵蝕深度フェーズ7。

 ただ直感だけで不可視の矢をさばく、怪物の中の上澄み。


 だから、こんなことすらやってのける。


 逸らされた矢は、アダーモの血煙を潜ったことで赤く色づいていた。なので彼女にもよく見えた。

 その向かう先には――新たなボスであるミゲルの心臓が。



 ――あ、やべ、うそこれ、こっちが殺したことにおまえまじでクソ女ああああ!



 クソ女のクソみたいな絶技に固まる彼女の視線の先で、ミゲルが手を動かす。

 

 いつの間にか持っていたいしゆみの引き金を無造作に引く。

 ばん、と射出された矢と心臓に向かう矢がぶつかり、それぞれが明後日の方向へと弾き合う。

 その片方、無造作に撃った矢がそのまま真っ直ぐ向かうのは――回転を終えたクソ女の胴体。正確には胸の高さの少し右。

 どす、と突き刺さり、押し出されるまま仰向けに倒れた。


 ……なんだろう、この曲芸合戦は?


「ははっ! 凄えな魔女直轄! 死角からの見えねぇボルトを利用して殺しにきやがったぞおい!」

「前線要員じゃないからって、ちょっと甘くみてましたね」

「ちゃんと『お返し』できたと思うんだが、どうだ?」

「うーん、当たる瞬間に、くいっとネジってた感じなんで……たぶん生きてますから、動かなくなるまで撃っときましょう」

「そっか。やっぱ曲撃ちは精度が課題だなあ」

 ばんばんばんばん。がんぎんがんがん。

「……で、薬だっけ? あの曲刀は違うんだよな?」

 ばんばんばんばん。かんぎんがんごん。

「ええ。あれは亡くなった行動隊員『武器職人ウーゴ』作の長期契約品で、マリアンナのつくる武器は『薬』です」

「それ、むちゃくちゃできねえ? やりたい放題つーか」

 ばんばんばんばん。がんがんきんがん。

「きつい制限がいくつもあるので、いうほど万能じゃないっすね。ちゃんと『治療』ができる人員がいれば、むしろ扱いに困る感じで」

 ばんばんばんばん。ぎんがんきんぎん。

「けどあれだろ、痛み飛ばしたり、ハイになったり、色々できそうじゃん」

「そういう路線って、基本、先がないっすからねえ」

 ばんばんばんばん。がんぎんがんがん。

「……あの、ミゲルさま。さっきから撃ってるの、全部弾かれてますけど」

「だから起き上がるヒマを与えないように撃ちまくってる。心臓は外したけどちゃんときいてる。辛そうだ。ほら、これでマナナも撃ちまくれ。ハンドル回せば連射できるから」

「なんで自動でボルトが湧いてくるんすかこれ。怖いんすけど」

 ばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばんばん。

「ヘイ! そこの君も撃って撃って! それ自動装填のやつだから、とりあえず引き金を引きまくれ!」


 突然声をかけられた彼女は、ぶんぶんと大げさに頷いてから引き金を引きまくった。

 するとたしかに、2秒に1度は矢が射出される手応えがあった。

 透明で、矢が自動生成されて撃ち放題。

 しかも気軽にぽんと貸与可能。

 なにこれ怖い。


 正面からはマナナとミゲルによる連射。逆方向からは彼女による2秒に1発の透明な矢。

 クソ女は尻餅をついたまま起き上がれない。どこにもそんなヒマがない。

 いつの間にか2刀となり、全力で両腕を振るっていたクソ女だったが……ついに限界がきた。


 ばきりと、クソ女の曲刀がへし折れた。


「――ナメんなよくそがああああ!!!」


 残りの1刀で致命的な矢だけを弾きつつ、他は全て諦めた。

 飛び上がり、そのまま何本もの矢を受けつつも一切減速することなく逃走。 

 矢の射程から出たところで、全員が撃ち方を止めた。


「……なんであんだけ刺さってんのに元気一杯で走れんだ? 怖ェんだけど」

「致命傷以外は痛み飛ばしてゴリ押し、って感じですかね」

「うわあ。やっぱ嫌だな魔女直轄。殴り合いとか絶対にしたくねえ」

「あれは例外っすよ。普通は、殺せばちゃんと死にます」

「そうかあ? 旧市街ここに来てから、なんか致命傷受けても100秒は動いたり、殺しても死ななかったり、猫で不死身だったり……そんなんばっかだぜ?」

「あー、なんというか、やっぱ『持って』ますよミゲルさま。最低のくじ運っていうか」


 暢気に話す2人に向けて、彼女は全身を使ってアピールする。

 いやいや! あのクソ女逃がしちゃったら、エルダ商会メンバーが皆殺しにされるって!


