婚約破棄になって屋敷も追い出されたが、それ以上の名家の公爵に好かれて

ワールド

第1話 始まりですわ

 わたくし、エリアンナ・ヴェルモントは、ある曇りの朝、運命の残酷さを噛みしめなければなりませんでした。エドモンド・カレル様からの手紙が、わたくしの人生の新たな章の閉幕を告げたのですわ。その手紙には、わたくしとの婚約を解消するという彼の心変わりが、いたって冷ややかながらも丁寧な言葉で綴られていましたの。


「エリアンナ様、この手紙をもって、わたくしたちの婚約の解消をお知らせすることをお許しください。わたしの心が別の方向へ進んでしまったのです。アメリア・ローズウッドという方がわたしの新しい希望となりました。あなたには新たな幸せが訪れますように。」


 アメリア・ローズウッド嬢が、その後すぐにわたくしのもとを訪れましたの。彼女の金髪はまばゆく輝き、自信に満ち溢れた青い瞳でわたくしを見下ろしておりました。


「エリアンナ、貴女の素晴らしさは認めるわ。だけど、エドモンド様と貴女とでは釣り合わないものがあったのよ」


 彼女は言い放ちました。


 わたくしは心を押し殺して答えましたわ。


「アメリア嬢、あなたのその言葉、わたくしにとっては何の意味もございませんわ……エドモンド様の決断は尊重いたします」


 しかし、家を出るときには、わたくしの心は深い絶望で満たされておりました。わたくしを家から追い出す父の言葉は、まるで他人事のようでした。


「エリアンナ、これは家の名誉のため、そして君自身のためでもあるんだよ。もうここにはいられない」


 母も、涙を流しながらわたくしを突き放しましたわ。


「エリアンナ、わたし達もつらいのよ。でも、これが世間というもの。君は外で新たな人生を見つけなさい。」


 妹だけが、わたくしを慰めるように抱きしめてくれました。


「ごめんね、エリアンナ。でもわたしにはどうすることもできないの」


 小さな声で言いました。


 屋敷の門を出る時、わたくしは自分の足では歩けず、家族に押し出される形で屋敷から放逐されたのです。わたくしの持ち物は雑然と荷車に積まれ、屋敷の門をくぐった瞬間、わたくしは家族から切り離されましたわ。外の世界は暗く冷たく、わたくしはその中でたった一人で立ち尽くしていました。


 ところが、その夜、泥だらけになり、涙で顔がぐしゃぐしゃになったわたくしに、意外な人物が声をかけてきたのです。


「こんなところで何をしている?」


 突然の声に、わたくしははっとしました。見上げると、そこには荘厳な佇まいの男性が立っておりましたわ。彼の目は、わたくしの全てを見抜くような鋭さを持ちつつ、どこか温かみもあったのです。


「……ふん、無様な姿だな」


 彼はわたくしの手を取り、力強く立ち上がらせてくれました。彼の名はまだ知りませんが、その行動が、わたくしのこれまでの暗い運命を変えるきっかけになりそうな予感がしましたわ。

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