第41話 金の夢と黒い埴輪

 「ご相談なのですが、ドグー星の開放に力を貸していただけいけませんか?」


 新たにマカイゴールドとして、俺達の仲間になったグー子さん。


 ゴールドパンプキン城にある円形闘技場での訓練の後で俺達に尋ねる。


 「俺達、軍隊でもあるのでこっちが動ける条件を満たすならかな?」

 「こっちから先に殴り込んだらただの侵略行為よ、ヒーローとしてはアウト」

 「そうですよね、私達の力は無暗に振るっちゃいけませんよね?」


 俺達の答えに落ち込むグー子さん。


 此方に食ってかからないのは、自分でもわかっているからだろうか?


 故郷を悪に侵略され、追い出されたと言う境遇は悲惨だ。


 母星を取り返したいだろうし、こっちもできるなら力を貸したい。


まあ、地球に帰化したなら地球で平和に暮らしてもらいたくもある。


 「ただ、相手が攻めて来たなら相手の本拠地を叩きに行かないとね♪」

 「だな、ヒーローとしても王国軍としてもそれなら動ける」


 同盟相手の地球を侵略に来た敵。


 その本拠地は、ゴートランド建国の英雄の末裔達の星。


 地球を守り、英雄の末裔に報恩すると言う大義名分が立たねば軍は動かせない。


 「な、なるほど! 嘘も方便ですね!」

 「いや、それは違うからね?」

 「そうよ、それに敵の規模や戦力とかあんたの実力とか考えなさいよね?」

 「はう、胸が痛い! 戦闘訓練頑張ります!」


 グー子さんの戦闘力は、俺達もだがまだまだ練度が足りない。

 

 ヒーロー高専へと編入はできたが、学校での訓練成績もまだまだだ。


 「でも、そうやって助けを求められるのは美点よ♪」

 「あ、ありがとうございます♪」

 「そうそう、今は鍛えて来るべき時に備えよう」


 勇子ちゃん、人の褒め方が上手いな。


流石は俺の愛するレッドだ。


 グー子さんも、勇子ちゃんの言葉に納得してくれたようで良かった。


 「そう言う事で、ランニングと筋トレとストレッチに技の稽古よ♪」

 「嫌そうな顔をしないでくれ、生き残り強くなるためだから」

 「ヒーローってやっぱり、体育会系なんですね?」

 「体育は大事、生き物は体が資本よ♪ 鎧ランニングからね♪」

 「ぴえ~~~~んっ!」


 勇子ちゃんとグー子さんは変身ブレスレットを操作して、金属鎧を纏う。


 俺も同じく兵の訓練用の鎧に身を包み、三人で闘技場内を走った。


 「ほら、サンライトヒール!」

 「勇子ちゃん、回復魔法でグー子さんの筋肉痛とか無理やり直してる!」

 「ついでに身体能力もアップよ、仲間は死なせないから!」

 「ありがたいですけど、赤星さんは厳しいです!」


 グー子さんがへばる度、勇子ちゃんが回復魔法を掛けて治す上に彼女の筋肉を鍛える。


 「進太郎も聞いて、私のアメリカのお祖父ちゃんの家が昔壊滅した時の事」


 ランニングを終えて座る中、。勇子ちゃんが立ち上がり俺達に過去を語る。


 「大事に世話してた牛や馬が、ヴィランの所為でもう無惨に殺されたの! その時の私の力じゃ、何も守れなくて助けられなくて逃げてボロボロ泣くだけで! 私、そう言うのはもうごめんなの!」

 「……ごめん、助けに行けなくて!」

 「日本にいた進太郎が悪いわけじゃないわよ、馬鹿~~っ!」


 勇子ちゃんの感情の爆発に感化され、俺も泣きだし立ち上がり彼女を抱きしめた。


 「ぴええええっ! 私、自分だけが不幸だと思っててごめんなさい~っ!」


 グー子さんも号泣した。


 俺達三人は、泣き止むまで五分ほどかかった。


 「ごめんなさい、感情が抑えきれなかったわ」

 「良いよ、それは俺が抱き止めるから。 むしろ、俺に抱き止めさせてくれ」

 「お二人共、凄い強い絆で結ばれてるんですね」

 「まあね♪ さて、訓練では泣けるときに泣きましょ♪ 実戦じゃ、そんな暇はないし泣いても役に立たないからね♪」


 勇子ちゃんが微笑む。


 それは、グー子さんに向けられた笑顔だが美しかった。


 グー子さんは感動したのか、また泣いた。


 一週間後、グー子さんはすっかり筋肉質になっていた。


 「おい、土器野さん転校してから急速に筋肉付き過ぎじゃね?」

 「女子らしさが消えてる!」

 「土器から鉄器に進化してるわ!」

 「皆さん酷いですよ、グー子は可愛い宇宙のアイドルです♪」


 俺達との訓練で鍛えらえたグー子さん。


 マッチョになっても、クラスの連中に可愛さをアピールする。


 「ノットアイドル、ユーアー筋肉!」

 「何処で改造されて来たの?」

 「赤星さんと特訓しました♪」


 素直に答えるアイドルならぬ、マッスルになったグー子さん。


 「ちょっと筋肉が育ち過ぎたかしら?」

 「勇子ちゃん、訓練後の回復魔法の掛け過ぎだと思うよ?」

 「訓練の後で振舞った、魔界メシの所為だと思うわよ?」


 食事と回復魔法の相乗効果だと思う。


 急激にマッチョ女子になったグー子さんに引く、クラスの仲間達。


 家の学校、悪と戦う戦士の養成所だから強い方が良くね?


