今日も笑顔でワン太と過ごす

香坂 壱霧

はじめましての1日 その1

 2018年、1匹の犬と出会った。


「犬、飼いたいね」 

 愛護センターのHPをみる。

 その譲渡犬のリストに、ワン太(仮名)はいた。耳が大きいのが特徴の雑種のオス。


 愛護センターに譲渡会の申請をして、譲渡会に行くことになった。


 譲渡会当日。

 ケージに入れられた犬は5匹くらいいたと思う。

 ワン太以外は、生後3ヶ月くらいの子犬だった。

 ワン太は、推定7ヶ月。他の犬より大きい。

 子犬たちはキャンキャンと元気に吠え、ケージのなかで飛び跳ねている。人が近づくと、愛想よく振る舞う可愛らしい仕草をする彼らと違い、ワン太は人を警戒するように怯えて座っていた。


 ワン太を選んだのは、私たち家族だけだった。対面して、しつけ教室や説明会を受け、連れて帰る時間になった。


 用意していた首輪は子犬用で、サイズが合わない。ケージに絶対入らない。

 ビニール紐で簡易首輪を、愛護センターのスタッフさんが作ってくれたので、車までゆっくりと慣れてもらうため、歩いてみる。

 びくびくしているけど、なんとか車にたどりついた。


 運転席の私。

 助手席は、母。

 後部座席に、娘。

 娘に抱っこされるワン太。


 山奥の愛護センターから、家までの道のりは、カーブが多い道。

 ひとまず、徐行で進む。後続車に追い抜いてもらいながら。

 道中、吐いたりおしっこしたり……ワン太はげっそりするくらいに、ひどい有りさま。

 そんな中でも、山道の木漏れ日からの光にとても反応していた。

 光をみると、テンションがあがるようで、吐き気もその瞬間は落ち着いているようだった。

 

 光が好きなんだなあ。

 暗いところがこわいのかもしれない。

 家に着くまで、ワン太の名前をみんなで考える。

 光にまつわる名前をつけたのは、このときの姿があったから。


 家に着いてから、さらに大変なことになる……

 玄関を開けても、家の中に入ろうとしない。いやがるのを無理やりというのは、最初からそれではよくないので、あの手この手でおうち楽しいアピールをしたような気がする。

 家に入ってから、排泄のことやらなんやら。とうぜん、失敗だらけである。


 寝る時間になる。

 ケージに入らない。

 また、どこかへ連れて行かれると思っているのか。

 かわいそうなくらい怯えているから、リビングに布団を敷いて、私はワン太と一緒に最初の夜を過ごした。

 

 ワン太に愛情全振り生活の始まりだった。

 

 

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