第39話 テスト前の約束

 その日の夜、僕はいつものようにななちゃんと通話をしていた。

 ただいつもと違うのは手にはゲームパッドでなくシャープペンを持ち、机の上には教科書を広げている。

 来週から中間テストが始まるので、2人で勉強をしていた。



「ななちゃん。数学の17Pに書いてある問題ってどう解けばいいかわかる?」


「わかるよ! その部分は応用問題になってて、前のページの公式と13Pに載ってる公式の2つ使わないといけないんだよ」


「わかった。どっちの公式を先に使えばいいの?」


「最初は13Pのほうを使って解いていくの。それを使って1つ目の答えを出した後、16Pの方の公式を使えば正しい答えが出るよ」


「本当だ! ありがとう」



 さすがななちゃんだ。学年でも1、2を争う学力を持っているだけはある。

 問題の解き方がわからなくて困っている時、僕が質問をするとななちゃんは先生達よりも丁寧でわかるやすく教えてくれる。

 こんなに心強い先生なんて、他にはいないだろう。



「これだけななちゃんに頼ってるんだから、今度何かお礼をするよ」


「それなら今週の土曜日、また遊びに行こう!」


「えっ!? 週明けにテストが控えてるのに遊びに行くの!?」


「うん! これだけ勉強してるんだから大丈夫だよ。それに少しは息抜きも必要だと思わない?」


「確かにそうかもしれないけど‥‥‥‥‥」


「だからテスト前の最後の息抜きで遊びに行こうよ!」



 ななちゃんはそういうが、僕としては出来れば休みの日も勉強をしていたい。

 僕の成績は学年でも中間ぐらいの実力なので、油断していると赤点を取る可能性だってある。

 それにテスト前に遊びに行くとテストの事で頭がいっぱいになり、楽しい気分で遊ぶことが出来ない。 

 なので今週の土日は出来ればテスト勉強に時間を使いたかった。



「う~~~ん。でも、テスト期間前だしな‥‥‥」


「そこを何とかできないかな?」


「‥‥‥‥‥そうだ! それならテストが終わった後遊びに行かない?」


「テストの後?」


「うん! それならお互い何の憂いもなく遊びに行けるでしょう」



 これならきっと罪悪感も感じず、晴れやかな気持ちで遊びに行けるはずだ。

 ななちゃんは不満かもしれないけど、そこは我慢してもらうしかない。



「わかった。そしたらテストが終わった後遊びに行こう」


「そうしてもらえると助かるよ」


「こっちこそ無理をいってごめん。実はあたし斗真君と一緒に行きたい所があるんだ」


「僕と行きたい所? それってどこなの?」


「秋葉原だよ!」


「秋葉原? あそこに行くなら、池袋でもいいんじゃない?」


「それはダメ!! どうしても秋葉原じゃないと買えないものがあるの」


「買えないもの? ななちゃんはあの街に何を買いに行くの?」


「遊戯ダムのカード。出来ればパックじゃなくて単品で見たいから、トレカを扱ってる専門店に行きたいの」


「なるほど、そういうことか。確かにカードショップの数は池袋よりも秋葉原の方が多いよね」


「そうなの。それとボケモンカードも一緒に見たいから、秋葉原の方が品ぞろえがいいし何かと都合がいいんだ」



 確かにななちゃんの言う通り、カードを買いに行くなら池袋よりも秋葉原の方が断然いい。

 あそこは最近有名なインフルエンサーが専門のショップをこぞって開いている影響でカードショップの激戦区となっている。

 その影響で店舗数も多く他の場所よりも品ぞろえがいいので、ななちゃんがそこに行きたいというのも納得である。



「ななちゃんってボケカもやってるんだ」


「うん! ボケカのイラストって可愛いから、最近やり始めたの。斗真君はやってないの?」


「対戦はしないけど、カードは持ってるよ。ボケモンに関して僕はコレクターだから、対戦用のカードは持ってないんだ」


「それならちょうどいいじゃん!! あたしも始めたばかりだから、一緒にやろう!」


「いいよ。それなら今度遊びに行く時に遊戯ダムのカードと一緒にボケモンのカードも持って行くから、デッキ作りを手伝ってもらっていい?」


「うん、いいよ! 一緒にボケモンのデッキを作ったら、その後はあたしと対戦しよう」


「いいよ。デッキを作ったら、2人で対戦しよう」


「やった! あたしの魂のカードで、斗真君を倒して見せるから覚悟してね!」


「お手柔らかにお願いします」



 この様子だと僕よりもななちゃんの方が遊戯ダムにハマっているようだ。

 そうでなければ魂のカードなんて発言は出ないだろう。

 この前一緒に見ていたアニメの影響を多大に受けているように見えた。



「そしたら今からデッキを作ろう! どんなデッキが作れるか、あたしが見てあげる」


「それは後でいいんじゃない? 今はテスト勉強に集中しよう」


「そうだった!? そしたらそろそろ数学は終わりにして英語を勉強しよう」


「わかった」



 それからしばらく2人で勉強したあとそのままベッドに入る。

 ベッドの中でもずっとななちゃんと通話をしていて、気づくとその日は2人して寝落ちしていた。


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ここまでご覧いただきありがとうございます。

続きは明日の8時に投稿します。


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