同じクラスにいる清楚で可憐な優等生がちょっとエッチなお姉さん系VTuberだった
一ノ瀬和人
1章 僕のクラスにいる清楚で可憐な優等生がちょっとエッチなお姉さん系VTuberだった
第1話 とある日のコラボ配信
『みんな今日もナナの配信を見に来てくれてありがとう! おつなな~~~! またね~~~~~!』
「やっと‥‥‥やっと配信が終わった」
本日のコラボ相手である
時間にして約2時間。神倉ナナというVtuberとのコラボ配信が終わり、性も根も尽き果てていた。
「今日は頑張って配信したから、このまま寝てもいいよね?」
ゆっくりと瞼を閉じようとするが、それを許さないとでもいうようにティスコの通知が鳴る。
僕に連絡してきた相手を確認すると、その相手は先程コラボ配信をした神倉ナナ。
配信が終了してすぐ、
「もしもし‥‥‥」
『斗真君、お疲れ様! 今日はあたしとコラボしてくれてありがとう!』
「どういたしまして」
『今日は斗真君とコラボ配信が出来て楽しかったよ! あんなに笑ったのは久々かもしれない』
「ななちゃんに喜んでもらえてよかったよ。そう言ってもらえると、僕も配信に参加したかいがある」
『あれ? 斗真君は何でそんなに疲れてるの? もしかして配信の後、1人で激しい運動でもした?』
「そんなことをするわけないじゃん!? それに激しい運動って何!? ななちゃんはこの短時間で、僕がどんな運動をしたと思ってるの!?」
『えっ!? そんなエッチな言葉を斗真君はあたしの口から言わせたいの?』
「ごめんなさい、何でもありません。‥‥‥‥‥ってこのやり取り、前もした気がする」
今僕が話している相手は
彼女は主にYourTubeという動画サイトで活動しているVTuberであり、チャンネル登録者数は50万人を超えている。
彼女は企業に属さず個人で活動しており、チャンネル登録者数は個人勢としてはトップクラスの数字を持つこの界隈では有名なVTuberだ。
彼女のチャンネル登録者数がここまで増えた理由。それはYourTube君が興奮しない程度のラインギリギリを攻めるちょっとエッチなトークとASMRのおかげだ。
特に彼女のASMRは大好評で彼女がASMR配信をするとSNSで呟けば、待機人数がゆうに1万人を超えてしまう程の人気コンテンツである。
男性女性問わず全ての人を魅了するちょっとエッチなトークとASMR。この2つを武器に彼女は今の地位を手に入れた。
『ふふっ♡ そんなに遠慮しなくてもいいんだよ』
「僕は遠慮なんてしてないよ」
『斗真君なら特別にあたしの事をオカズにしてもいいよ。必要なら今日のオカズになるような特製ボイスを送ってあ・げ・る♡』
「そんな物もらえないよ!?」
『またまた。かまととぶっちゃって。本当はあたしの特性ボイスが欲しいんでしょ?』
「だからそれはもらえないって言ってるじゃん!? それによく考えてみてよ。もしそんな物を持ってることがななちゃんのリスナーにバレたら、炎上どころの騒ぎじゃなくなっちゃうでしょ!?」
『いいことじゃん! 炎上は密の味っていうし、斗真君も1度は経験した方がいいよ』
「そんな経験なんて僕はしたくない!?」
ただでさえVTuberは推しに対して処女性を求めるファン、通称ユニコーンと呼ばれる人達が多いと言われてるのに。わざわざその人達を煽るようなことをしたくない。
今日のコラボだって1度でも僕が返し方を間違えれば、批判が殺到して炎上していたかもしれないのに。ななちゃんは何故そんな暢気に笑っていられるのだろう。
『しょうがないな。そこまで言うなら、斗真君と匂わせをするのはまた今度にするね」
「出来ればそういうことは一生しないでほしい」
『それよりこの後の作業通話なんだけど、斗真君は何がしたい? あたしはどうしても見たいアニメがあるから、それを一緒に見てくれると嬉しいな』
「ななちゃんがオススメするアニメを見るの?」
『そうだよ! このアニメはものすごく面白いから、斗真君も絶対気に入ると思う!!』
ななちゃんにここまでおすすめされるとさすがの僕も断れない。
彼女の趣味と僕の趣味はものすごく似ているらしく、初めて通話した時に意気投合してしまい、こうして作業通話と称して2人でよく遊んでいる。
もちろん彼女のリスナーには悪いと思っているけど、どうしてもこの心地よい関係が抜け出せない。
それぐらい僕とななちゃんの趣味がバッチリかみ合ってしまった。正直彼女と話をするまで、こんなに趣味が合うなんて思わなかった。
「そういう面白いアニメはリスナーの人達と見なくていいの?」
『うん! むしろみんなこのアニメを見た斗真君の反応を知りたがってる』
「どういうこと!?」
『最近あたしがアニメの話をしている時、斗真君がそのアニメを見てどんな反応をしていたか聞いてくるリスナーが多いんだよ』
「えっ!? ななちゃんのリスナーって僕達が裏で作業通話している事を知ってるの!?」
『さすがにそこまでは知らないと思うけど、斗真君にアニメをおすすめした話はしたことがあるよ』
Oh my god!?!? ななちゃんは何故そんなSNSで炎上しそうな事を配信で口にしたんだ!?
