第2話 蓋が開く時

☆(鴨川佐奈子)サイド☆


どこのどいつなのか。

誰なのか全く分からないが私の大切なイッチーを裏切ったクソバカが居る。

私は名前も知らないその馬鹿野郎を許す気はない。


口が悪い?性格が悪い?

そんなもの知った事か.....。

私の大切なとても大切なイッチーをなんだと思っているのか。

絶対に許さないという怒りが湧く。

そのクソアマには天罰を降らせてやる気で動こう。


「にしても驚いたよ。一ノ瀬と知り合いなんだって?遠野ちゃん」

「はい。私はイッチーをずっと探していました。ここまで登り詰めたのはイッチーのお陰なんです」

「俺は何もしてないんだが.....」

「イッチー。そうは言っても私はイッチーのお陰って思っているよ」


私はイッチーが居なかったらアイドルなんて仕事は(クソくだらない)と思っていたし.....私はイッチーには感謝しかない。

イッチーが全てだ。

私は日本全国でライブをしてイッチーを探した。

その年月は4年もかかった。


だけどこうしてイッチーと再会できた。

私はイッチーを見ながら笑みを浮かべる。

するとイッチーは「でもお前と知り合っていたのは.....たった半年だったぞ。なんでここまで.....」と聞いてくる。

分かってないなーイッチーは。


「その半年で私は.....絵を描く以外に世界を見つけた。.....だからイッチーは私の恩人なんだよ」

「な.....なるほど」

「私はイッチーの事.....大切にしたいって思うから」

「いやそれ告白か?」

「違うよ。イッチー。これは.....貴方を守るって事だよ」


言いながら私はイッチーを見据える。

そうだ。全ての運命は決まっているのだ。

イッチーは私が守るって決まっている。

そしてイッチーを最後まで愛する事が私の人生だ。

そんなクソバイタに負ける訳がないししかもありえない。


「.....ありがたいものだな。.....お前から愛されているなんて」

「私はイッチーしか目にないから」

「それは.....お前。ファンに失礼だな」

「う.....まあそうだね。それを言われると」

「ファンも大切にな」


そんな事をイッチーは言いながら私に微笑む。

私はそんな.....イッチーの優しい笑顔が大好きだ。

写真で見るのとは違うなやはり。

思いながら私はイッチーに笑顔を浮かべる。


「.....イッチー。浮気されたって聞いたけど」

「おい待てなんでそんな事を知っている」

「私の耳は地獄耳だから.....だからイッチーが心配」

「俺はまあ大丈夫だ。死なない」


「酷く傷は付いたけどな」というイッチー。

私はその言葉にギリッと歯を食いしばる。

やはりか。


イッチーの付き合っているクソ女。

私は絶対に許さない。

地獄に落ちしてやると思う。


「どうしたの?遠野ちゃん」

「.....いえいえ。何でもないですよ」

「.....そう?何だか深刻そうな顔をしているけど.....」

「私はいつもこんな感じですよ。普段は」


そんな会話をしていると「遠野さん!サインください!」と廊下から声がしてくる。

廊下にはかなりの行列。

何というか.....遠野に期待する眼差しをしている。

苦笑いを浮かべながら「いいよ!」とスマイルで接した。

そしてイッチーに許可を貰ってからサインを次々にし始める。


「.....人気者だな」

「.....そうだねぇ」


柔和な声。

そんな声に笑みを浮かべて営業スマイルを向ける。

待っていてね。イッチー。

直ぐに貴方の元へ帰るからね。

もうアイドルじゃないけど仕事は仕事だから。

これからはイッチーのお嫁さんだから肩書きは全て変わるけどだ。


必ずイッチーと結婚してやる。

そう。

あの日から誓ったのだから。

朝、私に声をかけてくれた小学校低学年時代。


あの頃から出会って半年で別れるまで。

いや今もずっと好きだけど.....イッチーが大好きだ。

だからその分裏切ったバイタは地獄の釜で煮られる様にしてやる。


絵を描く以外の世界を教えてくれた恩人に.....何ていう真似をしたんだ。

そう思いながら私はサインペンを握りしめる。

そしてニヤッと笑みを浮かべた。


いけないいけない。

スマイル、スマイルだ。

アイドルが暴言なんてありえない。

考えながら私はどんどんファンを捌いていった。

腑では.....地獄の笑みを浮かべながらだ。

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