厄介な祓い屋に目をつけられました【お祓い屋さんの召使い】

猫野早良

プロローグ 妖

あらすじ&登場人物紹介

あらすじ&登場人物紹介

*第一章完結時点(ネタバレ含みます)


【あらすじ】

 アヤカシのいる異世界に転生したハルは、異母姉桜子の見合い相手に見初められたことから桜子と継母の不興を買い、山神の生贄に仕立て上げられた。弟のように可愛がっている狐のアヤカシコンの協力を得て、何とかハルとコンは故郷の神白子村を脱出する。


 故郷を離れたハルとコンの二人は、都・大和宮で貧しいながらも楽しく暮らしていた。しかし、そんな折、コンは祓い屋の四条氷雨しじょうひさめに目をつけられ、さらわれてしまう。

 一度はコンと離ればなれになったハルだったが、コンが彼女を強く慕っていたため、ヒサメはハルに自分の召使いにならないかと持ち掛けた。


 ハルは四条の屋敷で召使いとして働くことになった。片やコンは、ヒサメの式神として修業し、強くなろうとしていた。それは、亡くなった母親の仇をとるためである。奇しくも、その仇はハルが生贄に捧げられそうになった神白子の山神だった。


 ハルやコンの主人であるヒサメは、外面は良いが実は極度の人間不信で、ハルが作った料理も毒を警戒し、口にしようとはしなかった。しかし、ハルの真面目な仕事ぶりや、コンにかける愛情などを目にして、徐々に彼女を信用し始める。

 また、ハルには「書いた文字に神気が宿る」性質があることが判明し、ヒサメはこれを高く評価するようになった。


 口では悪態を吐きながらも、ハルに気を許し始めるヒサメ。

 一方のハルも、出会った当初の印象は最悪だったヒサメに対して、根は悪い人間ではないかもしれないと思い始めた。


 ヒサメの式神であるコマとロウや、彼の仕事仲間である千景ちかげとも交流を深め、四条の屋敷で平和(?)に過ごしていたハルだったが、問題が起きる。宿場町で人喰い鬼が現れたのだ。そして、それはコンの憎い仇――山神・星熊童子の一派の鬼だった。

 実は、コンの母親は先代の神白子の山神だった。しかし、とある『力』を狙われて、星熊童子たちに殺されたのだ。

 復讐に燃えるコンは暴走し、一人で人喰い鬼の元へ向かう。しかし、反撃され窮地に立たされた。それを駆け付けたハルが何とか救い、ヒサメとロウの応援もあって、コンは九死に一生を得たのだった。


 無事、人喰い鬼の事件は解決したかに思われたが、事はこれだけで終わらなかった。コンの存在が、星熊童子配下の鬼女紅葉に知られてしまったのである。

 コンの母親である天狐は、『異世界に渡る力』を有していた。そして、星熊童子に奪われる前に、『力』を息子のコンに譲渡していたのである。これまで、星熊童子たちは天狐の息子の存在を知らなかったが、人喰い鬼の一件でその情報が漏れてしまった。


 コンが受け継いだ『力』を狙い、紅葉は画策する。そして、ヒサメの後輩である千景の心の隙間に付けこみ、彼を操ってコンを誘拐してしまった。また、いなくなったコンを探していたハルも、千景に連れ去られてしまう。 

 囚われたハルだったが、彼女は何とか千景を正気に戻し、共にコンを奪還する。逃げる三人を紅葉とその配下の死霊軍団が追った。

 絶体絶命の危機に陥ったハルたちの下へ、ヒサメが現れる。そして、巨大ながしゃどくろと紅葉を打倒した。


 こうして、ハルの元に日常に戻ったのである。



【登場人物】

瑞穂の国の人々とアヤカシ


ハル 16歳→17歳

・前世の名前は朝倉詩子あさくらうたこ

・普通の女子高生で、祖母と二人でつつましく暮らしていたが、アヤカシのいる異世界に転生。白神子村の名主の娘に生まれ変わる。

・小柄で童顔なため幼く見られるが、性格は図太い。家事は料理が得意。

・継母と異母姉の策略で山神への生贄にされそうになるが、狐のアヤカシコンの手を借りて窮地を脱出。故郷を捨て、都・大和宮へ向かう。

・コンが祓い屋の四条氷雨しじょうひさめの式神になったことにより、召使いとして彼に仕えることに。

・神力や妖力はないが、文字に神気が宿る不思議な体質で、揮毫士きごうしとして類稀な才能を持つ。

・出会いが最悪だったこともあって、ヒサメのことを信用していなかったが、共に過ごすうちにそう悪いヤツではないと思うようになってきた。ただし、難儀な性格だとは思っている。


