VS仙台スパークス
スターティングラインナップ
千葉ドルフィンズ
1番 ライト
2番 サード
3番 セカンド
4番 レフト
5番 指名打者
6番 ショート
7番 ファースト
8番 キャッチャー
9番 センター
先発投手
仙台スパークス
1番 レフト
2番 センター
3番 ファースト
4番 指名打者 ジェイコブ・アーノルド
5番 セカンド
6番 キャッチャー
7番 サード
8番 ショート
9番 ライト
先発投手
両チームの先発は予告されていた通り、蔵家と椎名の両サウスポーだ。
ドルフィンズはサウスポーに強い早々江をクリーンナップに配置し、ここまで得点数最下位の打線にテコ入れを図る。
一方のスパークスは打線をほとんど変えず。
リードオフマンにはここ最近好調を維持している綱井でチャンスメークを狙う。
クリーンナップには昨年最優秀新人賞を獲得した猪頭を置き、守備力に定評のある石井や花房を下位打線に配置した。
プレーボールがかかり、ドルフィンズ先発の蔵家が綱井と対峙する。
初球、綱井がストレートを打ちにいくも打球はバックネットに音を立ててぶつかりファール。
綱井は足が非常に速いだけに転がせば内野安打も十分にありうる。
しかし長打力もある程度兼ね備えているため、内野手が前に出る事はない。
それから4球目までは綱井はバットを出さずカウントは2ボール2ストライク。
5球目、空振りを狙ったチェンジアップが甘く入ったところを捉えた。
低い弾道、ライナー性の打球がセンター方向を襲う。
今日センターを守っているのは舘だ。
外野手にとって厄介なのは、こんな風に判断に難しいボールが飛んできた時だ。
待って捕ればランナーは確実に出塁するが、高確率で1塁に留めることができる。
突っ込んでノーバウンドで捕ればアウトを取れるが失敗すると危険だ。
何しろ外野の後ろには誰もいない。
ボールをこぼせば俊足のランナーが2塁を奪うことだって可能になるし、後ろに逸らそうものなら3塁へ、もっと言えばランニングホームランになる可能性もある。
確実にランナーを留めるか、それともリスクを冒してアウトを取りに行くか。
それらを瞬時に判断して行動を起こさなければならない。
舘は真っ直ぐ打球へとスピードを緩めず前進している。
待って捕るよりもハイリスクハイリターンを取ったようだ。
いざという時の為、入夏はセンターの後ろへと回りこもうとする。
しかしその行動は杞憂に終わった。
舘はスライディングしながら土とボールの僅かな隙間にグラブを滑り込ませ、ボールをキャッチしていた。
やはり外野の守備では舘はチームでも頭一つ抜けている。
初回の先頭打者、大きな1アウトを奪って見せた。
1アウトを取った蔵家は2番の沖田をファーストへのゴロに仕留める。
3番の生不には三遊間を破るゴロヒットで出塁を許したものの、4番のアーノルドを空振り三振に打ち取って初回の守備を0でしのいだ。
◇
1回の裏、入夏が打席へと入る。
相手先発はここまで3勝をあげているスパークスのエース的存在、椎名だ。
平均球速は140km/hにも満たないが変化球とコントロールの良さで勝負する軟投派である。
その初球、真ん中高めに入ってきたストレートを引っ張って打ち返した。
打球は伸びるが、ライトのポール際を切れてファールに。
(今のは仕留めなければいけなかった、けど。次に甘く入ってきた時は仕留める)
入夏は打席に入りながらも反省と次のボールへの意欲を重ねていく。
普段対戦している投手の球速が速い分、バットが出るのが早かった。
次のボールでそれを修正する事が出来ればホームランに出来る。
思考を回しながら迎えた2球目、椎名の左腕から放たれたボールはふわりと浮いて弧を描いた。
ストレートを意識していた入夏の体は金縛りにあったかのように止まり、ストライクゾーンへとボールが吸い込まれる。