どうりで最近僕のDMに『神倉ナナとはどういう関係なんですか?』って質問が大量にくるわけだ。
何故こんな質問がたくさん送られてくるのか首をかしげていたけど、その理由がやっとわかった。
「ななちゃん」
『何?』
「僕からのお願いなんだけど、あまり配信で僕の名前を出さないでくれないかな?」
『何で?』
「このままだと僕とななちゃんの関係が疑われて、また炎上しちゃうよ」
『それは大丈夫! あたしのリスナーはみんな斗真君の事を『神倉ナナを救ってくれた救世主』って思ってるから』
「えっ!? そうなの!?」
『そうだよ。他の男性配信者の名前を出すとコメントが荒れるけど、斗真君の事だけはみんな何も言わないんだ』
「ずいぶん寛容なリスナーだね」
『うん。あたしのリスナーはみんな斗真君の事が好きだから! もちろんあたしも斗真君の事が大好きだよ!』
大好きか。ななちゃんに面と向かって好きって言われるとものすごく困る。
こんな感じでマイペースに話す彼女が、実は同じクラスで人気のある清楚で可憐な美少女だと知った時は腰が抜けてしまう程驚いた。
『そうだ! 斗真君、今度あたしの配信枠で一緒にアニメの同時視聴しない?』
「同時視聴って普通は1人でするものじゃないの?」
『リスナーのみんなはあたしと斗真君、2人の反応が見たいんだって』
「ななちゃんのリスナーが見たいって言ってるのか‥‥‥それならしょうがないな」
『やった! ありがとう!」
彼女のリスナーがそれを望んでるなら、やらないわけにはいかない。
僕も一応
『そしたらオススメのホラー映画を探しておくね!』
「ちょっと待ってななちゃん!? なんでホラー映画限定なの? そんな怖い映画なんて見ないで、もっとハートフルなアニメを見ようよ!?」
『だってこの前斗真君がホラー映画が大好きって言ってたから、自然とそのジャンルを選んじゃうよね』
「それは逆じゃないかな? 僕はホラーが苦手で怖がりだと世間に公表しているはずだよ」
『あれ、おかしいな? あたしのリスナーさんが『斗真君はホラー映画が大好き!』って言ってたよ」
「リスナーめ‥‥‥」
わざと僕の嫌いなジャンルをななちゃんに勧めたな。そしてななちゃんも僕がホラー映画が苦手な事を知っていて、わざと同時視聴の話を振っただろう。
いくら僕が憎いからってそんな事をしなくてもいいじゃないか。ななちゃんのリスナーはそんなにか弱い男の悲鳴が聞きたいのか? 物好きな人達もいるもんだ。
『でもあたしと一緒に同時視聴することを約束しちゃったからしょうがないよね?』
「うっ、うん」
『一緒に映画見るのが楽しみだな! 斗真君はいつ予定が空いてる?』
こうやって僕は彼女の罠にはまっていく。ちょっとエッチでいたずらっ子な神倉ナナにいつも翻弄されている。
『そうだ! せっかく映画を見るんだから、あたしの家でオフコラボしよう!』
「それはやめよう!? そんなことしたら本当に炎上するよ!?」
『それなら配信はしないで、あたしと2人で見るのは?』
「それも却下」
『何で?』
「100歩譲って2人で見るのはいいとして、映画鑑賞中に僕がななちゃんの腕にしがみついて悲鳴をあげるかもしれないから駄目」
「あたしはそんな小さい事なんて気にしないよ」
「僕が気にするんだよ。それにななちゃんだって男の悲鳴なんて聞きたくないでしょ」
『ごめん。それはちょっと聞いてみたいかもしれない』
「今の話聞いてましたか?」
ななちゃんは僕の話を理解していないのかな? 醜態を見せるからやめてほしいと言ってるのに、真逆の提案をしてくる。
みんな僕が怖がっている姿を見て何が楽しいのだろう。そんなものを見ても誰も得しないのに。ななちゃんは不思議な人だ。
『それじゃあ次のコラボも決まったことだし、一緒にアニメを見よう!』
「まさか今日見るアニメもホラー系じゃないよね?」
『もちろん違うよ! ここでホラー系のアニメを一緒に見たら、リスナーさんと同時視聴する時の楽しみがなくなっちゃうじゃん』
「よし! 次からはななちゃんとコラボする時、同時視聴は断るようにしよう」
僕達が知り合って約4ヶ月が経つ。その間こうして一緒に過ごす内に、ななちゃんとはものすごく仲良くなった。
ゲーム好きで陰キャな僕、神宮司斗真とクラスでは清楚で可憐な優等生を演じるVTuberの神倉ナナこと柊菜々香。
そんなクラスでは相反する存在の僕達がどうしてこんなに仲良くなったのか。それは今年の4月、桜が満開に咲いている季節まで話を遡る必要がある。
それは始業式の日の夜、芸能プロダクションの社長をしている姉さんが受け取った1通のメールから僕達の関係は始まった。
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