一緒に悪いことをしよう。

「そういえば、お名前聞いてなかったですね。閃って言います。そちらのお名前は? 」

 確かに聞いて無かった。私の情報は、未だに白い鎧を着た男(25歳くらい)で止まっている。

「そうでしたね。アクテルトと申します。アークとお呼びください。」

 その一挙一動から高貴なオーラが隠せない。

「私は、籤と言います。よろしくお願いします。」

 一通り自己紹介を済ませ、ついに建物内に入る。天井は10mはあるだろうか。ステンドグラス越しに入ってくる光が神聖なオーラを醸し出している。その奥、真ん中に脚を組み、悪態をつくものがいる……説明なしで王と分かるのはありがたいことだが、無性に腹が立つ。

「貴公らが、件の二人か。」

 一言一句が空気を重くする、イメージなんだけどな。むしろ軽いというか、威厳がないというか……

「(影武者だと思うんだけど、イタズラしない? )」

 テレパシーで直接閃に話しかける。この話をした瞬間、王の顔が青ざめて行く。

「(ドスの効いた声で、「おい影武者。本物の王を出せ。貴様など、3秒で消えるぞ。」ってテレパシーを送り込んだら、このザマなんだけどwまじうけるwww)」

 閃が力に溺れている気がする。少しお仕置きしないと取り返しのつかないことになるな、と実感した。魔法を教える前に少し矯正しておこうかな。

「失礼します。お召し物を洗濯するので、これにお着替え下さい。」

 と言って、異世界サイズのメイドが明らかに高い、汚したら大目玉喰らいそうな白い服を渡してきた。目移りは……してないな。なんてかくゆう私も力に溺れている気がするな。自制しよう。

 その給仕に部屋を案内される。二つの部屋で、別れてしまった。

「あの……相部屋いいんですけど……」

 と言ったものの、「上からの指示ですので……」

 多分そのという人間は親切心なのだろうが、ありがた迷惑とやつだ。

 諦めて、部屋に入る。その瞬間。

「テレポート! 」

 向こうの部屋にテレポートをする、が何か壁のようなものが張られている。テレポートができない。

 諦めて、魔法を教えに行くか。と思い、外に出る。と、同時に向こう側のドアも開いた。

「テレパシー使ったの分かった? 」

 聞こえていない。

「テレポートもできなかったよ? 」

 推測するに、魔法使用不可結界でも張られているんだろう。

「「似合わなwww!!」」

 それもそのはず、丈の余ったズボン、胸に隙間ができるドレス。親の服を着る、くらいブカブカである。まあ後でトイレで、服を作っておこう。


 無事、服を作り、下に降りる。窓から。すぐにして、赤い帽子とオーバーオールを身にまとい、閃が降りてくる。センス無。いやセンス無。


「どこから始める? キャパあげとく? 」

「心が痛むから、契約書書かせておこうかな……」

 経験したものは敬遠するだろう。めちゃくちゃな方法なんだよな。

「これから始める方法は、少し危ないです! それでも良いですか? 」


「ほとんどの人から良い返答をいただいたので、では一人ずつ前に来てください。」

 と言って、あの脳のキャパを上げる魔法、睡眠短縮の魔法をかける。

「まず、城内書庫の剣技に関する本を全て読んでください。」

「寝ず三日で良いですね? 」

 怒号が飛んで来る。ごもっともな反応だ。

「本はなんでも良いんですけど、キャパを無理やり上げているのを、正常に落とし込むんです。」

 ポカーンとしている彼らを、閃が、

「わかりやすく言えば、魔族が人間に転生しても、人間の体で、魔族の固有魔法や、アホみたいな魔力消費量の魔法をボンボン打てるようにしたい、そのために今、一時的に魔族みたいな状態にしている。みたいな? あ、この魔法は魔族と関係ないですよ? 」

 いや、なんで説明できんだよ。

「では、一応監督しておくので、始めてください。」

 というと同時に、一斉に駆け出していった。感心するわ。

「籤、見て見て」

指差した方には、閃がもう一人いた。

「土魔法で肉体、 火魔法で動力、水魔法で、瞳やその他滑らかに動かしたいところで、ゴーレム完成! 」

すごい、はっきり言って似ている。

真似をして、私のゴーレムを作ってみる。

「おお、籤そっくりじゃん! 」

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