第52話 デビュー後の喧騒
「それじゃあ今日はこの辺で配信は終わるよ! あとでエゴサもするから、ぜひハッシュタグ"Tomaの戦場"でどんどん呟いてね」
「今日は僕の配信に遊びに来てくれてありがとう! みんなばいば~~~い。エンディング!!」
エンディング画面を流した後、マイクをミュートにしてカメラを切る。
まだエンディングが終わっていないので油断は出来ないけど、無事に初配信を終えることが出来た。
「あとは配信を終了して、OBSも落とせば‥‥‥よし! これで全部終わった」
配信を切ってデスクトップPCの電源を落とす。
これで今日の配信は完全に終了した。緊張の糸が切れたせいかどっと疲れが押し寄せてきて、思わずその場で息を吐いてしまう。
「お疲れ様、斗真」
「姉さん」
「初配信とは思えないぐらいよかったわ。チャンネル登録者数も10万人を超えてるし、この配信は大成功よ」
「この短時間でそんなに登録者が増えたの!?」
「神倉ナナの名前を使わせてもらったからね。でもあの事件の話をした後も同接が落ちなかったという事は、みんな貴方のFPS配信を楽しんでくれたんだと思う」
「そうだといいんだけど‥‥‥」
「どうしたのよ? 今日の配信に何か疑問でもあるの?」
「うん。今日の配信ってななちゃんの名前を借りてやらせてもらったでしょ」
「そうね。神倉ナナの名前を使っただけじゃなくて、あの盗撮事件についても触れたから、神倉ナナの事を擦りに擦ってるわ」
「そういうことをしたらななちゃんのファンの人達が『死ね!!』とか『今度襲いに行くから覚悟しておけ!!』みたいなシンプルな罵倒があるかと思ったんだけど、そういうのが全くなかったからびっくりしたよ」
「当たり前でしょう。私がモデレーターをしてコメントを検閲してるんだから。そういう誹謗中傷は全て削除してあるわ」
「えっ!? あのコメントって姉さんが検閲してたの!?」
「当たり前でしょ。そうじゃなかったらこの配信はもっと荒れてたわよ」
それもそうか。神倉ナナの名前を使って配信してたんだ。姉さんが僕のコメント欄を管理してくれなければ、もっと物騒な言葉でコメント欄は埋まっていただろう。
なので姉さんには感謝しないといけない。もしも僕1人で配信をしていたら、もっと大変な事になっていたはずだ。
「姉さん、今日はありがとう」
「どういたしまして。でも斗真、本当に大変なのはこれからよ」
「どういうこと?」
「昨日の夜今日の配信準備の他に、盗撮動画をあげてる人達のSNSのアカウントをスクショ付きでまとめたでしょ?」
「うん。そのせいで明け方まで作業する羽目になったことはよく覚えてるよ」
「今日の配信後あの盗撮動画が増えてないか、これから確認をするわよ」
「またあの作業をやるの!?」
「当たり前でしょ!! 明後日にはそれを元にうちの顧問弁護士と打ち合わせをするんだから。こういうのは早めにまとめておいた方がいいわ」
「‥‥‥わかった」
「週明けには神倉ナナの家にもいかないといけないわね」
「ななちゃんの家に行って何をするつもりなの?」
「それはもちろんご両親に会って今回の件を話すのよ。そしてあの動画をアップロードした人達を訴える為の許可をもらうの」
「姉さんは忙しいんだね」
「あんたも他人事じゃないわよ。明後日学校に行ったら間違いなく先生達から呼び出しを受けると思うから、そのための摸擬面談もこの2日間の内にしましょう」
「えっ!? そんなことまでするの!?」
「もちろんするわよ。それと斗真は神倉ナナを私に紹介して頂戴。そこで彼女と今後の事について色々と話すわ」
「‥‥‥‥‥わかった」
姉さんがここまでしてくれるんだから、僕もななちゃんに姉さんのことを紹介しないといけない。
ななちゃんが姉さんと会う事に抵抗を見せるかもしれないが、事の経緯を話せば彼女も納得してくれるはずだ。
「やることはたくさんあるけど、とりあえず今日はこの辺でお開きにして布団に入らない?」
「入らないわよ!! それとあんたは今日の配信の感想をSNSに載せてリプも返す!!」
「えぇっ!? 既にリプ欄に200コメントがあるのに。それを全部返すの!?」
「当たり前でしょう。それが終わったら、今度は学校の先生から呼び出された時の為に摸擬面談もするわよ!」
「そんなにいっぺんにやっても頭に入らないよ!?」
「大丈夫よ。明後日の朝までには私がみっちり頭に叩き込んであげるから。私に任せて」
どうやら僕は今日も眠れそうにない。リスナーへのリプ返に動画の通報リストの作成、そして学校の面談対策。
やらなければいけないこと考えただけでも気が滅入る。初配信が終わったのに、まだ僕は頑張らないといけないらしい。
「まずはSNSに今日の配信の感想を投稿するわよ!! その後はエゴサをするついでに資料作りをする!! その後は斗真がしっかりと返答出来るまで、摸擬面談をするわよ!!」
「そんないっぺんに言われても困るよ!? せめて1つずつ僕のペースでやらせて!?」
「そんな泣き言を言っている暇があったら早くやる!! こうしている間も時間は待ってくれないわ!!」
姉さんの叱咤激励を受けた僕はこの後言われた作業を一通り行った。
結局この日僕が寝たのは昨日と同様に日が昇り始めてからだ。
姉さんに指示された一通りの作業が終わった瞬間糸がプツンと切れたように寝てしまい、気づけば日曜日が終わっていた。
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ここまでご覧いただきありがとうございます。次話エピローグになります。
続きは明日の7時に投稿しますので、もう少しだけお待ちください。
最後になりますがこの作品をもっと見たいという方はぜひ作品のフォローや応援、★レビューをよろしくお願いします。
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