外道魔法の邪道使い。ゲームの世界に転生したら、嫌われキャラ第一位の裏ボスだった。外道魔法しか使えないけど、モブ生活を目指して人助けを続けていたら、悪役領主からハーレム主人公にクラスチェンジしていました

向原 行人

第1話 異世界転生先はゲームの世界でした

「……様。アルフ様。起きてください。朝です」


 見知らぬ女性の声で目が覚める。

 ゆっくりと重い瞼を開くと、見覚えのない高い天井と、そこから吊るされたキラキラと輝くシャンデリアが視界に映っていた。


「おはようございます、アルフ様。やっと起きましたね」


 身体を起こし、声がした方へ目をやると……かなり離れた部屋の隅に、銀髪のジト目メイドが立っている。

 俺、メイドカフェにでも泊まった……のか?


「えっと、俺何か避けられてる?」

「いえ、いつもの事ですが? アルフ様は毎朝寝ぼけたフリをして、抱きついてきますよね。とりあえず、食堂へいらしてください。朝食の準備が出来ております」


 そう言って、メイドさんがジト目のまま広い部屋を出ていった。

 メイドカフェなら、もっと優しい感じのメイドさんだよな?

 ひとまず、食堂に来いと言われたのでベッドから降りると、大きな鏡の前を通り……


「って、誰だよ!」


 鏡に見知らぬ男が映っている。

 長い黒髪と、如何にも悪人ですといった感じのきざったらしい顔。

 いや、マジで誰なんだ!? だけど俺と同じ動きをするし……と、困惑していたら、突然扉が開く。


「ご主人様ーっ! おはようございますーっ! お目覚めと聞いて、ご主人様の第一のしもべ、イザベラが参上致しましたーっ!」


 扉を壊しかねない勢いで、いきなり金髪の女性が部屋に飛び込んできた。

 誰かは知らないけど、十代後半といった感じで、髪は長くて綺麗だし、美人と呼んで差し支えない整った顔に、物凄く大きくて柔らかそうな白い膨らみが揺れている。

 ただ、容姿については完璧と言って差し支えないのだが、悪の女幹部みたいな無駄に露出の高い黒のレオタード姿なのが非常に勿体ない。

 しかも、いきなり俺の事をご主人様って……どこの痴女だよ。

 ただ……どこかで見た事があるような気がするんだよな。この鏡に映る黒髪の男も、この金髪痴女――イザベラも。


「そうだ、ご主人様! 今朝、朝の散歩中に良い感じの女の子を拾ったんだー! いつもみたいに奴隷にしてよー!」

「……は?」

「あ、ごめんね。肝心の女の子を忘れてたから、すぐ連れて来るー! ……はい、この子だよー!」


 今の……部屋を出て戻って来るまでが速過ぎないか!?

 いやまぁ部屋のすぐ外に居たんだろうけど、ボロボロの服……と言えるかどうかも怪しい布を纏った十代半ばくらいの少女が、イザベラに手を引かれて怯えている。


「ご主人様、早くー」

「いや、奴隷に……って、一体何の話なんだ?」

「えぇっ!? ご主人様、寝ぼけすぎだよー! ほら、掌をこの子に向けてー」

「え? あ、あぁ」


 訳が分からぬままイザベラに手を取られ、怯える少女に掌が向けられると、


「ご主人様。隷属って言って」

「≪隷属≫? ……えっ!? 何か黒いのが……」


 言われた通りの言葉を呟くと、少女が黒い何かに包み込まれた。

 一瞬で黒い何かは消えたのだが、これは一体何なんだ?


「はい。これで、貴女はご主人様の奴隷だよー! 後は、部屋の外に居るメイドちゃんに聞いてねー!」

「うぅ……私、何もしていないのに。外道領主の奴隷にされるなんて」

「後でメイドちゃんが教えてくれるけど、ご主人様にそんな事言ったら、外道魔法が発動してどうなっても知らないよー?」

「ひぃっ! う、嘘ですっ! わ、私はご主人様に忠実な奴隷です。どうか、殺さないでくださいっ!」

「はいはい。ご主人様が寝ぼけていて良かったねー。今の内に、部屋を出てねー」


 ちょ、ちょっと待ってくれ。外道領主に、外道魔法。アルフとイザベラって……まさか、俺がやりまくっていたシミュレーションRPG「タクティクス・エムブレム」の世界なのかっ!?

 しかも、よりによってアルフって……本人はクズみたいに弱いくせに、極悪難易度で何人ものユーザーがブチ切れた、嫌われキャラ第一位の裏ボスだよっ!

 タクティクス・エムブレム……通称TEはSRPGなので、四人くらいの勇者パーティと戦うとかではなく、大人数の強者に囲まれてフルボッコにされてしまう。

 嫌だっ! どうしてTEの世界に転生したかは知らないけど、俺は裏ボスとかじゃなくて、モブとして平和に生きるんだっ!

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