電光掲示板では「81km/h」の数字が表示されていた。
椎名がたまに投げる超低速のカーブ、野球ファンの間では下の名前をもじって「カセキカーブ」と呼ばれている球種だ。
下手すれば失投になりかねないこのボールを特大ファールを打たれた直後に投げてくるのだから、椎名の胆力は底知れない。
続くスクリューにタイミングが合わず、ぼてぼての打球をショートの花房にさばかれて1アウト。
ベテランの投球術に翻弄されたドルフィンズ打線は三者凡退、たったの10球で料理され攻撃を終えた。
2回の裏、ドルフィンズの攻撃で早々江がセンター前へ弾き返し初安打を打ったが下位打線が倒れ得点ならず。
先にチャンスが舞い込んできたのはスパークスだった。
4回の表、生不が一塁線を破るツーベースヒットを放ちノーアウトでランナーを2塁へと置く。
両チームにとって初めての得点圏。
打席に入るのは4番のアーノルドだ。
第一打席では三振に倒れているものの、得点圏打率は4割超を誇るクラッチヒッターである。
バッテリーは初球、2球目、3球目と変化球で誘いにかかるもボールカウントだけが増える。
4球目もストライクゾーンを外れ結果四球で出塁を許した。
ランナーが一人増え、嫌な流れの中5番の猪頭を迎える。
ピッチャーが二塁を目で牽制し、投じた1球目。
甘く入った変化球を猪頭が捉えて打球はレフト方向へ。
阿晒の頭を一つ越えた打球はワンバウンドでフェンスに直撃し、2塁ランナーの生不が帰ってくる。
先制したのはスパークス。
その後7番の石井が犠牲フライを打って0対2となった。
◇
4回の裏、攻撃が始まる少し前。
ドルフィンズはベンチ前で円陣を作って打線に発破をかける。
打撃コーチからは
「シャキッとせんかい!」
という考えてみたらアドバイスにならない言葉が飛んだ。
ドルフィンズの攻撃は3番の鳥居から。
椎名の丁寧にコースを突くピッチングにも動じず、勝負はフルカウントまでもつれ込んだ。
6球目、インコースに食い込んでくるスクリューを体を躱して避けて四球をもぎとった。
阿晒もライト前へのヒットで繋ぎ、その間に鳥居が三塁を陥れる。
ノーアウト一三塁のチャンス、打席に入るのは5番に抜擢された早々江。
一巡目ではチーム唯一のヒットを放っている。
初球に選んだのは超低速のカーブだった。
しかしこれはワンバウンドしてボール。
元々球速が遅いピッチャーながら、この打席の早々江に対してはカーブやスクリューなど緩い変化球が目立つ。
カウント2ボール2ストライクとなって迎えた7球目、バッテリーが選択したのは変化球だった。
空振りを狙ったストライクゾーンから落ちるスクリューに、早々江のバッティングは完全に崩された。
バッテリーとしては勝利と言っても等しかった配球だったが、飛んだところがまた微妙だった。
バットの先端でこつんと当てただけの打球がふらふらとレフト方向、ライン際へと上がる。
三塁走者の鳥居は捕球してからすぐにスタートを切れる体勢を取っている。
レフトを守る綱井は猛チャージをしかけ、ノーバウンドで捕球しにかかる。
動きに迷いがなく、走る速度は初回の舘に比べて速い。
綱井のスピードを加味すれば、スライディングキャッチでアウトが取れるであろう距離だった。
そうして綱井は足から滑り込んで捕球しにかかるが、紙一重。
もう少しのところでボールがグラブからこぼれた。
観客からワッと歓声があがる。
綱井はボールを逸らしこそしなかったが、アウトを取れず生還を許した。
イケイケのムードに乗じて万田もセンターの頭を越える走者一掃のタイムリーツーベースヒットを放ち一気に逆転。
スパークスが握りつつあった流れを引き寄せた。
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