天界物語

無名の猫

第1話 始まりの終わりと、終わりの始まり。

むかし、むかし。人間は神と共存して、人は神を讃える事で神から生きるために必要なものを貰いました。

 だが、そこには神の絶対的な力を認めない人間もいました。

 そこで、神と共存派か、反対派かで戦争が起こりました。

 激戦の中、共存派を裏切ったのか、唯の気まぐれなのか。神は急に共存派を殺し始めました。

 それ見て共存派は泣き叫び、無力な共存派は反対派と、神に大半が殺されました。

 白い壁は赤く染まり、半壊状態の教会。

 そこにある神が描かれた壁画の神は、首の部分に大きく罰が描かれており、その目の前で反対派が共存派の人肉をむしゃぶりついてました。

 残った共存派は、天界に続く山に登っては失敗して亡くなり、全滅しました。


        2030年


 1人の少年が天界へ続く山に登りました。

 それは、そんな珍しいたった1人の少年の物語。


            *


 疲れた。

 山に登ってどのくらいかかったのだろうか。

 あたりを見渡すと、銀色の雪景色が広がっている。

 そう言うところも『雪国みたいだー』と、楽しむことは出来た。

 最初の頃は。

 今はもう寒いって言う概念も消えてきた。

 今、自分は根性で歩いている感じに近い。

 貴方は天界に続く山——鷲ヶ頭山の逸話を知っているだろうか。

 ずっと雲で隠れていて一度も頂上を見た事がない山。

 その山には古からある逸話がある。

 そこの頂上には神様が住んでおり、頂上に着くとなんでも願いを叶えてくれるとか。

 だけど、今の所誰も登頂に成功したことが無い。

 ここ、鷲ヶ頭山は標高は400mと、低い筈なのに。


       それから数分後


「なんだよこれ……」


 俺は絶句した。

 なぜなら……そこには雪など無かったのだ。

 それどころか沢山の花が咲いている。

 桜、アサガオ、コスモス、ツバキ……

 四季色々の花がありすぎてついつい「なんでもありかよ……」とか呟いてしまった。

 足の感覚はない。

 帰宅部でありながら、毎日下校をゲームの為に走ってたもんで、体力には自信がある。

 学校は最寄りの学校を選んだが、それも3キロ先にある。

 これが中々キツい。

 家が坂道だから本当にきつい。

 だけどゲームの為に走って帰る。

 これが俺のルーティーンだった。

 

           *


 花畑を抜けると、そこには鳥居があった。

 赤く、大きな鳥居。

 地面は石で出来ている。

 石の畳。寺っぽい構造だ。

 鳥居を潜った先には大きな木が見える。

 俺は鳥居を潜った。

 すると、いきなり俺は倒れ出した。

 安心、苦労、この二つにより僕は倒れた。


「神話で死人が沢山でたこの山、生きて登ってこれたぁ」

 

 神話で死人ばっかだが、現実でも死人は多い。

 理由は心霊や、神だの仏だのが上げられているが不明。

 ふざけで入山した奴らは原型が分からなくなるレベルでぐちゃぐちゃになって発見された。

『入山したら絶対に○ぬ山登ってみた』と言うタイトルで生配信をしながら登山をしたYouTuberは急に配信が止まり、後日に死亡が確認。それから、鷲ヶ頭山は世界七大禁所に指定され、立ち入り自体が禁止された。

 そんな山を登り切ったのだ。(立ち入り禁止を破って入ったのは悪い)

 そして俺は——

 

「疲れたぁー」


 という一時的な感情によって俺は倒れ込んだ。

 そして、疲労により遠のいていく意識の中、俺は1人の女の子を思い浮かべていた。

 彼女は確か……


         *


「っあ、起きた?」


 目を開けると、そこには銀髪の美少女がいた。

 背丈は中学生2〜3年生くらいで、推定150後半位。

 桜色の唇からは、俺に向けての声がけがあった。

 彼女の、ゆらゆらとなびく銀髪は綺麗で、俺はその姿に惚れていた。

 学校では絶対人気者の子。

 そんな可愛い子が、天界で初めて会う人(?)って嬉しいな。 


「天界に来たばっかでびっくりしてるね。ここの説明……いや、まずは自己紹介からするね。私の名前は『メティル』。さんとか敬語はいらないよ」


 ミリアが話を続けていく。


「ここ天界は、神、悪魔、妖怪、モンスターなどがいて、強さとかは簡単には古くからいる古参の奴らが強いよ」 

 

