第17話 ツツガムシとひょうすべ
第17話
???side
「此処が朝っぱらから怪異達が戦っていた場所か………」
────やはり、もう何も感じない。
だが、残っている気配の残滓的に………
「間違いない、この案件には咎人が関わっている。」
あの怪異であって怪異じゃない様な特異な気配など、咎人以外に有り得ないだろう。
「────まさか、この町に咎人が現れるとはな。」
唯でさえ、色々と抱えているのだ。
より心労が増しそうな案件を増やすのだけは止めて欲しい………
「厄介っすよね、先輩………」
「そうだな、お前のウザ絡み並に厄介だ。」
「酷くないですか!?」
事実だ、駄後輩。
今は自重してくれているみたいだが、平常時はな………
「どうします?このまま帰りますか?それとも、もうちょい調査していきます?」
「そうだな、その方が『ツツガナイ〜♪』別の案件が来たぞ、構えろ
「了解です、先輩………」
此処に残っている気配に惹かれて現れたか、怪異め………
しかも、あの鳴き声的に正体は………
『ツツガナイ、ツツガナイ〜♪』
「げっ、虫系だ!私、嫌いなんですよね、こういうタイプ………」
「今回はそれで正解だと思うぞ。コイツ、病魔を振り撒くツツガムシだ。」
「げぇ、怪異の方でも生き物の方でも嫌な奴じゃないですか!?」
ツツガムシ、人の生き血を啜り、病を振り撒く虫系の怪異。
表の世界では、ツツガムシというダニの仲間がツツガムシ病の原因とされ、別の原因を妖怪のせいにしていた例とされている奴だ。
真実は、どちらもツツガムシ病を振り撒く害虫という物なのだが………
「此方の感染方法が厄介なんだよな………」
コイツの吐く息、撒き散らす体液自体がツツガムシ病の媒介になる。
気を付けていないと、即病院行きだ………
「でも、本家の医療班に任せれば治してくれますよ?」
「こういうのは最初からならない様にするのが大事なんだよ。」
無駄に被弾していたら、後で面倒な事になる可能性があるからな………
『ツツガナイ〜♪』
「ちっ、行くぞ千翼!!」
「了解です、先輩!!」
☆☆☆☆☆
藍青side
「『今日は何か怪異が多いな………』」
『その様だ。しかも、感知した2匹の内の一体は既に何者かと交戦している。』
マジか、早いな………
おそらく、陰陽集だな………
じゃあ、そっちは行かなくて良いか………
間違いなく面倒な事になるだろうからな。
でも、一度ちゃんと見てみたい気もするな。
今は良いだろ………
『そろそろ気を引き締めろ、来るぞ!!』
「『了解!』」
藍月の言う通り、眼の前に怪異が現れた。
アレは………猿か?
『藍青、気を付けろ。面倒な奴だぞ………』
「『どういう事だ?』」
『アレはひょうすべだ。』
ひょうすべ、どんな怪異なんだろうか?
水辺に棲む魚狂いの奴だ。
へぇ、川猿なのか………
それはそれで別種に居るから気を付けろよ?
『ちなみに、ナスも好きだぞ。』
「『へぇ、ちゃんと野菜も取るタイプなんだな、ひょうすべ………』」
────ん?
「『何か熱くないか?頭がクラクラするレベルなんだが………』」
でも、寒気もするな………
おいおい、マジかよ………
どうかしたか、片車輪?
まさか、この状態でも怪異の術中に嵌まるんだな………
えぇ、どういう事だ!?
ひょうすべって怪異はな………
『見るだけで病気になる怪異だ。』
「『超厄介じゃん!!』」
『そうだ。だから、面倒なのだ………』
つまり、俺は風邪でも引いてる状態って事か?
最悪、インフルかコロナかもな………
病気に詳しいな、お前………
怪異にだけ病気を振り撒く怪異も存在するからな、知識を持っておく事に越した事はないんだ。
へぇ、そんな奴も居るんだな………
ああ、マジで色々な奴等が居るからな。人間じゃないが、十人十色だ。
『ひょひょひょひょw』
「『うわっ、名前は通りの笑い方!?』」
しかも、汚い水を口から吐きやがったぞ!?
当たると病気を増やされるぞ、それ………
酷い汚水だな、おい!!
病魔水だ、覚えておけ。
へぇ、勉強になるわ………
今適当に考えた呼び名だけどな!
感心して損したわ!!
「『まぁ、そんな技は当たらねぇがな!!』」
ははは、楽勝だな!!
全くだ、私に当てたいなら輪入道レベルの速さを持って来い!!
『ひょひょひょひょひょひょw』
「『うおっ、周囲を病魔水で囲いやがったな、この野郎!?』」
急いで逃げたお陰で難を逃れたが、結構頭が回るな……
みたいだな、反省しなければ………
『ひょひょひょひょひょひょひょひょww』
「『────拝み始めた?』」
一体、何をして………
一体、何をして………
『しまった、雨乞いが出来る個体か!?』
藍月がそう叫んだ瞬間、本当に雨が振り始める。
ははっ、雷や暴風が必中しそうな雨だ………
雨乞いが出来る個体がどうしたんだ、藍月?
雨如きでは俺の炎は消えねぇぞ?
『違う、雨の中の奴は────』
『ひょひょひょw』
藍月の言葉を聞き終える前に、奴が俺達の目前に現れる。
なっ、速っ!?
成る程、これが雨乞いの!?
「『成る程、一筋縄じゃ行かないってか?』」
だが、それでこそだな………
ああ、全くだ………
「『────愉しくなってきた。』」
続く
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