第5話

 ジュリーはきゅうりが好きである。

 ジュリーの飼い主もきゅうりが好きなので、自分が食べる時には、ジュリーにもきゅうりを分けてくれる。

 それを見ると、飼い主のお母さんはいつも変な顔をする。

「犬のくせにきゅうりを喜んで食べるなんて」

 お父さんも変な顔で言う。

「やっぱり飼い主に似るのかな」

 ジュリーの飼い主はもうおじさんだけど、結婚はしていない。両親の家に、自分と両親とジュリーとで暮らしている。

 この家では、毎年、夏になると、南側と西側の壁に園芸用のネットを垂らし、それにきゅうりのツルを這わせて、グリーンカーテンを作る。

 だからジュリーと飼い主のおじさんは、夏の間、好きなだけきゅうりを食べることができる。

 問題はそれ以外の季節だが、おじさんはスーパーできゅうりを買ってくる。

 ジュリーと自分のために、今日のきゅうりは高かったなどと、たまにブツブツ言いながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る