第15話
「結構苦戦してるな……大丈夫か?」
俺はアリスの魔法で透明になりアイナ達の後を付けて戦いを見守っていたのだが少し先行きが不安になっていた。
「あれがセトを追い出した人達なの?」
隣にいたアリスが俺を見てそう訊いてくる。
「まぁ俺が頼りなかったからね」
アイナ達の戦闘を見て思ったのは昨日戦ったボスモンスターの事だ。戦って分かった、もしアイナ達が戦っていたら負けていたか倒せたとしても全員無事ではいられないとそう分析していた。
道中にいる雑魚に対してボスモンスターの強さが異常だった事に少し違和感を感じていたものの倒しておいて正解だったと胸を撫で下ろした。
やがてアイナ達がテントを用意し始めたので俺達は奥に移動した。
「さてと異空間の整理でもしようかな、異空間発動っと」
「お菓子!」
異空間に入ると早速アイテムをお菓子を食べているアリスに鑑定してもらいながら棚や台に置いていったのだが棚に置いてあるひとつのスキル結晶で目が止まった。おもむろにそれを手に取るもやはり何も起きなかった。
「確かこれレベル300で覚えるんだっけ?」
「うん!」
俺の今の目標はこのスキルを覚える事だ。レベル300のスキルなんてどんなものなのか想像も出来なかったので考えるだけで期待が膨らむ。
「ねえセト!」
「ん? なんだ?」
「このダンジョンにまだ行ってない所があるんだよ!」
「え? 最下層までに別の場所があるって事?」
「うん! よく分からない所にあるんだよ!」
へぇ〜何でそんな事知ってるんだ? また特別なスキルなんだろうな。
「じゃあ行ってみようか。アイナ達もまだここに来るのに時間かかりそうだし」
アリスに案内をしてもらいダンジョンの最下層の入り口に行くとアリスの足が止まった。
「ここだよ!」
「何処?」
アリスが何もない壁を指差すので俺は頭に? を浮かべてそこを見ているとアリスがある何も変哲のない壁に手を当てた。するとびっくり、ゴゴゴと音を立てて扉のように開いていったのだ。
「まさかこんな所に……しかも奥からかなり強いモンスターの気配がするじゃないか」
扉の奥からは嫌な気配が漂い俺の頭に警笛が鳴った。
「面白そうだね!」
アリスははしゃぎ気味に中へ入って行ったので俺も後に続いた。
予感は当たり中ではモンスターが待ち構えていた。しかも逃げる事なく威嚇をしているようだ。
「逃げないってことは相当強いとみたな」
「よーし暴れるぞー!」
アリスは嬉しそうに戦闘を始めるのだった。
俺とアリスは立ちはだかるモンスター達を蹴散らしながら奥へ進んでいくと暗闇が覆う禍々しく異様な雰囲気の場所へと辿り着いた。
「もしかしてここボス部屋か?」
ズズズ……。
俺の言葉に反応する様に暗闇の奥からから引きずるような音が耳に入った。
「明かり明かりっと!」
パァ!
アリスは洞窟の天井に光を灯す魔法を放った。
「な、何だコイツは……」
光に照らされて目の前に現れたのは肉の塊のような触手を持ったモンスターだった。ウネウネと触手を動かしている。
「うわぁ気持ち悪い〜」
アリスが漏らした言葉に俺もコクコクと頷く。できれば近づいて戦いたくないと思わせる姿に魔法が使えたらな〜 と今までで一番思う場面だった。
「私がやる!」
アリスは一瞬集中するように目を閉じて手を掲げると何かの魔法を発動した。
「何だあの魔法は……」
俺はモンスターの上に突如謎の球体が現れたのを見て唖然とした声を漏らしていた。
「いけー!」
ブン!
アリスは上げていた手を振り下ろすと球体はゆっくりと下に落ちていった。
ゴゴゴ‼︎
モンスターは避けることなくというか何が起きているのか分からないだろう球体に押し潰されるように形を変えていく。
ドン‼︎
カッ‼︎
ズゴゴゴ‼︎
ブワッ‼︎
それは強い風を起こしながら地面に届くと眩い光と大きな音を立てて地震が起こり強烈な突風が俺に襲いかかった。
「ぐ‼︎」
爆風を耐えるとモンスターがいた場所には大きな穴が空いていてモンスターの気配が綺麗に消えていた。
「やったー!」
ゾク……。
アリスのとんでもない力を目の当たりにした俺の心の奥でほんの少し恐怖という感情が芽生え始めていた。
ボスがいた場所にできた大きな穴を避けて奥へ進んでいくとそこには上級回復薬にスキル結晶、装備などが散乱していたが、その真ん中には装飾が施された金色の宝箱が台の上に置かれていた。
俺は箱に近づくとゆっくりと慎重に開けた。
「これは……」
見た瞬間今まで見た装備よりも不思議な力を感じる白銀のサークレットが入っていた。
「これまた凄そうなアイテムだな……隠し部屋だからか?」
俺はそれらを全て異空間に放り込み奥の扉を開けるとそこは見覚えのある場所だった。
「あれ? ここって最下層のボス部屋じゃないか!」
俺達が部屋に入ると隠し部屋に繋がる扉はスッと消えてしまった。
「もしかしたらこの先行くダンジョンにもこういった隠し部屋があるのかもしれないな」
何故勇者の装備があるダンションにこんな場所が用意されていたのか疑問だったが考えてもしょうがないので野営の準備を始め明日を待つ事にした。
ゴゴゴ!
「何だ!」
「地震⁉︎」
「キャア!」
「外へ出るんだ!」
アイナ達は突然の地震に飛び跳ねるように体を起こすと急いでテントから飛び出した。
しばらくすると揺れも収まり皆がホッとしているとウェンディが強張る口を開いた。
「こ、この近くに火山なんてありましたっけ?」
「いや、ないはずだ……」
「下から突き上げるような揺れだって事は下で誰か戦ってるのかしら……」
「それはない、俺達以外でここまで来るのは至難の技だ。ましてやあんな揺れを起こすなど人では無理なはずだ」
「……」
この地震はアイナ達にこの先にある苦難を予見するかのようなものだった。その後もしばらく皆不安で眠れなかったのであった。
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