第二章 秋vsセツナ編

第5話 女剣士セツナ

『疲れた...ようやく隣町に着いたよ』



あの大草原からこの隣町まで5キロほど歩き、

日頃パチ屋で座ることしかしない秋は疲弊していた。



『でも、モンスターが現れなかったのは救いだわ...。普通RPGとかって敵が出てナンボなんじゃないの?』


『儂がいるからじゃろ。一応神様だからね。オーラもそれなりに放ってる訳じゃ。わざわざ強い者に立ち向かうモンスターはいないんじゃよ。』



『え?そしたらディス、お前いれば百人力じゃんかぁー!!』


喜ぶ秋に、ディスはため息を吐きながら話し始めた。



『何言っとるんじゃ。儂がお前とおるのは今日で最後じゃ。儂はまた明日からパチ屋の店員として現世で働いてくるからのう。能力も覚醒したし、後は1人で頑張りなさいな。』



秋はそれはそうだよなぁといった感じで落胆していた。



『1人だけだとさすがに心細いから仲間が欲しいんだよな...。例えばカワイイ女の子とか!

でもこのパチンコ台に可愛い娘って言ったら...いるじゃん!女剣士セツナ!胸もボインで顔も美人!あの子の登場はラスボス戦においての激アツ演出の一つだったはず...。ただ、セツナは修行ばっかりしてるし堅物の娘だから、俺みたいなパチンカスの仲間になってくれるわけがねえな。』



秋は現世ではモテないわけではなかった。

コールセンターの管理者時代は一応部下の彼女もいたが、結果的に秋を陥れた上司にNTRされると言う救いようの無い結末になっていたのだ。




『あー...セツナ居ねえかな。』











『私の事を、呼んだか?』




ん?




『えぇっっ!?君はもしかして女剣士セツナ...!?』




まさかの本人登場に秋は驚きすぎて声が震えている。



『そうだが、なんだ。私と闘うために探していたのか?』



セツナの大きなFはあるであろう豊満な胸、

そして二重のブルーアイズに、長い睫毛。

サラサラとした金髪からは石鹸のようなフローラルの様な香りもする。


だ、抱きたい...。



秋はもうセツナの声は聞こえておらず、

ただただセツナの姿を見て興奮していた。


そんな秋の様子を見ていたディスは呆れて、

秋とセツナの間に割り込んだ。





『おほん。これはこれは女剣士セツナ殿。

儂の連れが失礼な態度で大変申し訳ない。

儂は運命の神ディスじゃ。こいつは秋で、

訳あってこの世界のラスボス“ダークサイドモンスター”を倒す旅に出ておる。

じゃが、儂はこの後別の世界に行かなくてはならない。そしたらこの秋も1人になり、戦力としては心細い。


出会ってすぐに頼むことではないのは百も承知じゃ。じゃが、セツナの力は儂も目を見張るものがあるのでお願いじゃ。


秋と一緒にダークサイドモンスターの討伐に行ってはくれぬか...?』



もはやどっちが主人公かわからないセリフを話すディス。本当に君今日で退場なのかい?




秋は、この物語の主人公は自分だと思い出しセツナに懇願する。


『今の今まで不躾な態度大変失礼した。

俺は黒羽秋。訳あってこの世界に来た者だ。

さっきのディスの言う通り、俺1人だとダークサイドモンスターは倒せない。だけど、セツナ君がいればあいつも倒せる!君はこの世界最強の女剣士だ!君の力さえあれば俺も頑張れる...!だからセツナお願いだ、俺のパーティーに加わって欲しい...!!』



秋は土下座をしてまでもセツナを手に入れたかった。




セツナは暫く黙り込んだ後、秋に自身の境遇を話し出す。





『この世界はダークサイドモンスターのせいで、人々は笑顔で暮らせなくなり、食糧もモンスター達に取られて貧困も進んでいる。

そんな中でもダークサイドモンスターを倒そうとしているのが私を含めて数人はいた。

でも、みんな...やられてしまったんだよ。


私ですら、ダークサイドモンスターに恐怖を抱いて逃げてしまった。仲間を見捨てて...。』





秋は思い出した。

そうだ、確かに激アツ演出でセツナの登場は熱いけど、そもそもこの子は仲間を見捨てた事を後悔しながら苦しい思いをして生きているって設定があったな...。


セツナはその苦しみを乗り越えて、

最終戦のボスと戦い、最終的にはセツナの一撃でボタンプッシュ成功で大当たりだったはず。


秋はセツナの悲しい生い立ちや境遇を思い出し、先ほどのやましい気持ちを抱いた事を激しく後悔すると同時に、彼女の気持ちが心配であった。


セツナはそんな秋の心配そうな顔を見ながら、淡々と話し続ける。


『そんな私でも良いのであれば、秋、貴様に協力はしよう。


ただし条件がある。』





『条件...?』



『あぁ。私とパチンコの勝負をしてくれ。

私に勝ったら、秋、君の仲間になろう。』




『はいぃぃー!?そこ剣じゃなくてパチンコなんかい!?』



思わず突っ込んでしまう秋。


それを見たディスは秋にひそひそ声で伝える。



『この世界、パチンコ台の中の世界だから勝負事もパチンコにはなるんじゃ。

ただ、今回の女剣士セツナは魂の大きさが秋の10倍はある。非常に強いのは確かじゃぞ。』






『ええぇ...。魂の大きさってレベルアップで大きくもなるの...?』


秋は流石にレベチなセツナとの戦いに備えたいと考えていた。



『レベルアップすると、攻撃や魂の大きさも大きくはなる。ただセツナレベルまで魂を大きくするには20年はかかるぞ。』



『負けゲーじゃねえか...。』


秋は20年という言葉の重みにまた落胆した。


「じゃが、勝つ方法はある。お前の能力“エミトライセプス”これを発現出来れば勝利は濃厚じゃ。ただ、それがどのタイミングで発現するのか、そして、さっきの儂との戦いで魂の大きさも小さくなっていて危ない状態じゃ。

一度宿で休んで魂の大きさを元にしてから、

修行するに越した事はないと思うぞ。』



ディスのアドバイスを受けて、秋はセツナにこう言った。



『セツナ、今日俺、ディスと戦って

魂の大きさも小さくて戦いにならないんだ。

君とは万全な状態で戦いたい。


だからどうだろう、3日後の17時、この場所で戦わないか?』



セツナは真面目な性格なので、秋の申し出を受け入れた。


『いいだろう。では3日後の17時にこの場所で。良い戦いが出来ること、楽しみにしているよ。』




そう言うと、セツナは颯爽と立ち去った。





『どうしよう...。ディス、お前今日で人間界に戻るんだよな?あと3日だけ修行に付き合ってくれねえか...?なんでもするから!』




秋は流石にディスに修行を頼んだ。


ディスは不敵な笑みを浮かべた。


『なんでもする...?』


秋はそのディスの様子に不安を覚えるのであった。



続く

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