第9話 黒い影とセツナ
いよいよ、セツナと対決の日だ。
秋はディスから貰った激ヤバジュースのお陰で疲れは吹き飛んでいたが、色々文句を言わなければならないので早めに起きた。
『おい、ディス!昨日のジュースはどういう事だ!ぁ...?』
ディスの寝ている筈の部屋に行ったら、なぜか居たのは...セツナ!?
『...はい?何をしてらっしゃるのセツナさん...?君は枯れ専って設定だったっけ...??』
なんで対決の日に敵となる女が神様のベッドで寝ているのか理解不能だった。
秋もどう突っ込んだら良いか分からず呆然としている。
『んぅ...うるさいぞ...何をそんなに騒いでいる...?ってなんで私こんな所で寝てるんだ!?』
セツナも何故自分が寝ていた宿屋ではなく、今日戦う敵である筈の秋のいる寝室で寝ているのかわからなかった。
『おい!お前、まさか能力を使って私に奇襲を図ろうとしていたのか!!許さぬぞ、このゲス者が!!』
セツナは起きたばかりだが、怒り心頭だ。
能力で剣を出し、秋に斬りかかろうとする。
『セツナ、辞めろ!!俺はそんなハレンチな事はしたいと思ったけど、思うにとどめた!!
そもそも転送能力は俺にはない!!』
『どっちにしろ変態野郎には変わりないから斬る斬るkill!!』
おっと、本気にやりにいくスイッチが入ってしまっている。
剣を一心不乱に振り回すセツナ。
秋は全速力で逃げる。
秋は、俺は昨日あれだけの偉業を成し遂げたのに変態野郎の烙印を押されてこのまま消えてしまうのかと情けなくなっていた。
というか、ディスはどこに行ったのか。あいつは本当にふざけた奴だ。セツナを転送したのもきっとディスだろう。何がしたいんだよと秋は逃げつつも遠い目でそんな事を考えていた。
すると、秋の前にいつもの飄々とした神様が盾になってくれた。
『セツナ、一回落ち着くのじゃ。』
ディスが現れた。
セツナは落ち着くはずもない。
『ふざけるな!私に不埒な事をしようとしたらその男、死罪だ!!私が今ここで処刑する!!』
ディスはやってしまったなぁという表情でセツナと秋に事の顛末を説明する。
『いいか、秋は何もしとらん。儂がお主をこの部屋に転送したのじゃ。これは本当に申し訳なく思っておる。』
珍しくディスにしては神妙な面持ちで謝罪をしてきた。
秋も何故こんな事になったのか、理由を聞かないと納得はできない。
『ディス、なんでこんな事したんだよ。俺はまだしも、セツナは女の子だ。流石にやって良い事と悪い事の判別は付けるべきだと思うぜ。』
『お、女の子...///』
セツナは秋が言った『女の子』というワードに照れてしまっている。
自分の事を殺めようとした相手に優しくできる男なのかと少々のときめきを覚えてしまった。が、それは秋にばれたくはないので表情に出ないように自分の手を抓る。
ディスはそんな様子は一旦流す事にして、説明を続ける。
『儂は遠隔で特定の人物が今、どこで何をしているのかを見る事が出来る能力がある。それは儂が休息している時も使える。
もしも秋やセツナが逃げようとした際や、何か不吉な予感などの異常な念を察知した時は対応できる様にしておったのじゃ。まあこの時点で人間界だったら盗撮に当たるよねごめん。ところがじゃ、セツナの方から殺意の様な異様な念を感じて儂は起きた。セツナの念ではない。誰かがセツナに明確な殺意を持って近づいていたのじゃ。もちろん秋が明確な殺意をセツナに持っていない事は知っておる。それは儂が保証する。で、急いで寝ているセツナを儂の部屋へ転送し、部屋に殺意の念を持った者が入れぬ様に強力なバリアを貼っておったのだが...殺意のない秋がたまたま入ってきてしまった訳じゃ。儂はセツナを狙う者が、セツナの念を察知しない様に周辺範囲にも多めに念察知妨害バリアを貼り付けて、終わって部屋に戻りセツナを起こそうとしたら、この状況じゃ。』
