大阪日本橋・闇乃影司物語

MrR

大阪日本橋での日常

 Side 闇乃 影司


 大阪日本橋で過ごしながら将来について悩むことが最近多くなった。


 キッカケはこの町まで導いてくれた優くんが居なくなる時間が多くなったせいだろう。


 高卒認定とって、働いて大学にでも通って、就職すればいいのだろうか。


 もちろん僕の力をフルに使えば、文字通り何にでもなれる。


 芸術方面とか音楽方面とか、そう言うセンス的な方面は難しいと思うが、プロスポーツ選手には余裕でなれる。

 が、これはアメコミのヒーローがスポーツ選手になるのと同じだ。

 必ず問題が出て来る。

 それに過去の経緯から自分はあまり目立ちたくはない。


 そもそも僕は幸せに生きてもいいのだろうかと考える時がある。

 

 大勢人を殺してしまって、大切な人を守れなくて——


 今平穏に生きている時もそう考えてしまう時がしばしば。


 そんな気を紛らわせるように今日も仕事をする。


 仕事をするときはある程度ルールを決めている。


 殺しやそれに繋がる仕事は御法度。


 人を傷つけるのもなるべく避ける。


 そして何よりも依頼人が嘘をついてない


 それが仕事を引き受ける条件である。

 

 最初は簡単な依頼だった。


 簡単な浮気調査。

 

 問題のある旦那や彼氏(妻や彼女)をどうにかして欲しいなんて言う依頼もあった。


 最初はこんなもんだろうと思い、とにかく片っ端から引き受けてストレートに解決していった。


 浮気調査は簡単すぎた。

 スマホを持ち歩ていると言うのは、自分にとっては盗聴器を持ち歩いてくれているのと変わらない。

 調査対象のスマホに遠隔ハッキングして通話履歴やSNS、連絡用アプリの履歴などを片っ端からダウンロードすればよかった。

 様々な変装を駆使して一定時間近づき、そして念じれば出来てしまう。

 便利な体だとつくづく思う。


 DVや問題がある旦那や彼氏、妻や彼女をどうにかして欲しいと言う依頼は人によって注文が違う。

 警察沙汰にしたくない人。

 離婚したくない人。

 性格をどうにかして欲しいと言う人。

 などなど、色んな人がいた。

 

 性格をどうにかして欲しいと言う人は「もうそれ、洗脳とかの領域ですよね?」と頭を抱えたものだ。


 風俗中毒とかホスト狂いとかをどうにかして欲しいと泣きつかれた事もあった。


 中には警察官や自衛隊の人から頭を下げられる事もあった時は「世も末だな」と頭を抱えたものだ。


 性格を変える事は勿論可能だが洗脳の類はしたくなかった。

 昭和のテレビに出て来る悪の秘密結社じゃあるまいし。

 困ったぞと頭を抱えた時に、ダメ元で催眠術や暗示(それに類する魔術)を試してみたが効果てきめん過ぎて引いた事がある。

 絶対悪用しないようにと心がけた。


 そうして行く内に物騒な依頼ほど楽だと言う怪奇現象が起き始めた。

 

 僕はその気になれば戦車程度の重量物(およそ50トン以上)を軽く引っ返せるし、戦車砲の直撃を受けても死なない頑丈さ。

 更には銃弾をキャッチ出来るほどの反射神経、動体視力、スピードを持つ。

 連続発射された銃弾と銃弾の間を潜り抜ける事だって出来る。

 某バトル漫画の影響で地球の重力何百倍もの修業したのは伊達ではない。

 

 こうなってしまうと逆に手加減の仕方が必要になる。

 それを覚えないとグロさが売りのネット配信の海外ドラマみたいになってしまうからだ。

 

 だから勉強がてらスーパーヒーロー物の海外ドラマの視聴が必須科目になってしまった。


 海外ドラマなので日本人には理解し難い同性愛(もちろん男同士もある)のシーンとか直視する羽目になったりもしたが、参考にはなった。


 今ならスーパーヒーローの物語を書けそうなけ気さえする。


 だが悲しいかな。

 世の中はアメコミのように、今のところ日本は治安が悪くない。

 相手はチンピラだの不良だのいいとこ自称ヤクザだのだ。

 アメコミに出て来るようなヴィランさんはお目に掛かれないが、そう言う時は仕事は大変になるから出くわさないに越したことはない。


 まあ大阪日本橋の場合は、ハイテク装備に身を包んだテロリストがメイド喫茶に攻め込んだとかあったりして平和とは言えなくなってきたが——

 

 そのせいで被害を受けたメイド喫茶ストレンジは悪い意味で有名になり、若者たちの間では一種の度胸試しの場となっている。

 まあ店主が本物の魔法使い(合法ロリ)で、働いているメイドさんの一人が現役だか元だか知らないが殺し屋だし。

 なるようにしてなったと言えなくもない。 

 

 そうしてこうして大阪日本橋での日々は何時も通り過ぎていく。


 日常も非日常も飲み込んで。


 ——この街、段々とアメコミの舞台みたいになってきてませんか?

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