荒廃しちゃったけど俺達は生きてます
デルタイオン
第1話 甘くて美味しい黄色のスープ
青い空。馬のような雲。空は綺麗だ……
去年と比べて空気が綺麗になってきたからか更に遠くまで見渡せそうな空を見るとまだ生きてて良かったと思う。
空は良い。でも下を見ればうんざりしてしまう。
倒壊したビルの上から地上を眺める。下には大量のゾンビ。
先程呼び寄せてしまって動けなくなってしまった。先生たち心配してるだろうな……
取り敢えず今日は火を起こそう。幸いバックパックに3日間の食料、水、その他道具類を持ってきている。この倒壊したビルは危ない。すぐさま渡って見付からずに安全な場所まで行きたい。
蠢くゾンビ達に気付かれないように慎重にその場から離れた。
約200mほど離れた場所のビルの屋上。あの倒壊したビルが更に崩れたとしても二次被害が来ないだろう安全な場所だ。幸い燃料もたんまりある。火を起こそう。
ライターさえあればあとは可燃物を探すだけでいい。確か室外機の下側に布生地があってそれが燃料になるはずだ……
「あった……」
それを何枚か頂いて火が長く見えるようにチョキチョキ切っていく。
ついでに持ってきている燃料棒も組み合わせれば即席焚き火の出来上がり。焚き火の上に台を設置していざ着火。
「おお……温かい」
今は秋でとても寒い。この煙が空を汚してしまう事には少し申し訳無さを覚えるが今日を生き延びるためだ。それにこんなに広いんだ。ちょっとやそっとじゃどうしようもないほど広い空に少しの煙が混ざってもいつしか草木に吸収されるはず。そう教えられた。
夜になりそうな頃。バックパックに入っていた缶詰を選別する。やっぱりまずはコーンスープが良い。賞味期限が近いもあるけど単純に甘くて美味しいからだ。こんな時で無いと飲めないから早速頂こう。
缶詰を開けてフライパンに注ぎ台の上で熱する。少し湯気が登ってきたな程度でコップに移せばあまり熱すぎない猫舌の自分に優しいコーンスープの出来上がりだ。
「いただきます」
そこそこ高いビルの上で飲むコーンスープは少し特別な感じがする。今日はそこそこ星空が見えるから多分それも関係してるのかもしれない。
ゾンビのうめき声さえ気にしなければとても暇で幸せな時を送っている気がする。コーンスープはやっぱり甘くて美味しかった。
寝巻きなんて無いから雑魚寝で夜を過ごす。傍らに愛銃を置いて焚き火に時々燃料を放り込んでいたらいつの間にか眠ってしまっていた。
朝の日差しに目を覚ます。完全に炭になった焚き火の跡を掃除していざ出発。
向かうは村。ウォーターシップタウンと呼ばれているちょっとした村である。
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