イノマの果しなき旅路

犬時保志

1章 私スライムだった

第1話 自我を持ったスライム

【『変化が全く無い、狂暴で好戦的な龍神を滅ぼしたのは間違いで有ったか』

 今日も地上の人間界を眺めて、溜め息をつくカンゲイ神でした。

『人の世界に変えて1万年、もう人に期待するのは止めて新しい…おっ!生まれたてのスライムか、少し細工を…良いぞ!これで何かが変われば良いが、儂神として自信を無くしそうじゃ…おっ?このメスゴブリン、面白いぞ!少し知能を上げ、この二匹が出会えるよう運命付けて、眺めて楽しもう』】





 私はスライム、名前はまだない。

 発生した場所は森の中、薬草の群生地だった。

 当然食べ物は薬草になった。


 本能の命ずるまま、薬草をひたすら食べ、微睡まどろみの繰り返しで月日は流れて行った。


 まだ年月の概念はないが、数年は経ったころ天啓てんけいのように自覚した、傷付いた物を癒さないと!

 私に自我的な物が涌き出て来て、傷付いた物を癒すため、モゾモゾ移動を始めた。

 私の身体は、移動には適して居ないようだ。


 薬草は直ぐに見付けることができ、食べ物には不自由しない。

 数日か数年か移動を続けた。

 目の前は森が無くなり、草原が広がった。


 魔物に襲われたのか、数体の死骸が転がって居た。

 死骸に私は興味を引かれない、暫くモゾモゾ移動すると大小2体の死骸…下になってる小さい方は生きてる。

 傷を癒す本能で、小さい物を私は薄く広がりおうった。


 治療を始める前に、小さい物は息を引き取り死骸になってしまったが、私は離脱出来ず長時間かけ、ユックリ吸収した。

 数日掛けて吸収が終わり、体内で同化が始まった。


❮私はイノマ!❯

 人間の思念は強烈です、私の自我は金縛りにあい身動き出来なくなった。

 スライムの体が変形して行くのを感じながら、私の自我は奥底に沈み微睡まどろみを始めた。



 

 

 変化の乏しいスライムにゴブリン、上げられる運を適当に上げ、いつしか興味を失い忘れさるカンゲイ神、ちょうどこの世界に初の迷い人、イリス君が来た事にも寄り、スライムとゴブリンの存在を完全に忘れてしまった。

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