「……もしかして彼女、喋れないのか?」

「ええ。アンジーは声が出せません」

「どうして治せない?」

「機能的な問題は一切発見できないんです。ああ見えて性格は死ぬほど図太いので、精神的な問題も除外できます。だから原因不明の病、としかいいようがないんすよ。現在の技術や知識の限界、ってやつです」


 紹介してくれるのは有り難いが、内容がよくない。

 もっとこう、儚げな美を前面に押し出せよマナナお前さあ。


「なんでここに?」

「生まれは有名な武門の家で後継者候補の1人だったらしいんすけど……原因不明の病で声が出せなくなって、追い出されたそうです」

「あー、なるほど。未来の統率者が声を出せないのは、きついか。他の候補者に蹴落とされちまうな、そりゃ」

「で、とくに行くアテもやることもなかったんで、ワンチャン病が治ればラッキー、みたいなノリで強化措置を受けたそうです。適性ランク甲の免除枠で」


 変わらず暢気に話し続ける2人に焦れた彼女は、懐から取り出した手帳にさらさらと文字を書いて掲げる。


『ク、マリアンナを逃がすのは本気でまずい。商会メンバーが皆殺しにされる』


 それを見たミゲルも懐から手帳を取り出し、さらさらと文字を書いて掲げた。


『大丈夫。手は打ってる。たぶんもうすぐだ』


「ミゲルさま、耳は普通に聞こえてますよ」

「いや、1度自分の手でもやってみようと思ってな。やっぱ手間がかかるし不便だなこれは」


 そこでようやく彼女は気づいた。

 ノエミが、どこにもいない。


「で、続きは? 適性ランク甲の免除枠っていえば、エリート候補だろ?」

 やっぱ人となりを知るには来歴を聞くのが一番なんだよ、と語るボスへ、そんなもんっすかねーとマナナは続ける。

「結局、強化措置を受けてもアンジーの病は治りませんでした。ただ最初期から侵蝕深度フェーズ6っていう破格の結果が出て、これなら言葉がダメでも使い道はいくらでもあるだろうと、お偉方があれこれ話し合ってる間に……アンジーは逃走しました。元々、病を治すのが目的で兵士として働くつもりなんて欠片もなかったそうです。なんでも、海を越えて自由になりたかったとか」


 やめろこの馬鹿。

 他人の痛々しい過去を真顔で語るんじゃない。

 あの時は総身に満ちる万能感でちょっと気が大きくなってたんだよお前だって覚えがあるだろこの無神経な陽属性!


 思わず1歩踏み出そうとした彼女に、


「危ないアンジー! 下がって!」


 反射的に後方へ飛んだ彼女の鼻先を、大質量の『なにか』が掠める。


 どごしゃ、と響く重い音。

 舞い上がる砂塵と風と血。

 へこみ、ひび割れる地面。

 耳にへばりつく嫌な残響。


 なにが起きたのか、一瞬遅れて彼女は理解する。


 それなりの重量を持った『なにか』が、超高高度から落ちてきた。

 彼女の鼻先を掠め、空から地へと激突した。


「だ、大丈夫アンジー!? おいノエミ! ちゃんと落下ポイントは確認しなきゃダメだろ!」


 空へ向け叫ぶマナナの視線を辿れば、豆粒のように小さく見える黒い点。

 察するに、あれはおそらく鷹だ。

 ノエミの黒い鷹。

 今地面で潰れている『これ』を、遥か上空から落としたであろう元凶。


「いや、そんなアクロバット飛行とかいいから、さっさと戻って来なって!」

「いや、よく見ろマナナ。タッカー君の飛行ルートを線で繋ぐと『ゴメン』の文字になってる」


 あの高さから落ちれば、どう足掻こうとも即死は免れない。

 だから当然、確認するまでもなく、クソ女は即死している。

 そう。

 逃走するクソ女――マリアンナを掴んだノエミの黒い鷹は、そのままあの高度まで持ち上げ、ぽいっと放り落としたのだ。


 ――どうして、そんなことができる?


 ノエミの鷹に、そこまでのパワーはなかった筈だ。

 そもそもそれが可能なら、もう色々とおかしなことになる。

 大空を自由に飛びまわる凶器、黒鷹無双が始まってしまう。


「で、続きは? 当然、逃走劇は上手くいかなかったんだろ?」

「ええ。アンジーは3ヵ月後に国境警備隊に捕縛されて」

「――いや、もうそんな話どうでもよくない!?」

「まあ、もうオチは読めた感があるな。脱走兵の懲罰として過酷なここへ、ってところか」


 よかった。どうにか止めることができた。


「アンジーってことは、本名はアンジェリカとかアンジェリーナとかその辺か?」


 え? まだこっちの話を続けるの? あのスーパーファルコンはノータッチなの?

