第3話

 自分の腹がつっかえて、近所の家のフェンスの間を通り抜けることができなくなっていることに、トラはその日、気が付いた。

 ダイエットすべきだろうか。

 おそらく、そうなのだろう。

 なんとかフェンスから腹を抜いたトラが、忍び込んだ庭の隅に座っていると、後ろから誰かの声がした。

「お~い」

 ハチ割れ猫のハチだった。

 これから庭に入ってこようとしているハチは、フェンスの前で顔をしかめた。

「これ、狭いんだよね」

 ハチは人間が使う門から庭の中に入ってきた。

 門にも扉が付いているのだが、下の隙間が広いから、そこをくぐって入ってきたのだ。

「トラ、ドングリの家の人に煮干しをねだりに行こう」

 トラは自分に笑いかけているハチの姿を見た。

 特段太っているとは思わない。

 太っていないハチでも、このフェンスは狭いのだ。

「よし、行こう」

 トラはハチと一緒にドングリの家に向かった。

 庭にコナラの木があるから、この家は猫達にドングリの家を呼ばれている。

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