第12話 声の先にあるもの

早速始まった秋の鍛錬。



この台の物語は、巨体の山男が熊や猪と友達になり、全国の山々を旅する物語だ。

激アツ演出は、山男群。

リーチ中に発生すれば期待値7割の是非とも取っておきたい演出だ。




『本当、これ打ってると人間界にいた時の事を思い出すなあ。』


鍛錬しつつも、どすこいストーリーで一日10万飲まれて母親から死ぬほど怒られた事を思い出す秋。



母ちゃん元気かなあ、俺がまさか死んだ後パチンコ台の世界で生きてるなんて思わないだろうなぁと寂しくもなる秋。


でも、これはディスを取り戻す為の鍛錬だ。

セツナは秋が集中していない事を見抜いている。

本来はどつきたい所だが、自分自身で気づくものだと考えるセツナは見守るに徹する。



秋は見守ってくれるセツナの様子を見て、

あ、これ集中出来てなかったの見破られてるやつだと確信した。

セツナの目が本気だからだ。



集中集中!と頬を叩く秋。


そうだ、この台はあくまで練習台。

相手は神様同然のチート。こんなとこでひよってたらディスは助からない。



しかも俺は負けたら地獄行き確定。


そんな事あってはいけないのだ。


俺は転生して、次の人生無双する。

女の子沢山抱いて、大金持ちになって女の子沢山抱いて、女の子にモテて沢山抱いて、

美味しいもの食べて女の子沢山抱いて、俺の事コケにしたくそ元上司ぶっ倒して元カノの目の前で元カノより可愛い女の子とたくさんの子供と一緒にいるとこ見せつけてやるんだ...。


煩悩の塊というかもはや性欲の塊だった。



俺はそんな盛ってるキャラじゃ無いだろとツッコミ役のいない現状に悲しみを覚えつつ、引き続き打ち込む。






すると、台の様子がおかしい。



セツナは秋に叫ぶ。


『おい秋!お前今何を考えてた!?台の様子がおかしいぞ!!』



『え!?!俺集中して打ってたけど!!』



秋はセツナに嘘をついた。ごめんよセツナ。



セツナは続けて秋に伝えた。



『その赤い光は何か新しい力を得る兆候なんだ!さっき秋が考えてた事をもう一度良く考えてみろ!』



『ええぇ!?わ、わかった!!』




まじかやばいやん、と秋は思った。


兎にも角にも新しい能力が入るなら、どんなエロい事も考える。



すると、赤い光か大きくなり秋を包み込む。



『秋!!!』



セツナは赤い光に包まれた秋の安否を心配している。



『なんだここ...この前、能力手に入れた時とは空間の雰囲気違いすぎるだろ...』




秋はこの物々しい空間の雰囲気に若干の恐怖を覚える。


『おい、そこのお前。』


野太い男の声がした。


『へ?だ、だれですか?』




秋はあまりの野太い声に変な声が出てしまった。


『儂はこの山男どすこいストーリーの台の中にいる能力を具現化したものだ。即ちお前の能力とも言っていいだろう。あまりにもどすけべな事を考えているから、女に縁のない儂はドキドキしてしもうた。お前のあまりの色欲の大きさに、儂が共鳴してしまった訳だよ。』



『へ、へぇ、即ち貴方は俺自身って事か、すげえな...。』



野太い声をしているが相当ウブな感じだ。

秋は正直戸惑っている。



『まあ、そんなに怖がらなくてよい。

儂がお前に使って欲しい能力は“シキヨク”だ。』



『“シキヨク”?エロいことして欲しいって事か...?』


『この“シキヨク”の能力発現条件は即ち“エロ”、これが発現されると魂の大きさが一時間だけ10倍にも膨らみ、球もヘソに直ぐ入る“賢者タイム”が5分間続く。また、相手を30分ほど酩酊状態にも出来る。優れものの能力じゃろ。』



秋はその説明を聞き、ある事を思いつく。


『そうか!セツナが伝授してくれる“ドンヨク”と効力は似てるけど、組み合わせれば当たりも早く引けるし強力な補助能力だな。』



『さあ、秋!今こそ“シキヨク”を使うのじゃ!!』



『おう!いくぜ俺の新しい能力!“シキヨク”』



呪文を唱えた瞬間、赤い光は消えて台の前に戻った。


そして、心配しているセツナに秋は能力を得た事を話す。


『セツナ、俺さ新しい能力を得たんだぜ!見ててくれ!』



セツナは驚愕していた。


秋の魂の大きさが先程とは比べ物にならないくらい大きくなっている。


しかも、打つ球打つ球全てヘソに入っていて集中も出来ている。


『秋、一体何があったの...?でも凄く逞しくなってる気がするよ。』




『だろ!見てろよセツナ!今大当たりを引いてみせる!』



秋は自分の願いを改めてハンドルに込める。



すると、ハンドルに虹色の光が灯る。


秋は能力の発現が出来ると分かった。


『いくぜ!“エストライセプス!”

“ジャッジメント!”』



呪文を唱えると、保留が行きなり赤くなった。そして、リーチ時に激アツ演出の山男群が出現した。

大量の山男が走る映像に、少々暑苦しさは感じるが、やはり激アツ演出は脳汁が出て良い気分だと秋は思っていた。



そして、無事に大当たりを引く事が出来た。


さらに、テンパイも奇数テンパイに昇格した為、無事に確変をとる事も成功したのだ。



『よしっ!確変大当たり!!』



秋はガッツポーズをする。



セツナは無事に大当たりを取れた秋に向かい能力の授与を行う。


『秋、無事に大当たりを引いたから約束通り“ドンヨク”を授けるよ。』



セツナは秋の手を触り、呪文を唱えた。


『“ガランガランセッティイレテモシンヨウナイカラオキャクサンハタテンニイク”』



秋は、セツナは何か人間界のパチ屋に恨みでもあるのだろうかと苦笑いをする。



『うん...!これで能力の付与は完了した。

次からは使える様になるよ。秋の力になれる様に。』



そういうと、セツナは秋の頬にキスをする。


!?



秋は顔を真っ赤にしてセツナを凝視する。




セツナはそんな秋にしてやったりの顔だ。


『いつも自分ばかり余裕な顔してるから...

私はいつでも臨戦体制だから忘れないでね。』



そういう部分も含めてセツナはある意味最強の女剣士なんだと秋はドキドキが止まらなかった。



続く


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パチンカーが異世界行ったら1/319の確率引いて人生確変∞モード突入!! ぽろん @091121

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