 そんな内心を、無口系愛され枠である彼女はぐっと溜め込むしかない。


「いえ、彼女の出身である武門の名家では、後継者候補は成人するまで母方の曽祖父の名を借りるって慣習があったらしくて、成人前に追い出された彼女には名前がなかったんです。だからそのまま曽祖父の名を使ったとかで」

「……? ひい爺さん、なんて名前だったの?」

暗慈あんじだそうです」

「おお! それでアンジー!」

「ちなみにこれは本名ではなく、剣名という一種の称号みたいなもんらしいっすよ」 

「――いやマナナお前、なんでそんなつまんないことばっちり覚えてるの? 自分でも忘れるくらい昔の話なのに、正直、ちょっと引くんだけど」

「なによアンジー、照れてるの?」

「だから引いてるの」


「……つーかアンジーさ。さっきから普通に喋ってね?」


「え?」

「……え?」


 いわれて驚いて声が出て、もう1度、驚いた。


「あ、いわれてみればそっすね。よかったじゃんアンジー。なんか知らないけど、ちゃんと声出てるよ!」


 答える余裕なんて、どこにもない。



「……は? ……え? な、なんで、……いまさら? ……え?」



 ――物言わぬ薄気味悪い人斬り人形めが。

 ――どうせこいつは喋れない。誰にも言えやしない。だから構うことはない。

 ――ごめんね。ちゃんと生んであげられなくて、ごめんね。



 絶対に治ることはないと太鼓判を押された。

 一縷の望みをかけた強化措置も空振りに終わった。


 もうとっくの昔に諦めていた。

 もう無くて当然だと、理解し納得もしていた。

 これが己だと、とうの昔に噛み砕き、嚥下し、消化していた。


 それがどうして今さら、こんな、どうでもいいタイミングで。


 ふざけるなと怒ればいいのか。

 遅いよ畜生と泣けばいいのか。

 わからない。

 ただ。



「――あ、あの、おふたりに、お、お願い、が」


 彼女の口から出た言葉は、自分でもまったく予想外のものだった。


「大丈夫だってアンジー。快復パーティーは落ち着いたらちゃんとするから」

「いや、そうじゃなくて」


 耳に入る自分の声に、なぜだか涙が出そうになる。

 そうだった。

 の声は、こんなだった。

 

