第74話 世界連盟の盟主【3】

 高速飛行の自在車を、自由に乗り回すイノマ達にはノンビリ飛行するプロペラ式飛行機は、珍しいオモチャに感じた。

 ゴン子と佳子は事後処理の為、カッパドキアに居るが他のメンバーは異形のウランにコバルト含む全員イノマに同行していた。


 イノマ達とエルド大頭領は、続々到着する各国の要人を迎える為、アンカラ空港に居る。

「こんな低速でノンビリ来れば2日も待つ必要有ったの分かるよ」


 エルドに取っては次々到着する各国の要人機は、最新鋭の大頭領専用機なのに、ノンビリ速度の飛行機と言われ複雑な気持ちだ。

「一番遠くに有るアイスランドの大頭領専用機です」

「アイスランド?」


 ここにイリスが居れば分かる説明でも、イノマ達に取っては聞き慣れない異国の地名だった。




 ※国として意外に知られて居ないアイスランド『アイスランド共和国』が国名です。

 シシャモや赤魚の切り身等、アイスランドからの輸入魚介類が日本のスーパーに並んでいます。

【北海道くらいの島国】

 北欧にある島国で、ノルウェー国王の悪政から逃れたバイキングの各種族が統治したのが発端で、メルカトール世界地図で見ると北極付近の巨大な島に見えますが、面積は10.3万平方キロメートルで北海道くらいの島です。

 地熱や水力を利用した、発電は100%自然エネルギーで賄って居ます。

 地熱発電所からの温水をパイプラインで各所に運ぶことで、道路の凍結を防ぎ、都市部の暖房や給湯、野菜や果物の温室栽培に活用するなど、火山の恩恵を受ける国です。

 アイスランドより多くの火山を保有する日本は、長い目で見て見習うべきエネルギー活用の国です。


【最古の議会民主主義国】

 930年頃より全島のヴァイキングが集まり、法の制定等を行うアルシングという政治集会が行われるようになり、これが世界最古の議会と言われています。

 国家といえば、王様や皇帝がいないと成立しないと考えられて居た当時、画期的な事です。


 夏に太陽が沈まない白夜や、冬のオーロラやブルーラグーンと呼ぶ世界最大の露天風呂、日本人好みの魚介類料理と、観光旅行して見たい国です。

 アイスランドって氷に閉ざされた寒そうな感じですが、近海を流れる暖流の恩恵で年間気温は、日本の東北地方と同じくらいです。





「ハトラ・トーマスドッティル大統領に議長を務めて貰うつもりだ」

「アイスランドの国王?」

「アイスランドは開国から今まで、国王も皇帝も存在しない珍しい議会制民主主義国家です」


⦅国民の代表者が協議し国家を運営する制度です⦆

 ピーターが小声で補足説明してくれたが、国民の代表者が協議?国家運営の考え方が理解出来ないイノマだった。


 アンカラ 大国民議会議事堂で、第一回世界連盟会議が始まった。


 トルコのアンカラ議事堂は、500席が扇状に設置され中央の演壇に議長席が有り議事運営する。


「初めに国際連盟の代表者を、各国の指名で異世界の大女王イノマ様に就任して貰いたい」


 指名により議長に答弁する。

「打診は受けて居りましたが、私イノマ・コウシンは異世界の者、しかもご存知の通り人間では無い!世界の平和はこの世界の人が勝ち取る必要が有ります!」


 もっともらしい事言ったが、本音はいつまでもこの世界に留まる気は更々無い、責任の押し付けは御免こうむる。



 出来レースの如く、結果代表者がトルコ共和国エルド大頭領に決定した。


 議長席にエルド大頭領が座り第一声。

「イノマ様には、国際連盟の盟主になって頂きます」


 聞いて無い!

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