彼氏と一緒の学校に行けたけど、私と共に退学危機。なので心中して転生します。
碧井詩杏
少女、彼氏と心中する。
「受かった!!受かったよ!!
「本当か!?良かったな~、
そういって、私は彼氏の閃と同じ高校に行けることになった。
「可愛い制服、綺麗な校舎、それに彼氏! 」
入学式で、優しくて口下手で可愛い先輩、頼れる正統派イケメンの先輩、
そう、あの日までは。
夏休みを控えた七月。
ピーンポーンパーンポーン。
「一年C組、佐原閃さん、同じく、一年C組、狛田籤さん、至急職員室にお越しください。」
そこには、生徒指導の先生が立っていた。
「理由は分かるな? 」
知っているわけない。
「なんの事ですか? 」
閃が尋ねると、茹で蛸の如くハゲ頭を赫くして、
「惚けんじゃねえぞ! カメラに映ってんだよ! 」
「だからなんの事ですか?」私が尋ねると、
「まだシラケんのか? 夜遊びと公園の落書き。背丈、歩き方、その他から貴様らと断定した。
よって、一ヶ月の停学を命じる! 」
ポカーンとしている。それもそのはずやっていないからだ。
「動画。見せてもらっても? 」
答える前にぶん取って、動画を確認する。私たちに似てなくもない。
それから夏休みの間、
「死のう」
そう二人が思うのは遅くなかった。大事なものをバックパックに詰め、夜の学校から飛び降りる。そう二人で決めた。
決行は終業式前夜。大いに死んでも騒がしてやろう、そう私が提案した。
前日。死にたくない、主張する貧相な身体と死にたいという心がいがみ合っていた。
しかし、無実といっても信じない両親。友達にラインをしても、未読か暴言。暇で外に出ようものなら補導。
嫌になっていた。
中学生の頃、修学旅行に使った大きなバッグにスマホと充電器、お気に入りの服、時計、使いもしないはずの私の全財産を使わないのに丁寧に丁寧に入れていく。
迎えたその日、不思議と怖くなかった。一月ぶりの通学路。終電で高校へ向かう。
「よっ」
「閃、怖くないの? 」
怖くない私が怖かった。
「ああ。怖くない俺が怖いや。」
閃に会うのは久しぶりではない。「せっかく退学なんだ、グレてやろう」そう思って私たちは二人でよく昼間から
ゲーセン、カラオケ、家に誰も居ない時間を図って、互いの身体を快楽に任せたりもした。
駅で降りて高校が見える。あの頃あんなに綺麗に見えた校舎はくすんで見えた。閃が鍵穴にクリップを差し込んで開ける。
屋上。初めて入ったそこには、町の夜景が綺麗に見えた。
「そういえばさ、何を入れてきたの? 」
「スマホ、充電器、服、switch、なんかよくわからんけど、お金と、、、」
顔を赤らめて取りだしたのは、指輪だった。
「月が綺麗ですね」
考えるより先に口が動いていた。
「もちろん」
二人の目から涙が溢れる。
私の薬指の指輪は決して綺麗とは言えないけど、でもどんな宝石より綺麗だった。
「「また、会えたら。」」
それ以降この世界では口を開かなかった。
この世界では。
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