第15話 悠さんとの再会
何度思い出そうとも、息がつまり呼吸ができなくなる。
私にはそれが何の事か理解できなかった。
*
お通夜も告別式にも出ずに、一日中泣いて過ごした。
そうして、だんだん他の人達が日常に戻っても、私には戻る場所がなかった。
「お願い、少しでいいからご飯食べて」
誰かの声が聞こえた。 誰だろう
悠くんが迎えに来るまでここに居る。
最近来ないのはきっと風邪なんだ。
「早く治ると良いな」
そしたら一緒に学校行けるのに。
それからすぐに私も悠の後を追った。
どうやったのか覚えていなかった。
私はどこかへ帰りたかったんだよ 悠
*
うっすらと明るくなる視界
良く知っている天井だった
「・・・生きているんだ」
夢の中で自分がやったことを思い返していた。
幼い思考で
行き当たりばったりで
自分では何もやらずに
泣き事ばかりの
醜い人間が私だ
ベットサイドの目覚まし時計を見る。
昨日とは違う今日に来れただろうか
「よかった 明日になってる」
夢の続きのようで気分が落ち込んでた。
この世界に悠は生きている。
私はそれを確かめたくて部屋を飛び出した。
「陽菜どこいくの」
お母さんが玄関を飛び出す私を見て叫んだ。
「すぐ帰るから!」
うちの左隣が悠の家だ。
夢中でインタホンを押し続けた。早く出て!
不意にドアが開いた。
「ちょっと、うちのインターフォン壊さないでよ」
「あ、 ゆう・・さん?」
「おーおはよー昨日ぶりだね。どうしたのこんな朝早く」
「ええ・・と」
ちょっとまって。私は早くも混乱してた。
悠がいる世界へ帰れたんじゃなかったの。
「よく判んないけど、良いから入れば」
「いいの?」
恐る恐るそう尋ねると
盛大なため息をつかれた
「そんな顔してたら帰せないわよ、良いからはいった!はいった!」
「ちょっと!」
悠さんに右手を掴まれ私は彼女の家に入っていった
*
「へえ!もう一人のあたしに会えたんだ。その男の子バージョンのあたしに」
「そんなパソコンみたいに・・」
悠さんの家に入るのはこれで二度目だ。
かつて知ったるなんとかで、家事が下手な悠さんの代わりに私は二人分のお茶を入れた。
「サンキュ!やっぱり家事が得意な女の子って良いよね」
「さっきまでのあたしの中のシリアスを返してほしい」
「まあまあ」にしし
変な笑い声を上げて、彼女はソファーに深く座ってお茶を飲む。
本当に同じ悠なのかしら。信じられなかった。
彼女は可愛らしい猫の着ぐるみを着ていた。
「それ買ったの?」
「そう!可愛いでしょ」
まあたしかに可愛い。はっ、いけない
「それで何で家に連れ込んだの」
「だってそんな捨てられた猫のような顔してるんだもの。気になるわよ」
そっか あたしそんなに酷い顔だったんだ。
「酷い夢見たからかな」
「ひどいってどんな」
「うん。そう私がやらかした過去のことだよ」
「あの頭の悪い子ね」そうだけど
見れば見るほどこの悠は私が知っている悠とは違う。
「いや同じでしょ」
どういう事?
「いや、あたしは幼馴染だった陽菜の事が好き。いつまでも一緒にいたい。ほら同じでしょ?」ニヤニヤ笑いながらそう言ってる悠を見て、絶対違うって。
「悠こんなに軽くない!」
「軽いよ、陽菜が気が付かなかっただけだし。あたしと悠くんは性別が違うだけで、本質は全く同じだよ」
「じゃあ、あたしの事どう思ってる?」
「好きよ」
即答なの?
彼女は手を伸ばして私の背中を撫でる
「泣き虫なことも、怖がりなことも、お絵描きが上手いことも。だから守りたかった。全ての悪意から」
彼女を傷つけない同性として生を受けて、お近づきにもなれたし。
「うーん、なんだか騙されている気がする」
「陽菜は細かいこと気にし過ぎ」
ここは優しい世界
彼女を苦しめるものはいない。
金髪の先輩もいない
「うーん、やっぱりなんか違うと思うよ」
「陽菜は頑固だね」
「そうだね。いま気がついたよ」
「それじゃあ頑固な陽菜さん、学校行く準備がしたいんだけどいい?」
「今何時」
「そろそろ7時」
「ひゃあああ」
遅刻しちゃう。
なんだか大事なことはぐらかされた気がしたけど、もういいや。
今日と違う明日が来るように今夜もドキドキしながら寝ることだろう。
「じゃあ、またあとでね!」
「待ってる!」
この後、お母さんにめちゃくちゃ怒られた。
『夜討ち朝駆けはやめなさい』って
そんなの関係ないよね、だって幼馴染だし
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