四条氷雨しじょうひさめ 二十代前半

・眉目秀麗で、天才祓魔師と評判。女性に人気がある。

・検非違使庁の妖犯罪対策部に所属。プライベートでもアヤカシ退治の仕事を請け負っている。呪符を使った戦闘が得意。

・外面は非常に良いが、実はかなりの人間不信で厄介な性格の持ち主。

・コンが持つ「異世界に渡る能力」に目をつけ、彼を(無理やり)自分の式神にした。

・ハルのことは「コンのおまけ」→「意外に役に立つ」→「一応、信用できる」を経て、現在はかなり気を許している様子。



コン 人間の年齢で5~6才くらい

・狐のアヤカシ

・母を亡くした後、ひとりぼっちで生きてきた。怪我したところをハルに救われ、以降ハルを姉のように慕う。

・ヒサメの下で修業中。幻術と変化の術が得意。

・コンの母親は先代の神白子の山神、「異世界に渡る能力」を持つ千年生きた天狐。その能力を狙われて、母親は鬼の星熊童子一派に殺されてしまった。

・天狐は死に際に「異世界に渡る能力」を息子であるコンに譲渡している。



コマ

・優し気な雰囲気の若い女性。美人。

・ヒサメを「坊ちゃん」と呼び、大事に思っている。

・掃除や洗濯は得意だが、火が怖いため料理は苦手。

・実は駒鳥のアヤカシで、ヒサメの式神。多数の鳥を使役し、情報収集や伝達を行う。



ロウ

・筋骨たくましい大柄な青年。無口。

・嗅覚が鋭い。

・実は狼のアヤカシで、ヒサメの式神。もの凄い怪力で敵を圧倒する。



父親

・ハルの父親。

・気弱な性格で、強い方に流されやすい人物。

・ハルの実母が存命の頃から、現在の妻とは愛人関係にあり、子供(桜子)をもうけている。



継母

・ハルの実母が死んだ後、彼女の父親と結婚。

・ハルを毛嫌いしている。

・美人で社交的だが、家事は苦手。



桜子

・ハルの異母姉で、ハルを毛嫌いしている。

・母親に似た派手な雰囲気の美人、家事は苦手。

・実は瑞穂の国で「子」のつく名前はもっぱら貴族の子女につけられ、庶民で『桜子』という名は珍しい(いわゆるキラキラネーム)。



キヨ

・ハルの生家で働く女中。

・継母たちに辛く当たられるハルを不憫に思っている。



栄吉えいきち

・都の老舗料亭「卯庵」の若旦那。

・桜子の見合い相手だったが、栄吉もその両親も働き者のハルの方を気に入る。

・結局、桜子を妻として迎えるが、彼女が食中毒事件を引き起こし、さらには店の料理人と駆け落ちしてしまう。おかげで店の信用は地に落ちた。

・都でハルに再会し、彼女の助言により店を立て直す。

・ハルが危険な祓い屋の召使いをしていることを快く思っていない。



又六またろく

・豆腐屋の主人。

・父親の三郎が遺した小説を出版し、それが巷で大流行した。



よし

・又六の妻。



西園寺徳子

・貴族の娘。ヒサメに惚れている。



千景ちかげ 二十歳前後

・ヒサメと同じ検非違使庁の妖犯罪対策部に所属する青年。

・特徴的なイントネーションの方言で話す。

・明るい性格だが、かなりの苦労人で負けず嫌い。

・ヒサメに憧れるとともに、彼に対して強烈な劣等感を抱いていた。今は色々と吹っ切れた様子。



森政煕もりまさひろ

・ヒサメと千景の上司。ぼんくら。



妙龍みょうりゅう 三十代半ば

・祈祷師の男性。本名は龍之助

・自らの能力を過信し、詐欺まがいの行為をしていたが深く反省。

・妹のたえに弱い。



たえ

・妙龍の妹で幼くして亡くなってしまった。4~5歳くらいの見た目。

・死んだ後、座敷童になる。強力な念力の持ち主。

・妙龍の祈祷師の仕事を手伝っている。



次郎坊

江州ごうしゅう山毛欅ヶ岳ブナガタケに住む天狗の長。八大天狗の一人。

・孫娘の小鈴を溺愛している。

・コンの母親の天狐とは知り合いで、彼女が息子へ託した能力が悪用されないか危惧している。



小鈴こすず

・次郎坊の孫娘の天狗。

・人形のように整った顔立ちをしている。コンと同年齢くらいの見た目。

・しっかりもので、意外にお転婆。



左助さすけ右助ゆうすけ

・双子の天狗の青年

・血の気が多く思い込みが激しいところがある。



星熊童子

・丹州を本拠地とする鬼。朝敵として危険視されている。

・「異世界に渡る能力」を狙い、仲間と共にコンの母親の天狐を襲った。しかし、天狐が死に際に息子に力を譲渡したため、能力を得ることはできなかった。

・天狐が隠していたため、コンの存在には気付いていない。

・天狐の死後、神白子の新たな山神になるが、元々「異世界に渡る能力」が欲しかっただけなので、神白子山自体には興味はなく、山を不在がち。



紅葉

・星熊童子の手下の鬼女。

・他人の心につけこむのが得意。妖術で屍を操る。


目一鬼

・紅葉の手下。力自慢の鬼。



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