青空の下
ごま油を引いたフライパン
青空の下
青空の下
登場人物
ユーストール
ユークレート共和国に住む青年。いつも通りだった毎日を送っていたある日、戦争の始まりを目撃する。
前置き
ナレーション
我々が普段、何気なく見上げる空。真っ青な日もあれば、白い雲漂う日もある。ある時は灰色の雲が空を覆い隠し、私たちに冷たい雨をもたらします。
そんな空に、花が咲くとしたら、さぞ美しいことでしょう。残酷なほどに。
今回は、青い空に咲いた花から始まるお話を、皆さんにお届けします。
本編
ユーストール
あの日、青々とした空に、花が咲いた。赤い花だった。ふわりとつぼみが咲いて、散った。残響を残しながら。黒く色を変えて枯れたそれは、無数の花びらを地上に落とした。
空には無数の飛行機雲が滲む。
途方からやってきた飛行機雲が境界線を越えたとき、戦争が始まった。
次の日も、次の日も、また次の日も、戦争は続いた。戦争は、僕らを置き去りにして進んでいく。家が崩れた。誰かが死んだ。そんなニュースが現実になったあの時、僕たちは、希望の見えない未来を空に託した。
花が咲き乱れる。
僕たちは、それを見守ることしかできなかった。
戦争が始まったあの日から、数多の飛行機雲と、咲いては散る花々が、僕らの見上げる空に色を加えた。
空を駆け抜けた鉄の矢は、君の頭上を飛び越え、飛行機雲を乱していった。そして、また一つ、花を咲かせる。大きな花が咲いた。イチイのような赤だった。すぐに枯れてしまった花から舞い落ちた花びらが、君の姿を、僕の瞳に永遠に閉じ込めた。
戦争は続く。ただただ無意味な日々を過ごすことを強要された我々は、呆然と、明日へと進んだ。
君の明日は消えた。私は明日を進んだ。
進んでいく度に、空に花が咲いていた。いくつの花が咲いただろうか。思い返しても、数えきることができないほど、たくさんの花が咲いた。そして散った。散って落ちたはなびらが、私の頭上に近づいたとき、鉄の矢が、はなびらを燃やした。
鉄の矢を放ったのであろう、大きな鉄の鳥が、とてつもないスピードで、僕の上を飛んで行った。
鉄の鳥は大きな翼を悠然と羽ばたかせている。
鉄の鳥は、そのまままっすぐ、遠くへと飛んで行った。残り香のように、飛行機雲が伸びていく。
あれから、どれほどの時間が経っただろう。私が戦争に立ち向かうことができる年齢になったころ、戦争は終わった。
その時私は、あの日見た鉄の鳥を思い出した。
私は、空を飛ぶことを決めた。この先にどんな未来が決まり切っていることは知っていた。それでも私は、進んだ。未来の始まりを信じて。
青空の下 ごま油を引いたフライパン @gomaabura_pan
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