第66話 神倉ナナの体験ASMR
「それじゃあ始めますね」
「お願いする」
彩音さんの隣に座ったななちゃんは自分の口を彩音さんの耳元に近づける。
その距離はものすごく近く、ASMRをすることを知らなければ耳にキスをしているようにも見えた。
「(そういえばASMRって一体どんな事をするんだろう)」
ASMRなんて今まで1度も聞いたことがないので、どんなことをするのか想像がつかない。
前に咀嚼音ASMRという物が人気だとネットの記事で見たことがあるけど、彩音さんにもそういうことをするのかな?
「(確かななちゃんが有名になったのはASMRなんだよな)」
それこそ神倉ナナがASMRをすると万を超える人が彼女の配信を見に来るという。
リスナーがこぞって聞きたがるASMRがどんなものなのか、ものすごく興味があった。
「ハァ~~~~~♡ フゥ~~~~~~♡」
『ビクッ!?』
「きょうはナナのおくちで、いっぱい気持ちよくなってね♡」
「ひゃっ、ひゃい!?」
「ハァ~~~~~~~♡ フゥ~~~~~~~~♡ チュッチュピチャピチャ」
「かっ、神倉さん!?」
「むねをドキドキさせながら、あたしのことを待ってたんでしょ。おみみがまっかだよ♡」
さっきから彩音さんの耳の前でずっと卑猥な水音が聞こえている。
ななちゃんの声があまりに官能的過ぎて、こんなに離れているのにも関わらず僕の心臓もバクバクとなっていた。
「(少し離れている僕でさえ興奮しているんだ。直接耳に語りかけている彩音さんは僕よりも興奮しているに違いない)」
現に彩音さんは顔を真っ赤にさせて口をパクパクさせている。
どうやら彼女は僕が想像している以上に興奮しているようだ。
「(でも、なんだろう。ななちゃんの声を聞いて、とろけた顔をしている彩音さんを見ると胸がムカムカする)」
ななちゃんが彩音さんに語りかける度にイライラする。
何故かASMRを間近で受けている彩音さんに僕は嫉妬していた。
「きょうはあたしのこと、いっぱい好きっていってね♡」
「はい!!! 神倉さん、大好きだよ!!!」
「ありがとう♡ あたしも好き‥‥‥彩音さんのこと、だぁいすき♡」
駄目だ、これ以上ななちゃんにASMRをさせてはいけない。
そもそもこういうことはリスナーの人達にやってあげるべきだ。
いくら事務所の先輩とはいえ、後輩にここまでやらせなくてもいいだろう。
「今日はこのあとひまだよね?」
「うん! もちろん暇だよ!」
「よかったぁ♡ そしたらこのあとあたしと一緒にベッドの上で‥‥‥‥‥」
「カンカンカンカンカン!!! 体験ASMRはそこまで!!!」
「なっ!? 今いい所なのに、何故止めるんだい!?」
「こんなエッチなことをしてたら、止めるに決まってるでしょう!! これから後輩になろうとする子に、どんなセクハラをかましてるんですか!!」
全く、聞いているこっちが恥ずかしくなってくる。
なんでこの人は後輩の子に自分の名前を呼ばせて気持ちよくなってるんだよ。職権乱用だろう!!
「斗真君、あたしのASMRはここからが本番なんだよ」
「ななちゃんはこんな所で無駄に喉を使わなくていいよ。こういうサービスは自分のリスナーさんにやってあげて」
「斗真君、一応僕も神倉ナナのチャンネルを登録をしているリスナーなんだけど‥‥‥」
「リスナーならこういうものは配信で聞いて下さい!! こんな所で聞くなんて言語道断です!!」
「酷いよ!! こう見えて僕、君達の先輩だよ!? 少しは僕のお願いを聞いてくれたって‥‥‥‥‥」
「じゃあ先輩より位の高い私の指示なら従うわね」
「ねっ、姉さん!?」
僕が部屋の入口の方を振り向くと般若の表情をした姉さんが仁王立ちで立っていた。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。
続きは明日の7時に投稿します。
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