独身爛漫放浪記
あんちゅー
プロローグ
「癖になる甘噛みと自由人」
秋も終わりが見えてきて、肌寒くなってきた今日この頃。
毎年のように得体の知れない寂しさに襲われる。
元々人嫌いであり、なるべく人と関わらないようにしてはいるが、やはり曲がりなりにもちっぽけで弱い人であるからこそなのだろう。
これが人肌が恋しいと言うやつかと、やうやう首を縦に振っている。
この寂しさが襲ってくると、どうにもこうにもすることが出来ず、ただむざむざとその寂しさの遠慮ない甘噛みを許しているのだが、しかし、タチの悪いものでそれらの甘噛みは執拗に人の痛い所を深くほじってくるのだから手に負えない。
そういった時は酷く落ち込んで塞ぎ込む位の心持ちでいた方がいいと、経験上理解しているから焦りこそ無いのだが、それでもやはりこの寂しさとやるせなさはなかなかに心を疲弊させる。
ただまぁ、そんな時は改めて自分自身の甲斐性のなさや、容姿のブッサイクな様を思い出すことで逆に諦めもつくというもので、寧ろ妙なテンションになって来ればこちらのものだ。
例えほじくられて、向こう側が見えるのではないかと言うほどに深くなった傷口でさえ、高ぶるテンションに迸るアドレナリンのおかげで、ささくれ程度の気持ちに均され心穏やかになる。
何となくだが自分の弱者感が自分自身を肯定してくれているということで、見るものが見ればマズさを感じるであろうが、これは辞められない。
むしろ逃げ口上の負い目もなく、癖になって来ている始末だ。
さて、そんな訳で別段自分のそんな境遇を今更どうこうするつもりも無いのだが、近々友人が結婚するだなんだと言って多忙を極めている様を見るに附け、大変だなぁと他人事に思いつつも、はたと自らを顧みると何とも自由気ままなものであるなとも思ってしまった。
自由な時間も少なく、川の流れのように一所に停滞することの無い銭金。
そんな友人の境遇を目の当たりにし、後者は私自身の事にも通じるが、前者に関しては全くに縁遠いものであるなと思ってしまった。
まぁ、今後自身がどういった人生を辿るか分からないものの、自分自身のこういった境遇を嘆き苦しむのではなく、寧ろ有効活用しようと、そう思い立ったのが、この放浪記を書いていこうと思ったきっかけである。
それ故に独身と銘打ち、喜び勇んでこの文章を書き上げているが、もう既に半分ほど気が済んでしまい、続けられるかどうか不安になっている。
あわよくば、何か自分でも残すことが出来るものを。
無理せず、頑張らず、程々に続けられれば僥倖。
願わくは、お付き合い頂けると幸いである。
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