 グー子さんは、学校での戦闘訓練の成績も上がって行った。


 「まあ、促成栽培だけど生き延びやすくなったのは良い事よね♪」

 「そうだね、本人が喜んでるから良いよね」


 本人が力を求めた、こちらは与えたでウィンウィンだ。


 昼休みになった時、学校の各地で警報が鳴り響く。


 「おい、空を見ろ!」

 「何あれ、ハニワ?」

 「いきなり、黒くて巨大な埴輪が空から出て来たぞ!」

 「敵襲だ、戦える奴は出動しろっ!」


 謎の敵が現れて戦いに赴く、ヒーロー高専の生徒や教師達。


 「あ、あれはブラックハニワ! 殿下と赤星さん、出動しましょう!」

 「敵の事を知ってるの?」

 「もしかして、あれが君達の宿敵か!」


 グー子さんが、ゴールドへとマカイチェンジする。


 俺と勇子ちゃんも変身する。


 空の上の黒い埴輪の群れ、仲間を信じるなら敵だ!


 俺達も校舎を飛び出すと、埴輪達が目からビームを地上へ放つ。


 地上のビームは街の建物に張られたバリヤーで弾かれ、道路や車などに当たる。


 ムーンライザーやバーンマッスルなど、巨大ヒーロー達が飛び出し交戦を始めた。


 「良し、俺達もロボで行くぜ!」

 「パンプキンオーとリュウギョオーも来たわ!」

 「私は、リュウギョオーですね!」


 俺とレッドはパンプキンオー、ゴールドはリュウギョオーと別れて乗り込む。


 ゴールドの初陣は巨大戦から始まった。


 「行くわよナイト! 私達の昼休みを邪魔した罪は重いわ!」

 「ああ、パンプキンファイヤーだ!」


 俺達はパンプキンオーで空へと上がり、必殺の熱線砲をぶっ放す!


 「ゴールドさん、頑張りましょう♪」

 「ありがとうございます、シルバーさん」

 「何なのでありますか、あの敵は?」

 「埴輪は食べらませんよね、残念です」

 「あれは私達からドグ―星を奪った敵、ブラックハニワの侵略兵器です!」

 「イエティブリザード、発射であります!」


 リュウギョオー達の会話はパンプキンオー側にも伝わる。


 こっちが熱線砲を撃つと同時にあっちは氷の竜巻。


 熱と冷気のダブルパンチで粉砕できるはずだった。


 「マジか、これで俺達がゴールドの星の奪還に協力する理由ができた!」

 「おば様に予算おねだりしましょう♪」

 「いや、家の国庫気にしてくれよ?」


 パンプキンオーとリュウギョオーの二大戦力を投入して挑む巨大空中戦。


 俺達の必殺武器で粉砕したのは敵の外部装甲のみだった。


 黒い埴輪が砕けて、中から弥生時代風の巨大な憤怒相の黒い武人が現れる。


 黒い巨大武者が雄叫びを上ゲ、腰から剣を抜いて襲い来る。


 「パンプキンオー、援護します! ドグ―ビット、発射です!」


 ゴールドが操作し、リュギョオーの足から小さい土偶型のビットが射出される。


 ドグ―ビットが頭部から音波攻撃をして、敵の巨大武者の動きを止める。


 「今だレッド、決めようぜ♪」

 「ええ、私達の必殺剣でぶった切るわ♪」


 俺達はパンプキンオーを操作し、必殺の武器を召喚する。


 「殿下の、もとい伝家の宝刀の出番ですね」


 ブルーがダジャレを言いかける。


 「やっちまいやしょう♪」


 イエローはノリノリだ。


 「パンプキンブレード、エネルギー満タンなのだ♪」


 グリーンが何時でも必殺技で行けると伝える。


 「んじゃ、二人で行きますか♪」

 「ええ、ウェディングケーキを切る練習よ♪」

 「「天下抜刀・大成敗っ♪」」


 俺とレッドが同時に機体を操作すれば、刀身に黄金の炎を灯した日本刀を大上段に構えるパンプキンオー。


 パンプキンオーから繰り出された必殺剣は、黒い武者を一刀両断したのであった。


 俺達マカイジャーを含む地球のヒーロー達に、宇宙から来たブラックハニワと言う新たな敵が追加された。

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