転生したら破滅の皇子に拾われ溺愛されました。

tachyon

#1 さよなら世界 はじめまして異世界!?

この世はどうも生きづらすぎる。永遠に働かなきゃいけないにしては安い賃金。


私は来栖結衣くるすゆい。小学生の頃に父親と母親が離婚した。私は母親の方に引き取られたが虐待されて、学校でもいじめられていた。でも私はきっと生きてればいいことはあると信じて生きて来た。


高校卒業後私は独り立ちし必死になって働いた。パワハラ課長に耐え、セクハラ部長に耐え続けた……


だけどもう無理だ。


そんなことを思いながら階段を一段一段上がっていく。なぜか階段の軋む音が鮮明に聞こえた。


「やっとここまで登った。これで終われる……」


私の人生最悪だったな。虐待、いじめ、パワハラにセクハラ……。でもそんなのもこれでお別れ。


「さよなら私。来世では幸せになってね」


そして私の記憶はここから先なくなった……はずだった。


ここはどこ?霧が漂う森の中みたい。さっきまで私は東京にいたのに。ちょっと移動してみよう。どこかに集落があるかもしれないし。


あれ?こんな視線低かったけ?身長が縮んでるような?でも心なしか手も小さく見える……


近くに池みたいなのがあり、そこに顔を映してみた。


……!?


何この顔!?少女になってるじゃん!多分身長は10歳ぐらいかな?


なにこれ?もしかして最近の有名な異世界転生ってやつ?なんで私がそういう系の漫画あんまり読んだことないだけどなぁ。


でもじっとしてても何もわからないし、少し歩いてみようかな。


でも歩いても歩いても木ばっかり。霧もすごいし元の場所には戻れないな。もう少し歩いてみよう。


「うわっ!!」


私の目の前にいるのはまるでクマのような生き物だ。毛深く鋭い牙、大きい体、まるで獲物を見定めるような目。


あぁ私また死ぬんだ。せっかく転生までしたのに……


ここまでか……私は覚悟を決めた……が、


『滅べ』


!?


声のした方を見てみると、身長180cmくらいの細身の人が立っていた。


「そこの子供。なぜここにいる?どうやってここに来た?」

「えっ?その……」


さっきのクマみたいな生物を見ると跡形もなく消えていた。

急なことに驚き、うまく言葉を発することができなかった。


「ここは“伏魔の樹海ふくまのじゅかい”だ。そんなとこになぜ子供がいる?」

「あの、私目が覚めたらここにいて、私もなんでここにいるのかわからないんです」


なぜかまじまじたまられてる気がする。こういう見られ方は初めてなんだけど。


「ならば俺のところに来い。ここら辺は危ない」

「あ、ありがとうございます」


「俺はゼノ・トリスティアだ。お前、名前は?」

「結衣……来栖結衣です。ゼノさん」


「ユイか。よろしくな」


ゼノさんよく見たらめちゃくちゃイケメンじゃん。黒髪で赤眼。そして高身長!絶対モテるんだろうな。


「よし。俺の屋敷に行くぞ。ほら」

「うわっ!」


急に抱っことかびっくりするじゃん。でもなんだか落ち着くな。


「ん?寝てしまったか。おやすみユイ」

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