「なんか、ゲームの世界みたいですね」


 俺は、思い立ったことをそのまま口にする。まさにオタクの考え。

 すると、ミリアは不思議そうに首を傾げ、こう告げた。


「ゲーム? なにそれ」


 ゲームについて全然知らないようだ。

 以外と田舎者なのかも知れない。

 そもそも天界じゃゲーム自体ないのかも知れない。


「天界じゃゲームって無いんですか?」


そしてメティアは今更思い出したのかの様に言う。


「あー。あと一つ、ここ天界で地界の話をするのは禁忌タブー、ダメだからね?」


 天界、以外と厳しいルールがあるな……

 地界ではルールを破ると何か罰が与えられるけど、天界ではどうなのか。

 なぜその事について話してはならないのか。

 いや、それよりも破ってしまったのかもしれないから、禁忌タブーを破ると何が起きるのかを聞いてみないと。


「地界の事を言うと、どうなるんですか?」


 まずは自分の事で聞いてみる。

 僕はそう聞くと、ミリアは急に笑い出した。 


「そんな事を言うの、君が初めてだよ!」

 

 初めてなのがこれって、凄い特殊。

 一応、聞いてみる。


「そうなんですか?」


「そうだよ?」


 少し、脱線してる気がするな……

 メティルは言う。


「ごめん、脱線しちゃったね。 じゃあ言うよ?」


「ゴクリ」


 これからの人生、何があるのかわからないが、恐怖で唾を飲み込む。


「えっとー、それ相応に合った罰があるよ」


 罰かぁ。少し嫌な響きだなぁ。

 流石にそんなもので死ぬわけじゃ無いよね?

 だってそんなの初見殺しだから。

 無理に決まってる。

 初回は大丈夫のはず。

 だけどここは天界ルールもクソもない。

 神の前では息をしただけで死かも知れない。

 それに、登山中に死んだ連中も、ここでルールを破って死んだのかも知れない。

 真相は定かではないが心配になったので、俺はミリアに質問をする。


「今回の場合は大丈夫なんですか?」


 手を胸に置いた状態のまま僕は立っている。

 だが、なぜかその手は震えていた。


「大丈夫」


 安心から手を胸から下ろした。

 しかしそこには手など無かった


「もう、手遅れだから」


 手がドロドロと溶けていく。

 手の皮膚、至る所が痛い。


「あー腐食と猛毒みたいだね」


 天界に来たのに死ぬのか?

 いや、まだ死ねない!

 僕は絶対に神に願いするんだ。

 この世界を根本から治してもらうんだ!


「あの! 治す方法は? いや、直せよ!」


 自己中だな。

 これだから、学校も不登校になったのだろうか……

 ただただ生きたいがだけに放ってしまった身勝手な言葉。

 俺の質問に、ミリアは——


「……ない」


 その言葉で、俺は死を覚悟した。

 いや、死にたくない。

 こんな所で何故死ねる?

 理由などない。

 だがこの腐食で、いたるところが溶けている中治す方法が見つからない事が発覚し絶望する。

 でも、諦めることは出来ない…


「どうしてさ! あぁぁ!」


 咄嗟にミリアに聞くが、今そうしているうちも、手からは血が噴き出し、激痛が走っている。

 治す方法がないことになぜか腹が立っている。

 本当自己中極まりない。

 いや、自己中を極めた最終形態な気がする。


「神の力だからだよ」 


そうこうしているうちに、左肩が外れた。


「うあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!」


 痛みのあまり叫ぶ。

 ミリアはこちらを見ようとしない。

 痛い、苦しい、怖い、辛い。


「もうなんなんだよ俺の人生は!」


 自分の人生に腹が立ち、自分に怒る。

 自分に怒るっておかしいよね。

 俺はおかしいんだよ。


「しょうがないよ。これもまた運命、君が許可するならここで楽にしてあげるけどどう?」 


 運命ってなんだよ。

 痛いのは嫌だ。

 でも、死ぬのはもっとやだ。


「大丈夫、俺は絶対に死なないから!」


 本当は全然大丈夫じゃない。

 ただ、強がっている。

 変なフラグ立てちゃったな……

 そう思い僕は苦笑した。


「頑張って」


 その言葉を胸に、僕は生きる事を決意した。


「おうよお………」


 腐食で首が落ちた。

 どうやら、ここまでらしい。


(死にたく無い!)


 心の中で強く念じた。

 痛いよ辛いよ悲しいよ。

 お父さん、お母さん。ごめんなさい。もう、貴方方の顔を拝む事は出来そうに無い。

 楓、ごめん。

 首から滴る血が吹き出ながら、そんな事を考えて居た。

 そんな中、ミリアは少し嗤っているように見えた。

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