『私が狙われてた...?くっ、そんな殺気も察知出来ないなんでまだまだ未熟だっ...。』
セツナは一通りの話を聞き、怒りもおさまった様だ。ただ、自分が敵から狙われている事が察知出来なかった事に激しい羞恥心を感じていた。
『いや、儂は神様じゃし。近づいてたと行ってもセツナと敵の距離はその時100キロ以上はあったから、まだ若いお主にも察知する限度があるじゃろ。気にするでない。』
秋は、ディスの能力の高さに改めて“こいつは本当に神様なんだ...”と実感していた。
『セツナは、狙われる奴に覚えがあるやつ居るの?』
秋は何か自分にできる事があれば、彼女を助けたいと考えていた。
『私を狙う奴...覚えがあるのは居る。
“ダークサイドモンスターズ”の幹部・バリアンだ。あいつは姑息で味方がやられてもずっと笑ってるクズの様な化け物だ。私は秋たちと別れた後、一度バリアンに遭遇している。その時はバリアンの異様な殺気にこのままだと秋たちと戦う前にやられてしまうと思ったから、遠地テレポートの能力で逃げて、そして逃げる際にあいつらが苦手なアイテム“エラーカード0732”を使ってバリアンの動きを1日以上は止めたはず...。正直かなりの距離まで逃げたからもう追っては来ないと達観してた...情け無い話だよな。』
秋は、その話を聞いて思い出した事がある。
バリアン...秋が前世で“ダークサイドモンスターズ”を打ってた際に、雑魚リーチで出てきてた期待度20%の敵のキャラの名前だった。
雑魚リーチから発展で激アツのセツナ出現や金保留が絡んでも外れる事があるので、秋にはある意味因縁の深い相手でもあった。
秋はセツナにある提案をする。
『セツナ、俺とのバトルでもし俺が勝ったら、
バリアンを一緒に倒しに行こう。』
セツナはその提案に不安気な様子だ。
『だが、あいつの殺気は私が前に戦った“ダークサイドモンスターズ”達の比ではなかった!
秋、お前でも倒せるかはわからないんだぞ!
私は...臆病者だ。死にたくないっ...』
セツナは自分の正直な思いを秋に吐露した。
『大丈夫だ!俺だって死にたくねえ!
いや、なんなら俺一回別の世界で死んでからここに来てるから、ある意味達観してるんだよな!でも、俺には負けない力があるから、セツナを守る。そして俺は来世で無双人生おくんの!バリアンだからババアンだか知らねえけど、そんな魔物には俺の無双人生邪魔させないっての!なあ、ディス!!』
秋はセツナを安心させる様に強く強く言葉を話した。
『ほぅ、昨日までの泣きべそが嘘の様じゃのー。でもそれでこそ秋じゃ。儂の見込んだ男じゃこんな早く死んだりせんよ。セツナ、ここは一回秋と闘ってお主も安心するのじゃ。』
秋とディスの言葉を聞いたセツナは、最初に会った時と同じ様な強気な目を宿した。
『あぁ、分かったよ。そしたら秋、早速私と勝負してくれ!!』
『あ、待って!その前に俺たちパジャマだから着替えてから...後、朝飯食べようぜ。』
秋にしてはごもっともな事を言ってくれた。
ディスも賛同する。
『そうじゃな。今は儂が念察知妨害バリアを貼っておる。今日中はバリアンもこの場所にセツナがおるとは分からんはずじゃ。とりあえず朝ごはんを食べて落ち着くかのぉ。』
そして、3人は朝ごはんを食べ(セツナはパン、秋は白ご飯、ディスはアサイーボウルという三種三様)、闘いに備えて集中する。
俺はセツナに認めてもらって、バリアンを倒す...!!
秋は神妙な面持ちで精神統一をするのであった。
続く
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