第1章 ④混じり合う若人
第16話 この家に集う乙女達
第16話
蛟side
「うぅ、此処は………」
目を覚ますと、時々不可抗力で見る事がある藍青の部屋の天井が目の前に在った。
えっ、今回は何でだっけ?
確か、前は藍青の家に何故か葛葉さんが居て、何故か同棲するみたいな事になってて、それに頭がパンクしちゃったせいだった筈。
で、今回は葛葉さんを藍青の近くに置いておいて良いか確かめる為なのも含めて、私も荷物を纏めて来て………
そこで、そこで………
「────怪異!?」
何で、何で白昼堂々(夕方である)と怪異が藍青の家に居るの!?
可笑しいよね、普通に考えて可笑しいよね!?
ど、どうしよう………
あのお方を呼んだ方が良いのかしら!?
で、でも、呼んだら絶対に拗れる!!
そもそも、藍青の前に立つ覚悟も勇気もないから木端な私に藍青の監視を頼んでる人が来ても迷惑をかけるだけだろう。
後、単純に藍青を不快にさせてしまうのは、個人的に嫌だ。
いや、まぁ、アレは仕方のない行為だとは思っているが、それはそれという奴なのだ。
「おう、起きたのか竜崎。」
「あっ、藍青!ご、ごめんね、度々貴方のベットを借りちゃって………」
「気にするなよ、それ位………」
いや、気にするわよ………
だって、このベットって貴方の匂いに満ちてるのよ?
────嫌いじゃないけど、少し落ち着かないのよ。
「で、起きて早速なのは悪いんだが………」
「どうかしたの?」
「コイツ、見えてる?」
えっ、そんな質問をしてくるって事は………
『普通に美人さんだな、このお嬢ちゃん。名前があの貝トカゲなのが勿体ない位だ。』
あ、ああ、あああ………
「か、怪異!?や、やっぱり居る!!??し、しかも、さっきの奴じゃない!!!」
しょ、正直、私は木端だからマトモに戦えないけど、藍青を守る位なら………
「あっ、やっぱり見えてるのか。」
「あ、藍青?」
「まぁ、色々と有ったんだが、今日からこの家に住み着く、いや取り憑く?事になった片車輪だ。宜しく頼むぜ、竜崎♪」
『宜しく頼むぜ、お嬢ちゃん♪』
──────────────────は?
そう思うのが精一杯だった。
そして、直ぐに私の頭の情報処理が乱れていき………
「キュウ………」
「竜崎!?またか!?」
『いやぁ、面白いお嬢ちゃんだな………』
────私の意識は再び暗転していった。
☆☆☆☆☆
狐side
餓龍藍月に選ばれたお兄さんは凄い人です。
怪異を屠るだけでなく、仲間さえも増やしてしまったのです。
「片車輪さんは夕飯はどうします?」
『ああ………熱々の味噌汁で。あっ、具無しで頼む。』
「はい、了解しました。」
そして、この常に燃えてる女性に見える怪異が、お兄さんが連れてきた片車輪という怪異さんです。
いやぁ、燃えてるのに近くが発火したり、円生したりしないんですね………
私、初めて知りました………
「しかし、どうしようか………」
『あのお嬢ちゃんの事か?俺が見えてる事以外は、別に些末な事だろ?』
「俺もそう思ったんだけどよ、藍月曰く『この女は陰陽集の一員な可能性がある』とか言ってるんだよ………」
『何?それは確かに面倒だな………』
陰陽集、私達の事を追い回す最悪な集団です。
もし、本当に竜崎さんが陰陽集の一員なら、直ぐに追い出した方が良いですね!
勿論、お兄さんの決定に従いますが………
「まぁ、後でちゃんと話すよ。色々と世話になってるからな。竜崎と戦うのは愉しいだろうけど、殺し合うのはちょっとな………」
『まぁ、お前がそう言うんから従うさ。これからこの家に定住させて貰う身だからな。』
正直、私は問答無用で放り出すのが正解だと思います。
────最悪、殺して始末するのも。
「狐、お前もそれで良いか?」
「はい、それで良いと思います!同学年が死ぬのは忍びないですからね………」
本音は何とも思ってないですけどね………
お兄さんの決定は絶対、全身全力で私は従いましょう。
☆☆☆☆☆
片輪車side
絶対にロクな事を考えてないぞ、あのお嬢ちゃんは………
『美味しそうな、この熱々の味噌汁………』
まるで、あの狐というお嬢ちゃんから感じ取れる熱気の様だ。
藍青はこの熱に気が付いてないのか?
気が付いてなさそうだな、うん………
「お前、味噌汁とか食えるんだな………」
『食事の真似くらいなら出来るさ、一応は人型の怪異だからな、俺。』
「真似?」
『おう。正確に言うと、この味噌汁が持ってる熱を食べてる。人肉が好物じゃない炎系の怪異は全員がそういうタイプだぜ?』
火取り魔とか、ソレの極地みたいな奴も居るしな………
────アレと戦うとなったら、大分面倒だろうな。
「へぇ、面白いな………」
『俺からしたら、お前等人間の悪食っぷりの方が面白いけどな。』
「くっ、反論できねぇ………」
ふふ、面白い奴………
正直、合体した直後は良い気分じゃなかったが………
『────愉しくなりそうだな。』
何となく、そう思った………
────う〜ん、変な影響を受けてる気がするな。
「何か言ったか、片車輪?」
『いやぁ、何も?』
まぁ、別に良いか!
此処に居れば、最高の熱が食べれそうだしな!!
続く
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