「その、……声が出るようになったのは、秘密にしてて欲しいなって」

「え?」


 そうだった。

 わざわざ手帳を取り出して文字を書かなくても、くそ不味いバラ紙を食べなくても、誰かになにかを伝えるのって、こんなにも簡単だった。


「なんていうか、いつも黙ってるのがもう普通になって慣れてるし、こんな大変な時に急に喋ったら、つい余計なこととかいっちゃうかもしれないし」

「……ブランクってやつ?」

「それにほら、実は喋れました! ってどこかでなにかに使えるかもしれないし」


 必死に言葉を紡ぐ彼女。


 新しいボスであるミゲルは、そんな彼女をじっと見て、


「わかった。アンジーが望むならそうしよう。マナナもそれでいいな?」


 その言葉に、彼女は心底から安堵した。








※※※








 旧市街に光の河が舞い降りた次の日からだ。


 これまでの夜とは、明らかな違いが現れた。

 日が沈み夜の闇がその版図を広げると同時に、じわりと染み出るように……猫が現れた。

 色は当然闇色で、その数はどうにもはっきりとしない。

 ある物好きがその数をカウントしようと試みたが、結局は1000から先を数える前に夜が明けた。

 その際に発見されたひとつの法則。

 視界に映るのは常に1匹。

 ただし、どこに行っても

 毛の長さや顔つきが違う別個体が、どこへ行こうとも必ず視界の中に1匹は

 薄気味悪いと払う小心者の手は、するりとすり抜ける。

 なんなら壁すらすり抜け、辺り構わずそこいらをうろうろと歩き回る。

 ただし、女を、あるいは男を連れ込んで『いい感じ』になっている場には決して入らない。

 存外、空気の読めるヤツではあると、誰もが口を揃えていった。


 そんな猫たちが唯一足を止める場所があった。

 それは、薄汚れた路地裏であり、大きな犬小屋もどきであり、粗末なあばら屋であり、外見はぼろぼろなのに内装はそれなりに小奇麗な緊急避難場所セーフハウスだったりした。


 より正確にいうなら、猫たちは『場所』を目当てに足を止めたわけではない。

 そこで座り込む、力なくうずくまる、あるいはただ寝転がる『とある者たち』を目的として足を止めたのだ。

 そして、じいっと見つめて判定する。

 獲得した判断基準から『一般生活に支障をきたす』を最低値として設定。


 対象を『病気』と断定した。


 目標を見つけた猫たちは、ただそっと彼や彼女に寄り添い、丸くなった。

 彼や彼女たちは、問答無用で泥のような眠りに落ちた。





 そうして朝日が昇る少し前に、揃って目が覚めた彼や彼女たちは、最初は全く異変に気付けなかった。

 なにも異常がないという己の状態が、どれほどあり得ない奇跡なのか、理解するまでに平均して半日ほどかかった。


 この旧市街において彼や彼女たち病人は、奪われる立場だ。

 明確な弱者であり、搾取される側だ。

 さらにいうなら、ここへ流れてくるまでにも、ありとあらゆるものを奪われつくした経験のある者たちばかりである。

 ここ掃き溜めが死に場所となる時点で、誰もがそうだった。


 そんな彼や彼女たちが手にした、望外の奇跡。

 とくに示し合わせたわけでもなく、誰もが抱いた共通の思い。



 これだけは、奪われてなるものか。



 奇跡にはタネがあり、そんなの、昨日今日と旧市街にいたヤツならどんな馬鹿でも一瞬でわかる。いや、舞い降りる光の河はどこからだって見えただろう。


 きっとすぐにでも、金と権力と暴力をたんと持った連中がかっさらいに来る。

 お前らには過ぎたものだと、全てを駆使して取り上げに来る。

 賢く正しい理屈を並べ立てて、さも当然のように持って行く。

 その結果、打ち捨てられるごみくずになんて見向きもしない。


 誰よりもそれを知る彼や彼女ごみくずたちは背を丸め縮こまる。

 嫌だ。これだけは、絶対に、手放したくない。


 そうして彼や彼女たちは、とくに示し合わせたわけでもなく、全く同じ手段を取った。



 ――隠す。



 住処を変える。姿を変える。名を変える。事情を知る者に『黙っていてくれ』と口止めをする。あるいはもっと乱暴に――。

 方法は様々だが、とにかく己の病が治ったという事実を隠蔽する。


 1人残らず、皆誰もがそうした。



 この日、旧市街から、どこかの誰かが定義する『病気』はなくなった。



 ただこの事実が周知のものとなるのは、ずっと先の話である。


 長期間にわたる隠蔽を可能とした原因は、大きく分けて2つ。



 ひとつは幸運。


 一般生活に支障をきたす重病人以外は変わらずそのままだった。

 だから咳の止まらないごろつきや熱っぽいちんぴらなんてあちこちにいたし、やれ今日も足が痛い腰が痛いとうるさい老人は元気だったし、顔色の悪い中毒者は昨日と同じく半死人のようだった。つまりはいつも通りで、傍目にはなにも変化などなかった。

 そもそも、この旧市街で重病人はすぐに死ぬ『どうでもいい存在』なので、最初から極端に影が薄かった。

 そんな彼や彼女たちの存在を把握していた、弱者を食い物にする小悪党どもが根こそぎ行方不明になったが、一連の騒動に巻き込まれたのだろうと雑に処理された。


 こういった幸運の数々が味方し、彼や彼女たちは最も無防備だった初動を乗り切った。



 残るひとつは、いうまでもないだろう。


 当人たちによる、全身全霊の努力。


 彼や彼女たちは、この奇跡を守る為なら、なんでもした。

 彼や彼女たちは、誰よりも現実を理解していた。


 個の脆さを知るがゆえに、群れとなる動きが始まる。


 寄り集まり、形となるまで、あと少し。







※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※







TIPS:こうなった原因


『5 チャオ ソレッラ!』でアマリリスが窓から逃げようとした際に、逃走経路をクリアにする為、窓際にいた猫たちにいった内容(脳内オートリーディング)。




TIPS:強化措置による病の快復について


侵蝕深度フェーズ1へと至る際の総身の活性化に伴い、アルネリア医療院の定義する『クラス2』――投薬や外科的処置なしでも快癒可能な症状――に分類される諸症状に関しては、被験者の95%において快癒が確認されている。


この事実が誇張され『強化措置を生き延びればどんな病も治る』などといった誤った情報が拡散された結果、いくつかの社会問題を引き起こすこととなってしまった。

実は不治の病でもなぜか5%くらいは治ってしまうという、ごく一部の者だけが知る事実が、問題の泥沼化に拍車をかけた。


どこにでも悪いやつはいるもので、これを餌に消極的な『高適性者』を釣る悪質な担当官も存在する。




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