第40話 知りたくなかった
「ねぇ、
「……もうダメだ、これ以上言えん。
「どうして……無理しなくていいよ。また今度……」
「今度もその今度も言えん……!!!」
分二が声を荒げた。
「……そうなの? 二人が別れたこととかは……聞かないとくよ。そこまで声を荒げるのなら」
分二は頭を横に振った。そして來の手を握る。
「……仕事や過酷なことをしてたのはお金だけでなくて僕らの仲を引き裂くためだった。
「……」
來は酷い、と思ったが実際に自分もそういう偏見を持たれているだけあって酷い、という言葉が出なかった。
「今の事務所社長が也夜のことを知って前の事務所から逃してくれて……だけどその条件は僕が也夜から離れることだった」
「……」
來の知っているあの事務所社長が二人の中を引き裂いたというのか、だが自分と也夜の関係は同性愛者同士でも認めて大きな盾になってくれたのだがと思っていた。
「僕はそれが也夜のためならと離れた。同性愛者だからというわけではない事務所の社長は海外でもモデルの勉強をさせると。也夜は戸惑っていたけど……決意して……」
分二は明らかに様子が全くもっておかしくなっている。
「そしたら彼はすっかり立派なモデルになって。社長の腕もあるのだろうけども、也夜は自分の殻を破ってアイドルの頃の彼とはすっかり変わった」
「それから会ったの?」
その言葉を來が言うとビクッとした分二。そして言葉を失う。
「無理ならもう言わなくていいよ」
「ううん、もう言うよ……」
「分二……」
分二は來にくっついた。
「もう会わず見守ろう、僕はもっと稼いでその活動を応援しようと彼のファンになり匿名で支援し続けた。まぁ事務所にはバレてしまったけどね……」
「……僕らが付き合ったことを知った時は?」
「そうか、そうなのかと。すごく動揺したけど也夜が幸せなら……だって也夜が好きな人なのだから」
「也夜は分二が推していたことは知ってたのか?」
「社長が言うには伝えていなかったらしい……」
「それから……」
「結婚式をする、それを聞いて僕は最後に会おう……って連絡したんだ」
その言葉を言って分二は嗚咽をあげて泣き出した。
來もハッとした。
也夜は結婚式の前夜、今から会いたいと言う友人に会いに行ったのだ。
「あの時の……友人と言うのは……」
「友人……と言ってたのか……うぐっ……」
「うん」
分二は呼吸が荒くなる。
「……時間になっても彼は待ち合わせ場所には現れなかった。そして……也夜が事故にあったというニュースを……しっ……知って……僕がっ、僕がっ……会おうだなんて連絡したからっ!」
泣き崩れた分二。來は絶句してもうどうにもできなかった。
泣き叫ぶ声が部屋に響いた。
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