5話 桜の花言葉
喪服なんて、五歳の時以来だ。
繊細で、儚い雰囲気をまとった、私のたった一人の幼馴染のお葬式を終え、母の運転する車の助手席から景色を眺める私の目は、大層虚ろなことだろう。
景色を眺めながら、彼女との思い出を振り返っていると、ふと、あの日のさくらの言葉を思い出した。
―「ねえ、桜の花言葉って知ってる?」
私は即座にかばんからスマートフォンを取り出した。画面を操作する指が震える。検索結果が画面に表示されるまでの数秒が、やけに長く感じた。
あの時さくらも、こんな気持ちだったんだろうか。
【花言葉まとめサイト】
そう書かれたサイトを開き、震える指で画面をスクロールする。心臓がうるさい。
【桜の花言葉・・・私を忘れないで】
スマートフォンの画面を、涙が占領する。
あの日抱いた疑問の答えが、するすると噛み合っていく。今すぐあの日に戻りたい。あの日に戻って、彼女を抱きしめたい。忘れないよ。忘れるわけない。
涙に覆われた視界の端で、紫苑の花が咲き乱れていた。
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