挿話2 獣人族の戦士リア
アルフィ様に、お礼と称して体術の特訓をしていただく事にした。
でも、アルフィ様は魔術師様だから、物理的な攻撃は殆どした事がないと言っていたのに、スピードが凄い。
「アルフィ様っ! す、凄いですっ! 初めてなのに……」
種族の差があって、どうしても一撃必殺という訳にはいかないけど、それを補って余るこの連撃の速さ……最初は避ける事が出来たけど、アルフィ様が動きに慣れてきたのか、避けきる事が出来なくなってきて、手で防ぐ。
流石は、あの魔狼ハティを倒して、私を救ってくださっただけの事はある。
私は獣人族一の戦士を自負しているけれど、あの魔狼には勝てなかった。
きっと、アルフィ様が魔法をお使いになられたら、私如きでは歯が立たないだろう。
「リア、いくぞっ! これが最後だっ!」
「はいっ! アルフィ様、来てくださいっ!」
魔法を使っていないはずなのに、衝撃を殺しきれない程の衝撃が腕を伝ってくる。
これなら……このまま稽古を続ければ、そう遠くない内にお父さんを越える事が出来るはずだ。
……と、内心喜んでいたけれど、アルフィ様が私の胸に顔を埋めたまま動かなくなってしまった。
うーん。体術を習得していただくと同時に、体力作りも必要かも。
「俺、頑張るよ。もっと強くなれるように」
「私も全力でサポートしますので、頑張りましょう! アルフィ様には、何としてもお父さんに勝ってもらって、村の掟を踏襲し……わ、私を娶っていただきたいんです」
言った……これが、私と結婚する為の特訓だという事を!
果たして、アルフィ様はどのような反応を……って、寝てるっ!?
うぅ……やっぱり、アルフィ様には体力をつけていただかなければ。
座った私の脚を枕にして、横にしたのが私自身なだけに、誰にもぶつけられない悲しさを、どうしたものかと考えていると、
「リア……すまなかったね。お母さんから聞いたよ。その人が、僕を……いや、リアとこの村を助けてくれたアルフィさんかい?」
突然横手からお父さんの声が聞こえてきた。
「お父さん! もう動いて大丈夫なの?」
「アルフィさんが持って来てくれた薬のおかげでね。とはいえ病み上がりなので、もう少ししたら戻るが……はぁっ!」
「お、お父さん!?」
何を考えているのか、突然お父さんが闘気を高め、アルフィ様へ気を向けた!?
……幸い、アルフィ様は目を覚まさなかったけど、お父さんの気のせいで、周辺の空気がピリピリと震えている。
「流石は、魔狼ハティを倒す程の戦士だね。僕の気を受けて、平然と眠っているとは。相当な大物のようだね」
「もう! 突然変な事をしないでよね! 言っておくけど、アルフィ様は私たちなんかより、遥かに強いんだから」
「わかっているよ。災厄級の魔物である魔狼ハティを一人で倒したんだ。魔狼ハティに滅ぼされた国すらあるというのに、リアと村を救ってくれたんだ。父親としても、村長としても、頭が上がらないさ」
「お父さん。そこまでわかっているなら掟を……」
「とはいえ、それはそれで、これはこれだ。獣人族の掟には従ってもらわないとな。娘と結婚するには、武器や魔法を使わず父に勝つ事。アルフィさんが魔法を使ったら瞬殺されるだろうが、体術だけなら今はリアに抜かされたが、それでも獣人族の元一位だからな」
もう……お父さんったら!
いくら村長だからって、頑なに掟を護ろうとしなくても良いのに。
でも、お父さんも強いけど、今は私の方が上。
その私が避けきれない程の攻撃が出来るのだから、このまま続けていれば、きっとアルフィ様はお父さんを越えるはず!
アルフィ様が魔法を禁止されるように、お父さんも獣人族特有の闘気を禁止される訳だし。
私の脚の上で眠るアルフィ様の頭を優しく撫で……目覚めるまで待つ事にした。
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