第3話 ハンエイ孤児院【2】

 イノマちゃんは不思議な子です、炊事洗濯お掃除一度教えると完璧にこなせる様に成りました。


 10歳のある日、一日出掛けて帰って来た時には、たきぎをよくも持てたって思うほど、凄い量を担いで薬草採取してギルドに売ったと言って銀貨5枚も私にくれました。

 ハンエイ男爵様からの寄付金が減って運営が苦しくなって居たので凄く助かりました。


 それからほぼ毎日掃除に洗濯が終ると森に出掛け、薪と薬草採取の売上金を持って帰ってくれる様に成りました。

 10歳のイノマちゃんに甘えて居るようで、心苦しいですがイノマちゃんの助け無く運営出来ない状態で、せめてお昼ご飯にとパンと水筒を渡して見送る毎日です。

 粗末な昼食なのに、凄く嬉しそうに受け取るイノマちゃんに私は申し訳無くて泣きそうに成りました。


 思い遣りと責任感の有る良い子なのに、他の孤児と話をしてる所見たこと無い、もっと皆と仲良くなって欲しいのが希望ですが、商人のベンさんの話では異常で恐い思いをした子の様で、その内何とか成ると静観して居ます。


 



 イノマちゃんも12歳に成りました。

 本当は孤児院に残って、運営の助けをして貰いたい気持ちですが、冒険者になって独立した方がイノマちゃんの為に成ります、こんな貧乏孤児院に縛り付けるのは可哀想です。


 今までのお礼のつもりで革鎧をプレゼントしました。

 剣も買ってあげたかったけど、お金が無くて安物革鎧なのに、イノマちゃん泣いて喜んでくれました。



 ◈◈◈


「ありがとう!マリナ母さん!!冒険者ギルドの3階に宿泊させて貰える事に成りました、私に用が有ればギルド受付に伝言入れて!」

 マリナ母さんが私を抱いて、泣き出しました。

「今まで助けてくれて、イノマちゃんにはお礼の言い様が無いよ冒険者嫌になったら何時でも帰って来てね」


 マリナ母さんが買ってくれた、鎧を着て孤児院を卒院しました。



「イノマちゃん、ギルドカード出来てるよ」

 2年以上の付き合いになる、受付嬢のヨミさんが笑顔で言ってます。


「見習いカードじゃ無い、正式カード!嬉しい・・・あれ?初級2等?」

「イノマちゃん、ギルドマスターからのお祝いよ!」

「ハゲじいちゃん良い所有るね!いつも急がしそうだからお礼は言いに行かないけどヨミさん合う事が有れば私が喜んでたって伝えて」


 私は今まで食べたくても我慢してた、ギルド酒場に入りミルク煮込みのスープを注文しました。


 ほとんど待たず、お肉や野菜がごろごろ入ったスープにパンと、あれ?串焼き肉?を大将が持って来てくれました。


「正式冒険者登録おめでとう!今日は儂のおごり腹一杯食べてくれ!」

強面こわもての大将が、優しく笑って言ってくれました。

ちょっと泣きそうに成りました。

「ありがとう大将!美味しい!!」

 食べ放題のパンを3個も食べ、美味しいスープと串焼き肉、初めて食べて満足です3階のギルド職員宿舎に向かい、私の部屋に入ってベッドに大の字に寝転び自由を噛み締めました。


「よっし!頑張るぞ!!」

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