そうだとしたら。

第1話


幼い頃何を思っていたか。

何が生きがいだったのか。

覚えている人など、おそらくきっといないであろう。


時は、歩みを止めてはくれない。

例え、頭から血が流れていようが、

眼から大粒の雨が降っていようが、

時は、歩みを止めてはくれない。


大人になるにつれて、

生きている価値や存在していい理由を要求される。

幼い頃は、笑顔でいるだけで価値があると思ってもらえたのに。

いつの間にか、社会に必要な能力を持っているとか

誰かにとって有益であるとか、

そういうもので価値が決まるようになる。

いや、価値を決められるようになる。

型にはまらず、必要ないと見做された者は、

”社会不適合者”などと呼ばれ、社会から追い出される。


そうだとしたら、大人になるということは

あまりにも過酷ではないだろうか。

そうだとしたら、大人とは

あまりにも可哀想な生き物ではないだろうか。

そうだとしたら、大人とは

あまりにも残酷ではないだろうか。



同じように生きてきたはずなのに、

いつの間にか選ぶ側の人間と選ばれる側の人間に分かれる。

それが努力した量で決まるのなら、

そうだとしたら、やはり社会は不平等だ。

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